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フィリーズのファンが「白いタオル」ではなく「赤いタオル」を振って応援する理由

宇根夏樹ベースボール・ライター
ブランドン・マーシュ/左はウィリアム・コントレラス Sep 24, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 フィラデルフィア・フィリーズは、2007年から2011年までナ・リーグ東地区を制し、2008年はワールドシリーズ優勝、2009年はナ・リーグ優勝を飾った。当時、シチズンズバンク・パークでは、観客が白いタオルを振りながら、フィリーズを応援していた。

 その後、フィリーズは、ポストシーズンから遠ざかった。シチズンズバンク・パークでポストシーズンの試合が行われるのは、フィリーズが0対1でセントルイス・カーディナルスに敗れた、2011年10月7日のディビジョン・シリーズ第5戦以来となる。

 雨などによる順延などがなければ、10月14日のディビジョン・シリーズ第3戦がその試合だ。ワイルドカード・シリーズの2試合は、カーディナルスの本拠地、ブッシュ・スタジアムが舞台だった。ディビジョン・シリーズの第1戦と第2戦は、アトランタ・ブレーブスの本拠地、トゥルーイスト・パークで行われる。

 今回、シチズンズバンク・パークの観客は、白いタオルではなく、赤いタオルを振る。

 タオルの色が変わるのは、白いタオルが「白旗=降伏」のようで縁起が悪い、ということではない。2016年から、白いタオルを振る応援は禁止されている。これは、シチズンズバンク・パークに限った話ではない。ボールと同じ色のタオルだと、選手からボールが見えにくくなり、プレーの妨げになる、という理由だ。

 2010年のディビジョン・シリーズ第2戦には、シチズンズバンク・パークでライトを守っていた、シンシナティ・レッズのジェイ・ブルースが、打球を見失い、エラーを犯している。これにより、2人の走者が生還し、レッズはフィリーズに逆転された。ブルースは、照明の光が目に入ったせいだと説明したが、観客が振っていた白いタオルが原因ではないかとの憶測も飛び交った。MLB.comのトッド・ゾレッキーによると、ブルースのエラーとなるフライを打ったジミー・ロリンズは、赤いタオルにすべきだと語ったという。

 なお、トゥルーイスト・パークのファンは、ポストシーズンの試合に限らず、片手をトマホーク(斧)に見立てて振り下ろす動作を繰り返し、ブレーブスを応援している。トマホーク・チョップだ。

 こちらの応援(とブレーブスというチーム名)には、クリーブランド・インディアンズがクリーブランド・ガーディアンズと改名したのと同様の理由から、抗議の声が上がっているものの、今も続いている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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