今後はどうなる? まもなく払い戻しを終了する「スルッとKANSAI」カード その功績をたどる
かつて主流だった磁気式の乗車カード
いまや鉄道やバスを利用する際に欠かせない存在となった、非接触式のICカード。2001年にJR東日本が「Suica」を導入したのを皮切りに、2003年にはJR西日本が「ICOCA」を、2006年にはJR東海が「TOICA」を導入した。対する私鉄も、2004年に関西エリアで「PiTaPa」が、2007年には首都圏エリアで「PASMO」が登場し、徐々に利用できる社局が増加。2013年にはこれらを含む10種類のICカードで全国相互利用サービスが始まり、普段使っているICカードで数多くの鉄道やバスが利用できるようになった。
ところで、こうした非接触式ICカードが導入される以前、多くの人々は電車に乗る際に磁気式のプリペイド乗車カードを利用していた。「磁気式のプリペイド乗車カード」と書くと、ピンと来ないかもしれない。「オレンジカード」「イオカード」「Jスルーカード」「パスネット」と言われれば、「ああ、あれか」と思い出す人もいるだろう。
この磁気式プリペイド乗車カードは、その機能によっていくつかにグループ分けができる。たとえば、「自動改札機に直接投入できるかどうか」。ここに挙げた4種類のうち、オレンジカードは乗車前に自動券売機できっぷに引き換える必要があった。また、イオカードはJR東日本でしか利用できなかったが、他のカードは複数社局で利用できた。「パスネット」は関東の20社局以上で使えたことから、常に財布の中に入れていた人も多いのではなかろうか。
役目を終えたスルッとKANSAI対応カード
ところで、プリペイド乗車カードを幅広い社局で利用できるという仕組みに先鞭をつけたのは、関西である。1994年、阪急電鉄の子会社である能勢電鉄が、阪急の「ラガールカード」と同一のシステムを「パストラルカード」として導入し、両者で共通利用ができるように。1996年には北大阪急行電鉄・阪神電気鉄道・大阪市交通局(現:大阪メトロ)の3社局も加わった。
そしてこの時、この共通利用システムに「スルッとKANSAI」という名前が付けられた。スルッとKANSAIは徐々に関西の鉄道・バス会社へと広がり、最盛期には約50の社局が参加。「これ一枚あれば、JRを除くほぼ全ての鉄道と大半のバスに乗れる」という、非常に便利な存在となった。スルッとKANSAI対応カードを業務交通費の精算に使う会社も多く見られ、サラリーマン時代の筆者もこれを使って取引先との打ち合わせに行ったものだ。
そんなスルッとKANSAIのカードも、PiTaPaの普及やICカードの全国相互利用がスタートしたことで、徐々に表舞台から消えてゆく。2017年3月末に販売が終了され、翌2018年1月末をもって自動改札機での利用も終了。これに伴い、各社局では残額が残っている磁気カードの払い戻しを開始した。
まもなく払い戻し期限を迎える社局が!
この払い戻しの対応期間は、当初「2018年2月1日から5年間」、と案内されていた。つまり、2023年1月31日が期限である。その後、払い戻し期間を延長した社局がある一方、大阪モノレール・京阪電気鉄道・神戸電鉄・山陽電気鉄道・京都市交通局の5社局は、当初の予定通り今月末に払い戻しを終了する。各社局の払い戻し期間については、下記の表をご参照いただきたい。
払い戻し期限が過ぎたカードはどうなる?
では、払い戻し期限が過ぎたカードはどうなってしまうのか。この5社局ではもちろん使えないが、阪急電鉄に聞いたところ、「他社局で発行されたスルッとKANSAI対応カードを含め、2023年9月30日までは当社の一部の自動券売機と精算機で利用が可能」とのことだった。実は、阪急・能勢電鉄・北大阪急行の3社は今年9月末まで利用期間を延長しており、自社発行のものだけでなく、他社局が発行したカードもそれまでは使えるようだ。とはいえ、残された期間はあとわずか。早めに使い切っておきたい。
また、払い戻し期限が延長された社局も、その期間は永遠ではない。特に、新型車両の登場や阪神タイガースの優勝を記念したカードなどは、机の引き出しなどで大事に保管しているという人も少なくないだろう。今のうちに“発掘”しておくことをおすすめする。
なお、払い戻しを行ったカードはいずれの社局も「原則として回収する」としているが、記念カードなど手元に残しておきたいという人のために、郵送などの手段によって後日返却してくれる社局もある。手続きの方法はバラバラなので、各社局のホームページなどで確認していただきたい。
※各社局の対応状況は、2023年1月25日現在の各社発表情報をもとに筆者がまとめたものです。その後に変更されている可能性がありますので、最新の情報は各社局のホームページや問い合わせ窓口でご確認ください。