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【将棋】2019年に活躍が期待される棋士5名を、勝率ランキングから導き出す!

遠山雄亮将棋プロ棋士 六段
(写真:アフロ)

 あけましておめでとうございます。2019年も将棋界をよろしくお願い致します。

 筆者も今年は昨年以上に記事を書いて、将棋界をご紹介していく所存です。

 ご笑覧いただければ幸いです。

今期勝率ランキング

 早速だが2018年度(将棋界は4月1日~翌3月31日で年度となる)の勝率ランキングを見てみよう。

(2018年末の将棋連盟公式発表より。今期10戦以下の棋士を除く、未放映のTV対局を除く)

1位:及川拓馬六段 0.862

2位:藤井聡太七段 0.842

3位:千田翔太六段 0.794

4位:渡辺明棋王  0.767

5位:広瀬章人竜王 0.766

6位:永瀬拓矢七段 0.741

7位:西田拓也四段 0.706

8位T:佐藤天彦名人 0.694

8位T:近藤誠也五段 0.694

8位T:佐々木大地四段0.694 

 1位の及川六段は年間勝率記録を塗り替える勢いだ。

 注目の藤井(聡)七段は2位だが、今期も8割を超える勝率で推移している。年をまたいで8割を超えるのは容易ではなく、二人とも素晴らしい成績だ。

 トップ棋士では渡辺(明)棋王、広瀬竜王、佐藤(天)名人がランクインしている。

将棋界にある二つのレイヤー

 あまり知られていないことだが、プロの将棋界は順位戦のクラスで大きく二つのレイヤーに分かれる。

 A級とB級(1組・2組)が第1グループ、C級(1組・2組)とフリークラスが第2グループだ。

 これは、順位戦が同じクラスの棋士とだけ対戦することと、順位戦のクラスでシードが振り分けられる棋戦が多いことが影響している。

 第1グループは本戦~二次予選がメインのステージとなり、第2グループは一次予選がメインのステージとなる。

 となると、トップ棋士はトップ棋士ばかりと当たるので、トップ棋士で勝率が高いのと第2グループで勝率が高いのはやや意味が違ってくるのだ。

 例えば藤井(聡)七段は、現在順位戦がC級1組なので第2グループに属している。

 全38戦中、第1グループとは7戦(4勝3敗)、第2グループとは31戦と、第2グループとの対戦が多い。これは予選での対局が多いためだ。

 また筆者(C級2組所属)でいえば、今期は27戦しているが、第1グループとの対戦は6戦のみ。しかもB級1組以上との対戦はない。

 逆に渡辺(明)棋王だと、今期30戦のうち、第2グループとの対戦はわずか3戦だ。27戦は第1グループとの対戦である。

 順位戦のクラスが上がれば上がるほど、そしてタイトルを持っていればそれだけ第1グループとの戦いが多くなってくるのだ。

勝率から2019年注目棋士をピックアップ!

 ここから2019年の注目棋士5名をご紹介する。

 まずは現在勝率ランキング4位で復調著しい渡辺(明)棋王だ。

 第1グループとの対戦における勝率は驚異の0.850!これは異常と言ってもいい数字だ。

 B級1組では9戦全勝で、年内にA級昇級を決めた。王将戦でも挑戦権を獲得している。

 堅さよりバランスを重視するいまの将棋に適応してきたことで、地力を発揮して成績が上がっていると思われる。

 次は現在勝率ランキング5位で、先日竜王位を獲得した広瀬竜王だ。

 こちらは第1グループとの対戦における勝率は0.750だ。

 この1年における充実ぶりは素晴らしく、その要因は色々あると思われるが、機会があれば別記事で触れてみたい。

 渡辺(明)棋王は、2月に始まる棋王戦五番勝負で広瀬竜王を挑戦者に迎える。

 この五番勝負は、いまの将棋界実力No.1決定戦と言っても過言ではない戦いで、注目される。

 勝率ランキング2位の藤井(聡)七段も勿論2019年注目の棋士だ。

 第1グループとの勝率は5割前後なので、タイトル戦出場にはやや厳しい数字だ。しかし16歳の成長力を加味すれば、今年さらに実力を伸ばしてタイトルを奪取しても驚きはないだろう。

 年明けは、デビューから続ける順位戦の連勝記録更新も注目される。残り3戦、全勝でB級2組昇級を決められるか?!勝率ランキングで8位につける近藤(誠)五段との対戦がカギを握りそうだ。

 現在勝率ランキング1位の及川六段も勿論注目だ。

 叡王戦の本戦では、増田康宏六段、橋本崇載八段と強豪をくだしてベスト8に進んでいる。昨年の高見泰地叡王に続いて、叡王戦からニュースターが生まれるのか?!

 そして最後に、木村一基九段をあげる。上記のランキング表には出ていないが、現在14位で第1グループでは、渡辺(明)棋王、広瀬竜王、佐藤(天)名人、斎藤慎太郎王座という4名のタイトルホルダーに次ぐ勝率だ。木村九段を大舞台でもう一度見たいと願うファンも多いことだろう。順位戦B級1組でも現在2位でA級復帰をうかがう位置につけている。

群雄割拠で他にも注目棋士が多数

 昨年順位戦でB級2組に昇級し、第1グループ入りした永瀬七段と千田六段という二人の若手棋士も勝率ランキング上位につけている。

 藤井(聡)七段の活躍に隠れがちだが、第1グループにいてこの成績は素晴らしいの一言だ。

 二人ともタイトルまであと一歩と迫った実績もあり、今年中にタイトル奪取を果たしても不思議ではない。

 群雄割拠の将棋界、誰が抜け出すのか?ニュースターは生まれるのか?2019年もご注目いただきたい。

将棋プロ棋士 六段

1979年東京都生まれ。将棋のプロ棋士。棋士会副会長。2005年、四段(プロ入り)。2018年、六段。2021年竜王戦で2組に昇級するなど、現役のプロ棋士として活躍。普及にも熱心で、ABEMAでのわかりやすい解説も好評だ。2022年9月に初段を目指す級位者向けの上達書「イチから学ぶ将棋のロジック」を上梓。他にも「ゼロからはじめる 大人のための将棋入門」「将棋・ひと目の歩の手筋」「将棋・ひと目の詰み」など著書多数。文春オンラインでも「将棋棋士・遠山雄亮の眼」連載中。2019年3月まで『モバイル編集長』として、将棋連盟のアプリ・AI・Web・ITの運営にも携わっていた。

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