KO率100%ボクサー比嘉大吾「普通の生活をしようと思ってた」復帰を決めた意外な理由
2月13日後楽園ホール「ダイヤモンドグローブ」で、元WBC世界フライ級チャンピオンの比嘉大吾(24=白井・具志堅)の復帰戦が決まり、所属ジムで公開練習が行われた。
比嘉は2018年4月の防衛戦から、約2年ぶりのリングに立つ。
KO率100パーセントボクサー
比嘉は軽量級では異例のKO率100パーセントで世界タイトルを獲得したボクサーだ。
沖縄出身で、アマチュア経験を得て2014年にプロデビュー。
KO勝ちを積み重ね、プロ13戦目で世界王者となった。
そこから2度の防衛をKOで果たし、沖縄の先輩にあたる元世界王者の浜田剛史氏が持つ15連続KO勝ちの日本タイ記録を樹立した。
しかし、3度目の防衛戦の前日計量で契約体重をオーバーしてしまいタイトル剥奪。
試合は行われたが、減量失敗の影響から力が発揮できず9RKO負けとなった。
その後、計量オーバーにより日本ボクシングコミッションから、ライセンスの無期限停止処分を受けた。
だが、昨年10月に解除され、2月に復帰戦が決まった。
その試合に向けて、比嘉の所属する白井・具志堅ジムで会見と公開練習が行われた。
会見では「約2年ぶりの試合が決まったので、待たせたファンのためだけに頑張ります。いつもどおり練習して試合に臨みたい」と抱負を語った。
リングへの復帰
比嘉はリング復帰まで2年の歳月を費やした。
当時の状況を「普通の生活をしようかなと思った。自分が望んで休んでいたので、辛かった時期はなかった」と語った。
トレーニングもする気が起きなかったようで、
「一回チャンピオンにもなれたし、もういいかな」と一時は引退も考えていたようだ。
ボクシングから離れて生活をしていたが、少しずつリング復帰への気持ちが高まっていった。
復帰を決意したのは「自分はモチベーションもやる気もありませんでしたが、両親や後援会がサポートしてくれて頑張ろうかなと思いました。支えてくれた人の存在が大きかった」と話している。
また「ボクシングをやめるつもりでいました。父親に相談してバイトするといったら、月使ってる額と収入が合わなくて、このままじゃ破産するって言われて。じゃあ、ボクシングやる」と話していた。経済面での苦労もあったようだ。
戦う理由を見つけ、リングに戻る決意をした。
ボクサーと減量
比嘉の計量失格の原因は、階級を変えられなかった事だ。
若くしてチャンピオンになると、体の成長に対応できず減量がキツくなる。
階級を上げられたらいいが、チャンピオンとしての防衛戦が待ち受けているため、簡単には階級を変えられない。
また、階級を変えたらチャンピオンを返上しなければならない。
世界戦のチャンスを掴める選手はほんの一握りだ。そのチャンスを逃すことはできないだろう。
比嘉は、試合の度に10キロを超える減量をしていたようだ。飲まず食わずの減量で精神的な苦痛は計り知れない。
また、過酷な減量を続けリバウンドを繰り返していくと体重も落ちにくくなる。
私も経験があるが、落とす幅が大きくなるとリバウンドも大きい。
それを繰り返していくと、体重が徐々に増えていってしまう。
比嘉は当時の状況について「負けたのは予想外だったが、1時間後には食べたり飲んだりできることに幸せに感じました」
「お金あるのにコーラも買えないし、ホームレスが羨ましく感じた時もありました」と減量の過酷さを語った。
今回は階級を上げて、119パウンド(53.9kg)契約での試合となる。
今後はバンタム級(53.5kg以下)を主戦場にして戦っていくようだ。
体重は一時期68kgもあったようだが、現在は60kgほど。リミットまで約6キロほどで試合に向けてのコンディションを整えている。
今後の比嘉大吾
今後について多くは語らなかったが「世界チャンピオンを目指すのはもちろんなのですが、ここまで試合期間を空けたことがないから、ここだけに集中したい。ファンに勝った姿を見せて安心させたいです」と話していた。
今回の対戦相手はバンタム級11位のジェイソン・ブエナオブラ(フィリピン)。
戦績は7勝3KO4敗3分。身長168cmのサウスポーだ。
比嘉は階級を上げた分パワーが増し、持ち味であるプレッシャーも強くなるだろう。
具志堅会長は「2試合くらいやれば先が見えてくる。できれば年内、世界挑戦させてあげたい」と話していた。
バンタム級は井上尚弥(26=大橋)が2つのベルトを持ち、ひとつ下の階級のスーパーフライ級には井岡一翔(30=Reason大貴)が王者として君臨している。
またスーパーバンタム級では岩佐亮佑(30=セレス)が王座に復帰した。
軽量級でファンの多い比嘉の復帰で、ボクシング界がさらに盛り上がっていくだろう。