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阪神タイガース・緒方凌介外野手 6年目の覚悟「チャンスは一度!失敗したら終わる」

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
安芸キャンプでのひとコマ。苦しいランニングでも、あえて笑顔を見せる緒方選手。

 3月に入ってプロ野球のオープン戦が本格化しています。阪神タイガースも3日、4日にソフトバンクと戦い、3日は負けたものの9回に緒方凌介選手が豪快なホームランを放って、完封負けを阻止しました。9回2死ランナーなし、代打でサファテ投手と対決。148キロの直球が2つ大きく外れ、少し中へ入った3球目(146キロ)をセンターのバックスクリーン手前へ放り込むという、さすが速球が好きな緒方選手ならではの一発ですね。本人は「いい状態を維持できています」とのこと。

 きょう4日のスポーツ新聞には『緒方、開幕センター!』の大きな活字が躍り、13時から始まったソフトバンク戦は7番センターで先発出場しています。ヒットは出なかったけれど、大きな飛球をランニングキャッチするところも見られました。その緒方選手とともに1軍合流を果たしたドラフト2位・高橋遥人投手も、きょう登板。2回無安打(1四球)無失点と上々のデビューでした。あすの紙面は彼ですかね。

安芸キャンプの練習試合で打率.632

 さて、ことしは2月のキャンプを安芸で過ごし、矢野燿大監督が掲げた積極性を前面に押し出す方針に応え、走って打った緒方選手。監督から「緒方が一番目立っていた」と言われた試合もあり、キャンプ打ち上げの際は「走塁も盗塁もよかったし、一番は試合での結果と内容。ヒットやホームランも一発で仕留めていた。1軍で通用するための大事な部分」と野手のMVPに選ばれました。3日のオープン戦のホームランも、まさにこれを実践したと言えますね。なお緒方選手の練習試合成績は以下の通り。日付と対戦相手の下は、打順:守備位置 打-安-点/振-球です。

 

11日 四国銀行

 8:右 2-0-0/0-2

12日 韓国・ハンファ

 7:中 4-2-0/0-0 盗塁1

17日 西武B班 (春野)

 6:右 2-1-0/0-1 盗塁2

18日 四国IL・高知

 3:中 4-4-1/0-2 盗塁2 (二塁打)

22日 西武A、B班

 5:左 4-2-2/0-0 (本塁打)

25日 JR四国

 5:右 3-3-1/0-1 (三塁打)

 6試合の合計は19打数12安打4打点で打率が.632、盗塁5。

体力アップも実感したキャンプ

2月17日の西武戦(春野)で二盗、三盗を立て続けに決めた緒方選手。
2月17日の西武戦(春野)で二盗、三盗を立て続けに決めた緒方選手。
2月18日の高知戦でも初回からヒットと盗塁。さらにこのリードです。
2月18日の高知戦でも初回からヒットと盗塁。さらにこのリードです。

 2月25日に、最後の練習試合が終わったあとで聞いた話をまずご紹介しましょう。この日も3打数3安打で、記者陣に「よく振れていますね」と言われた緒方選手は「キャンプ前から決めていたのが、右肩を開かないということでした。そのためセンターから左方向に強く打つことをテーマにしてキャンプインしたんですけど、それがこの実戦6試合でいい内容、いい結果につながったのでよかった」と答えました。

 そこまでを振り返り「キャンプはまだ終わっていませんけど、やってきていることがいい方向に行っているので、すごく充実しています」とコメント。センターから左方向を意識というのは去年から?「去年の秋から取り組んでいて、でもレフト方向に打つってよりも、まず肩がすぐ開いてしまうクセがあるから、そこを我慢する。というふうにやる中でセンターから左へ打っていく意識をすれば開かないんじゃないかなと。そんな感覚でやっていました」

 結果が出ると自信につながるのでは?「そうですね。やっていることはしっかり結果に出てくれているので、自信にしたいですね。これを相手がNPBに変わっても、1軍のピッチャーになってもできるように。3月からもずっと継続してやっていきたい」

2月25日のJR四国戦、2回に一塁線を破るタイムリー三塁打!
2月25日のJR四国戦、2回に一塁線を破るタイムリー三塁打!
さらに4回も左前打し、西田選手の右前打で三塁まで。
さらに4回も左前打し、西田選手の右前打で三塁まで。

 バットも例年以上に振っている?「朝からしっかりと、また(練習が)終わってからも振っています。それまでも当然やっていましたが、金本監督になってから振り込むということをずっとやっていて、体力がついたかなって思います。もともと体力がないほうなんですけど(笑)。きょうも試合と練習が終わってから、ああやって(個別練習で)打てるくらい体力が残っている。しっかり振り込んできた成果かなと思います」

 「このキャンプのテーマが“超積極的に”という中、自分は足で目立たないとチャンスがもらえないと思いますし、打つってのはやっぱり年がら年中ずっと好調をキープするのは難しいと思うけど、走るのは調子の波があまりないので。特に金本監督も今、走る選手がほしいと。(植田)海だったり島田だったり足のスペシャリスト的な枠で1軍に行っているから、その中に割って入るように。このキャンプはどんどん走っていいと言われているので、積極的にいけています」

 外野のポジション争いも大変ですが「もちろん厳しいのはわかっています。インパクトのあるプレーで、残れるように頑張りたい」とキッパリ。

疲れが取れた時の打撃も楽しみ?

 キャンプ打ち上げの日、1軍合流を告げられた緒方選手は「やるしかないので。これが最初で最後の気持ちで、一気につかんでしまわないと。そういうチャンスをもらえるわけですが、何度も何度もあるものではないので、いい状態で一気につかまないと」と繰り返しました。この言葉は、少し前に聞いた話とも重なります。「僕には、チャンスは一度しかないと思っています。それを自分で二度、三度にしていくしかない。たとえば一発目でバントが成功すればいいけど、失敗したら『あしたから下で頑張ってきて』と言われて一瞬で終わってしまう。そのまま呼ばれないことも十分ある」

冒頭に載せたタイトル画像の笑顔、その直前がこの表情です。く、苦しい…?
冒頭に載せたタイトル画像の笑顔、その直前がこの表情です。く、苦しい…?

 さらに「作戦を求められるタイプなので、失敗したら後はないですね、ベテランとルーキー以外は。そう思ってやっています」と。また、ここ2年はウエートをしっかり取り入れているので、体重はプロに入ってから6キロ増えたそうです。このキャンプでもしっかりこなしました。そこで「キャンプ中は体を追い込んで、追い込んで、そんな疲れている中で結果が出たので、今度は疲れが取れた時が楽しみ」と言って少し笑います。ニヤッと。我々も楽しみにしましょう。

 矢野監督が4打数4安打や3打数3安打と打ちまくった試合の後に「すごいよね」と感嘆の言葉でしたよ。「監督からは『調子がいい理由を自分で考えてどうや?』と言われて、開かないようセンターから左を意識してやっているのが、いい結果に結びついていますと伝えたら『おお、そうか』と言ってくださったんで」。そういう問いかけだけでなく「ずっとやっておけばチャンスがあるから頑張れ」との声もかけてもらっていて「すごく充実している」と緒方選手は話していました。これは嬉しいし、励みにもなりますね。

後がない状況でも前を向いて明るく

JR四国戦の6回、板山選手の2ランで生還して矢野監督と握手。
JR四国戦の6回、板山選手の2ランで生還して矢野監督と握手。

 「すごく充実している」と何度も口にした緒方選手。精神的な満足感もですが、実際に手応えもあったと思われます。キャンプ中、いつも会話ができました。というのも…実は去年ずっと話しかけにくかったので。おそらく相当な覚悟を持って臨んだシーズンだったでしょうから、ファームにいる場合じゃないと焦る思いも伝わるし、そのせいか表情も険しかったんですよね。今までみたいに冗談を言ってはいけない気がしました。

 でも、ことしは顔が明るい。結果が出ていることもあるけど、まだ練習試合がない序盤でも明るかったように思います。しょうもないことを話しかけても許されるような“余裕”を感じました。それを本人に伝えてみたところ、意外だという反応はなく「ああ、なるほど」という感じのリアクションです。そのへんは自覚していたのかな?

 「去年も、ことしも同じですよ。自分が置かれている状況や気持ちは。あまり取材されないなあとは思いましたが、話しかけにくかったですか?」。はい、とても。活躍した時でも言葉数は少なかったし。「確かにそれはあったかもしれません。ことしも後がない状況であることに変わりはないんですけど、あえて明るく元気にやっていこうとしていますね。ことしのチームは、それが求められると思うので」

 実は昨年もキャンプのJR四国戦でホームランを打つなど、調子は悪くなかった緒方選手。しかし1軍のオープン戦は途中出場した1試合だけでした。その後の教育リーグで巻き返しをはかったものの、シーズン終了まで1軍昇格がないまま終わったのです。もしかすると無意識に“壁”を築いていたかもしれませんね。でも、ことしは違うと緒方選手は言います。「見ていて、もしそんな雰囲気になっていたら注意してください。話しかけにくくなってるよって」

2月25日の練習試合は霧雨が降る中で行われました。緒方選手も寒そうです。
2月25日の練習試合は霧雨が降る中で行われました。緒方選手も寒そうです。

 わかりました!でも鳴尾浜で会わないかもしれないし、会わないということは1軍で頑張っているから、壁もないわけで。それを祈っています。「このまま福留選手と糸井選手の間に入っちゃいましょう!」と言ったら「まずはオープン戦に帯同できるよう頑張ります」と謙虚な答えが返ってきました。そうですね。つかんだチャンスを、自分に力で増やしてください。

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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