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北朝鮮の偵察衛星は過去2回とも予告から2日後に発射! 「3度目の正直」か?「2度あることは3度」か?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
過去2度発射に失敗した北朝鮮の軍事偵察衛星(朝鮮中央通信から)

 北朝鮮が21日午前0時過ぎに海上保安庁に軍事偵察衛星の打ち上げを予告してきた。いよいよ発射するようだ。

 発射期間は11月22日から12月1日の間である。発射コースは黄海(西海)→東シナ海(沖縄上空)→フィリピンのルソン島の東方向で偵察衛星はこれまでと同様に平安北道鉄山郡の東倉里にある西海衛星発射場から打ち上げられる。

 過去2度打ち上げに失敗した北朝鮮にとっては今回が3度目の挑戦である。

1度目は今年5月29日に日本の海上保安庁に「5月31日から6月11日の間に打ち上げる」と通告し、2日後の5月31日午前6時27分に発射したが、1段目分離後、2段目エンジンの始動不正常で推進力が喪失し、落下してしまった。朝鮮中央通信が発射から約2時間半後の9時5分に国家宇宙開発総局の公式発表として伝えていた。

 但し、労働新聞も朝鮮中央テレビもこのことに一切触れず、国民には伝えなかった。北朝鮮の国民が知ったのは6月18日に開かれた党中央委員会第8期第7次全員会議で金正恩(キム・ジョンウン)総書記が党活動報告の中で「最も重大な欠点は宇宙開発部門で重大な戦略的事業である軍事偵察衛星の打ち上げに失敗したことである」と言及してからである。

 金総書記は失敗の原因が「衛星打ち上げの準備を推進した活動家らの無責任さにある」と、批判していた。そのうえで「人民軍の偵察情報能力を向上させ、宇宙開発分野でさらなる飛躍的発展を遂げるために早いうちに軍事偵察衛星を成功裏に打ち上げよう」と指示していた。

 2度目は8月22日に再度、海上保安庁に「8月24日から31日までの間に人工衛星を打ち上げる」と通告し、これまた2日後の8月24日午前3時50分に東倉里から再発射したが、弾道ミサイルとは異なり、人工衛星の深夜(午前3時台)の発射は異例だった。だが、3段目の飛行中に非常爆発システムに誤りが発生し、爆破してしまった。前回同様に朝鮮中央通信が発射から約2時間半後の6時15分に国家宇宙開発総局の公式発表として伝えていた。

 国家宇宙開発総局は2度目の発射が失敗に終わった時「当該事故の原因が段階別エンジンの信頼性とシステム上の大きな問題ではない」と説明し、「原因を徹底的に究明して対策を立てた後、来る10月に第3次偵察衛星の打ち上げを断行する」と宣言していたが、準備が整わなかったのか、10月の発射は見送られた。

 韓国では発射が遅れた理由についてロシアから技術支援を得るためと言われている。

 金総書記が9月12から17日にかけて訪露した際にロシア極東・アムール州のボストーチヌイ宇宙基地で迎えたプーチン大統領が衛星発射支援を仄めかし、先月は18日にはラブロフ外相一行が、また今月15日には平壌で開催された露朝貿易経済・科学技術協力委員会会議出席のためアレクサンドル・コズロフ天然資源環境相を団長とするロシア政府代表団が訪朝していた。訪朝団の中に衛星関係者らが多含まれていたものとみられる。

 そこで注目されるのは発射日である。

 北朝鮮は当初、後継者と目されている娘の「ジュエ」が初めてお披露目した昨年11月18日に大陸間弾道ミサイル「火星18」の発射を成功させたことで最高人民会議(日本の国会にあたる)が今月5日に11月18日を記念日(「ミサイル工業節」)に定めたことから韓国ではこの日が「X-デ」となるのではと推測されていたが、的外れだった。

 どちらにしても明日(22日)からカウントダウンが始まるが、発射期間は前回よりも2日長く取っているが、今月は26日が日本で言うところの全国地方議会選挙が行われる日である。また、29日は2017年に北朝鮮初の大陸間弾道ミサイル「火星15」の発射を成功させ、「核武装化」を完成させた日でもある。

 北朝鮮としてはこうした記念日を前に発射して、景気付けしたいところだが、無事成功させることが最優先なので過去2回がそうであったように天候さえ良ければ明日でも、明後日でも発射される可能性が高い。

 その天候だが、発射条件として雨天は論外で、風速は地上で秒速15mを越えてはならず、地上から高度30km上空でも秒速100m以下でなければならない。また、周辺20km内に落雷があってはならない。さらに周辺50km内に雨や雪が降ってはならないなど様々な気候条件をクリアしなければならない。加えて、液体燃料を使用する場合、注入が終われば、一週間以内に発射しなければならない。

 ちなみに北朝鮮の天気予報では22日は曇りで、23日が午前6時から11時までは晴れマークである。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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