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4マスはテレビのみプラス、ネット広告はプラス9.7%(経済産業省広告売上動向2024年9月分)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
広告売上の実情は(写真:アフロ)

4マスはテレビのみプラス

経済産業省が先日発表した「特定サービス産業動態統計調査」の結果によれば、2024年9月分の日本全体の広告業全体における売上高は前年同月比でプラス3.4%となり、増加傾向にあることが分かった。主要業務種類5部門(4マスとも呼ばれる4大従来型メディアである新聞・雑誌・テレビ・ラジオと、新形態の広告媒体となるインターネット広告)ではテレビ、インターネット広告がプラス、新聞、雑誌、ラジオがマイナスを示した。上げた部門ではインターネット広告が一番上げ幅は大きく、プラス9.7%を示している。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)(2024年8月~9月)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)(2024年8月~9月)

今件グラフの各値は前年同月比を示したもので金額そのものではない。また前回月分からの動きが確認しやすいよう、2024年7月分のデータも併せてグラフに反映している。

しばらくは軟調が続いている4マス(新聞・雑誌・テレビ・ラジオ)だが、今回月ではテレビのみがプラスを示した。2015年以降4マスは概して軟調が続いており、特に紙媒体の新聞と雑誌は下げ基調が止まらず、2ケタ台の下げ率を見せたのは新聞が33回、雑誌は47回。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)(2014年1月以降)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)(2014年1月以降)

一方、インターネット広告はプラス9.7%と前回月から続く形でプラスを示した。

なお4マスとインターネット「以外」の一般広告(従来型広告)の動向は次の通り。

↑ 一般広告の広告費(前年同月比)(2024年9月)
↑ 一般広告の広告費(前年同月比)(2024年9月)

各部門の中では最大の上げ幅を示した海外広告だが、金額は約55億円。売上高合計へはさほど大きな影響は与えていないようだ。

インターネット広告は新聞の約9.44倍

部門別の具体的売上高は次の通り(億円単位における小数点以下は四捨五入しての表記となる)。

↑ 月次広告費(億円)(2024年9月)
↑ 月次広告費(億円)(2024年9月)

現時点では2014年1月を最後に、毎月の新聞の広告費の金額はインターネット広告の金額を超えておらず、金額面で主要業務種類5部門の上位順位はインターネット広告・テレビ・新聞の順となっている。

今回月では両者の金額差は約1148億円。約9.44倍の差がついている。もちろんインターネット広告の方が上。「従来型メディアの紙媒体全体の広告費」は約172億円で、これはインターネット広告費よりも下。つまり今回月も前回月に続き「インターネット広告の売上高が、大手4マスのうち、紙媒体全体の広告費を上回った」ことになる。

次のグラフは主要5部門、そして売上高合計(主要5部門以外の広告も含むことに注意)について、公開されているデータを基にした中期的推移を示したもの。今調査でインターネット広告の金額が調査されはじめたのは2007年1月以降なので、それ以降に限定した流れを反映させている。

↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)
↑ 4大従来型メディアとインターネット広告の広告費(前年同月比)

雑誌と新聞の折れ線がグラフ中では「0%」よりも下側に位置する機会が多い。これは金額が継続的に減っていることを意味する。前年同月と比べてマイナスの値が続けば、金額が漸減していくのは道理ではある。そして効果が上がらない、広告力(世間一般に働きかけられる影響力。メディア力)の無いメディアに広告費を継続して大量投入することは、少なくとも広告の直接対価によるものとしては想定しがたいので、雑誌・新聞の広告力が漸減していると広告主からは判断されているようだ。

昨今の動向を見返すと、やや起伏は大きいもののインターネット広告が確実に上昇基調(プラス領域)の中にあり、他の媒体とのかい離が生じていたこと、テレビがプラスマイナスゼロ付近でもみ合いをしていたことが分かる。ラジオも似たような動きだったが、2017年初頭あたりから失速したようだ。

2015年に入ってから4マスの軟調さが際立ち、現在に至るまで紙媒体では継続しているのも気になる。2014年同月からの反動でもなく、広告市場における何らかの動きが生じている可能性は否定できない。とりわけ新型コロナウイルスの流行による影響を大きく受けているように見える。

他方、インターネット広告も2017年以降伸び率がやや頭打ち、むしろ低下を示している。特に2019年10月以降は低迷感が否めなかった。消費税率引き上げ、そして新型コロナウイルスの流行によるものだろう。そして前年同月比で見る限りでは、新型コロナウイルス流行による広告費の減少ぶりは、リーマンショックのそれに等しい、むしろ下落期間が短い分だけ急降下な動きであることが確認できる。雑誌に限ればリーマンショック以上の下げ幅。そしてインターネット広告もともに大きく落ちていただけに、全体としてもより大きな下落といえる。

2020年夏ぐらいからの持ち直しで早期にプラス圏に転じ、さらに新型コロナウイルス流行前の水準に戻り、その上勢いよく成長しているようにすら見えるインターネット広告が救い。4マスも大きな上昇を見せていたが、これは前年同月の大幅減からの反動でしかないため、失速してしまっている。中でも昨今では再び新聞が大きな下落を示している。

そしてこの数か月における雑誌の乱高下ぶりが目立って見える。雑誌が大きく落ち込んだのは2020年中盤以降であり、その前年同月比による反動ではない。特に変わった事象も確認できておらず、ここまで激しい上下の動きには、不安を覚えてしまうものである。

インターネット広告においては、2022年春あたりから成長が鈍化、さらには横ばいにと転じたようにも見られる。やはりロシアによるウクライナへの侵略戦争をきっかけにした物価高の影響だろうか。まだかろうじてプラス圏を維持している月が多いように見えるのが幸いではあるのだが。

何はともあれ新型コロナウイルスの流行、そして景気の足を引っ張っているもう一つの要素であるロシアによるウクライナへの侵略戦争が片付かないとお手上げ状態なのが実情には違いない。

上記は今記事のダイジェストニュース動画(筆者作成)。併せてご視聴いただければ幸いである。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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