香取慎吾さんも出展・障害者支援のアート展って?
障害ある人の作品や現代アートを集めた企画展「ミュージアム・オブ・トゥギャザー」が東京都港区のスパイラルガーデンで開かれている。香取慎吾さん(40)も作家の1人として絵画を出展。13日のイベントで思いを語り、障害ある作家と交流した。「障害があってもなくても、プロでもアマでも、境界線がないアート」という展覧会を取材した。
わき上がる衝動で制作
企画展は、日本財団のプロジェクト「ダイバーシティ・イン・ジ・アーツ」の一環。障害ある人の芸術活動を支援し、多様性を伝える目的があり、2020年の東京オリンピック・パラリンピックへ向けていくつかの催しを計画している。
今回は22人の作品が見られる。企画したキュレーターが福祉施設や個人のアトリエなど制作現場を訪ね、作家の背景を追った。その結果、障害のある人も含め、多様な個性を持つ作家が選ばれた。
作家に共通するのは「表現したい」「作らずにいられない」というわき上がる衝動から、作品を生み出していることだ。
香取さん「絵に思いぶつける」
特別作家として、SMAP時代に描いた二つの絵画を出展した香取慎吾さん。香取さんが絵を描くときも、22人の作家と同じように、わき上がる衝動があるようだ。企画展の初日(13日)にあったイベントで、こう語った。
「僕は自分の思いとか心が爆発しそうなときに、それを絵にぶつけて、気持ちが安らいで、その絵は終わるんです」
さらに「やっぱり作品として一人でも多くの人に自分の絵を見てほしいっていう思いはどこかあるんで、こういう形で僕の絵も皆さんの作品もたくさんの方々に見ていただけたらなと思っています」と呼びかけた。
障害者の…と明記せず
「障害者が作ったものだから、素晴らしいのではない。素晴らしい作品を鑑賞したら、たまたま障害者が作ったものだったということです」と日本財団の笹川陽平会長。
会場で展示を見ると、どれが障害のある人が作ったのかはわからない。枯れ葉で作られた小さな動物たちに息をのみ、新聞の折り込み広告で作られたオブジェに目が行く。アート界でファンが多い青山悟さんも参加している。
作品どうしが対話するような配置も考えられているそうだ。香取さんの絵のちょうど反対には「色の感じとかタッチが、自分の絵と近い。対話しているようで嬉しい」と香取さん本人がコメントした小松和子さんの絵が展示されている。
配布のハンドブックを見てみたら、キュレーターが一人ひとりの作家と出会ったときのエピソードや、作品を生み出す過程が記されていた。制作にのめり込む様子がわかり、目の前にある作品が生き生きとして見えた。
見る側への工夫も
展覧会スタッフの1人、NPO法人「エイブル・アート・ジャパン」代表理事の柴崎由美子さんは、障害者のアート活動に関わって20年。「障害ある人のアート展も増え、見られる機会も多くなりました。この企画は、見て楽しむ側への工夫もあるのが特徴です」
知覚が過敏な人も楽しめるよう、照明や音響を抑えた「クワイエットアワー」を設けたり、音声ガイドが用意されたり。障害のある人と音声や手話、筆談などで感想を伝え合うワークショップも開かれる。
皆に優しいスロープ設置
会場全体の構成もデザインされ、階段がある部分にはスロープを設置。車いす・ベビーカーの来場者だけでなく、高齢者や幼い子が歩きやすいと評判だ。
展示は10月31日まで。入場無料。
香取さんによる絵の紹介
「絵を描くのが大好きで、たくさんの絵を心をぶつける場として描いてきたけれど、展覧会への出展は初めて」という香取さん。自身の言葉で、作品を紹介した。
「イソゲマダマニアウ」(左)骨になってしまった2人のカップルなのかな、すっからかんで、もう自分たちどうしたらいいんだろうって、この先を見失ってしまった2人を、真ん中の彼が、「急げ、まだ間に合うよ。今からだったら遅くないよ。まだ大丈夫だよ」って支えてくれてるような絵ですね。
「火のトリ」まさに爆発的な、仕事場で描いた絵ですね。お仕事をしている最中に、打合せしたりしてて頭がいっぱいいっぱいになって、ちょっと中断していただいて、その辺にあった段ボールを持ってきて。
絵の具はいつも自分で持ち歩いてるんで、その段ボールに描きなぐってできたのが火のトリです。「もっと遠くへ羽ばたきたい」っていう思いが、心の中で煮詰まっちゃったときに絵を描いて、その絵が羽ばたけた瞬間に、また次に進める。そんな絵です。