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米韓合同軍事演習に対抗する北朝鮮の「重大措置」は何か?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
労働党軍事委員会拡大会議での金正恩総書記(労働新聞から)

 朝鮮労働党第8期第5次軍事委員会拡大会議が11日に開かれ、金正恩(キム・ジョンウン)委員長(総書記)が出席し、自ら司会したようだ。

 会議には李永吉(リ・ヨンギル)軍事委員会副委員長の他、鄭京擇(チョン・ギョテンテク)軍総政治局長、強純男(カン・スンナム)国防相、朴寿一(パク・スイル)総参謀長、李昌虎(リ・チャンホ)偵察総局長、呉日正(オ・イルジョン)民間防衛部長を含む9人の委員、それに野戦軍や空海の指揮官ら少なくも30人以上が出席した模様だが、李炳哲(リ・ビョンチョル)副委員長は欠席していた。

 党軍事委員会は先月6日に開かれたばかりだ。一昨年(2021年)も2月と6月に2度開いていることから1年に2度の開催は決して異例なことではないが、それでも約1か月そこそこで再開されるのは尋常ではない。

 会議は前回に続き、今回も農村問題解決の重要性と現在の農村建設進行の実態を総括し、農村振興と地方建設、社会主義大建設を加速させるための人民軍の活動方向と具体的な任務を討議することが主たる議題となっていたが、朝鮮中央通信によると、「米国と南朝鮮の戦争挑発策動が刻一刻重大な危険ラインへ突っ走っている現在の情勢に対処して国の戦争抑止力をより効果的に行使し、威力あるものに、攻勢的に活用するための重大な実践的措置が討議された」とのことである。そして討議の結果、「重大な実践的措置」を取ることが決定されたようだ。明らかに13日から始まる米韓合同軍事演習を警戒し、その対応を協議するため開いた会議であることは間違いない。

 韓国では明日から23日までの11日間、米韓合同軍事演習(自由の盾Freedom Shield)が史上最大規模で行われる。トランプ政権下の2018年を最後に中断された大規模な合同野外機動訓練も5年ぶりに復活する。

 演習に参加する米軍及び韓国軍の動員数については正式発表はないが、これまでとは違って大隊級ではなく、連隊級で演習が行われる。

 米軍が投入する戦力については米原子力空母をはじめ、迎撃ミサイルシステムを備えたイージス艦、巡航ミサイル・トマホークを搭載できる原子力潜水艦、「B-1B」戦略爆撃機、「B52」核戦略爆撃機、ステルス戦闘機「F-22」や「F-35B」、さらにはアフガン戦争に投入された米国が誇る無人攻撃機「グレイイーグル」(MQー1C)も投入される。韓国軍からも「F-15K」,「F-16」などの戦闘機や「C-130」輸送機、「HH-60」ヘリなどが参入し、またイージス艦などの艦船も加わる。

 「Bー1B」戦略爆撃機は北朝鮮が最も警戒している爆撃機である。最大速度がマッハ2と、戦略爆撃機の中では最も速い。核兵器は搭載してないが、在来式兵器で圧倒することができる。およそ930km離れた場所から北朝鮮の核心施設を半径2~3km内で精密打撃が可能で、地下施設を貫通する空対地巡航ミサイル24基など61トンに達する兵器が搭載されている。

 演習では空母強襲団訓練、合同上陸訓練「双竜訓練」、「斬首作戦」を遂行する米韓特殊部隊による「チーク・ナイフ」訓練など20余の訓練が実施される。日米韓ミサイル警報訓練も併せて実施されることになっている。

(参考資料:見極めがつかない韓国と北朝鮮の特殊部隊! 有事の際は南北共に「斬首作戦」実行)

 昨年夏に実施された米韓合同軍事演習「乙支フリーダムシールド(UFS)」(8月22日~9月1日)では前半(22~26日)は敵の攻撃を撃退、防御する訓練を、後半(29日~9月1日)からは反撃、追撃し、北朝鮮を壊滅することに重点を置いた訓練が実施されていた。

 戦争抑止力を威力的かつ攻勢的に活用するための「重大な実践的措置」が何を意味しているのかは不明だが、北朝鮮が米韓合同軍事演習に対してはその都度、猛反発し、対抗措置を取ってきたことは周知の事実だ。

 例えば、2017年の時は演習期間中の3月22日に中距離弾道ミサイル「ムスダン」を1発、4月5日には日本海に向けて弾道ミサイルを1発、さらに4月16日には新浦から射程1000kmの中距離弾道ミサイル「スカッドER」を連射していた。演習最終日の前日(4月29日)には午前5時半に弾道ミサイルを1発発射していたが、これは空母など艦艇を狙う新型の対艦弾道ミサイル「KN17」であった。

 金総書記の代理人でもある妹の金与正(キム・ヨジョン)党副部長が昨年12月にすでに大陸間弾道ミサイル(ICBM)の正常角度による発射を示唆し、今年も2月に「太平洋を我々の射撃場に活用する頻度は、米軍の行動の性格にかかっている」と発言していることからICBMの太平洋に向けての発射や軍事偵察衛星の発射、さらには昨年から取り沙汰されている7度目の核実験などが考えられる。

(参考資料:米韓vs北朝鮮の「春の陣」 金正恩政権下の「春の米韓合同軍事演習の顛末」)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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