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【インタビュー】テキサス・ギタリスト:クリス・デュアーテ、2015年11〜12月来日。日本愛を語る

山崎智之音楽ライター
Chris Duarte

テキサスのブルース・ロック・ギタリスト、クリス・デュアーテが2015年11月に日本ツアーを行う。

1995年にジャパン・ブルース・カーニバルで日本初見参を果たしたクリスだが、近年ではほぼ毎年のペースで来日。初来日から20周年のアニヴァーサリー・イヤーとなる今回のツアーは全国縦断20公演という、最大規模のものとなる。

本場テキサス仕込みの、ワイルドに弾きまくるブルース・ギターは日本でも熱狂的に支持されてきたが、今回のツアーもあらゆる音楽リスナーのハートにギターで斬り込む、必見のライヴとなることが予想される。

いったんステージを下りると、クリスはソフトな語り口のナイス・ガイだ。彼はジャパン・ツアーに向けての抱負と、日本への愛情を熱く語ってくれた。

<日本のファンは音楽に敬意を持って、注意を払ってくれる>

●2015年11月から12月にかけてのジャパン・ツアーではどんな演奏を見せてくれるでしょうか?

情熱と感情を込めたギターを聴かせる、感情あふれるステージを見せるよ。ブルースがあってロックがあって、ソングライティングもある。毎年来てくれるファンも、初めて来る人も、きっと楽しめるショーになる。

●近年の“洋楽アーティスト”としては異例の頻度と公演回数の来日ですが、これほど日本でプレイするのは何故でしょうか?

その答えはシンプルだ。日本が大好きだからだよ。日本の音楽ファンはとても熱心で、知識がある。だから彼らの前でプレイするときは緊張するけど、良いプレイをすればすごく盛り上がってくれるんだ。これほど大規模のジャパン・ツアーを出来るのは、すべて日本のスタッフのおかげだよ。彼らが全国の会場をブッキングしてくれたから、ショーを行うことが出来るんだ。俺だけでは次の公演地に行くことすら出来ない。さらにベーシストのヨシさん(小笠原義弘)の人気のおかげもある。彼がBLUESTONE COMPANYでやっていた頃から友達だけど、彼は日本でとても人気のあるベーシストだからね。彼らのおかげで、東京や大阪だけでなく、アメリカのミュージシャンの大半が行ったことのない都市でプレイすることが出来る。 佐賀でプレイしたときは、一人のファンが「信じられない。あなたが来てくれるなんて!」と、すごく喜んでくれた。もっといろんな都市でプレイしたかったけど、アメリカでのスケジュールが既にブッキングされていて、どうしても帰国しなければならなかったんだ。次回はもっと時間をかけて、あらゆる町に行ってみたい。日本のカントリーサイドは、どこか心が温まるんだ。

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●日本とアメリカでは、観客の反応はどのように異なりますか?

アメリカの音楽ファンは、お気に入りの音楽を楽しもうぜベイビー!みたいな姿勢だな。日本のファンはアメリカ人よりも静かだ。ライヴの開演前、カーテンが下りているから、誰もいないと思ってしまうこともある。でもショーが始まるとみんな声援を送ってくれて、拍手をしてくれる。日本のファンは音楽に敬意を持って、注意を払ってくれるんだ。面白いことに、横浜のお客さんはいつもノリが良いんだ。酔っ払ってシャツを脱いで…港町だからかも知れないね。どっちも好きだ。日本でプレイするのはいつだって楽しいよ。

●今回、小笠原義弘がベーシストとして同行しますが、日本のミュージシャンにはどんな特徴があるでしょうか?

日本人プレイヤーの演奏技術は世界のトップクラスだよ。ヨシさん、それからスミトモさん(住友俊洋/T. Sumitomo Band,元BLUESTONE COMPANY)とは何度もプレイしている。あとギタリストのichiroやナニワエキスプレスのドラマーのリキさん(東原力哉)…みんな最高のミュージシャンだ。日本人ミュージシャンは即興のジャムを苦手とする人もいるけど、今挙げた人たちは素晴らしいテクニックを持っているのに加えて、本能と直感でプレイする能力があるし、何よりも魂、ソウルがある。

●日本語は話せるようになりましたか?日本の文化には興味がありますか?

何度も日本に来ているから、スコシ(笑) 話せるようになったし、読むことも出来る。前の妻が日本人だったこともあって、日本の文化も大好きだよ。伝統的な部分とモダンな要素を両立させているのが、アメリカ人から見ると、とても神秘的だ。J-POPのテレビで聴くことがある。アーティストの名前は知らなくても、コード進行やメロディがアメリカのものとは異なった個性を持っていて、面白いと思うよ。マーティ・フリードマンがJ-POP業界に深く関わっているのも知っているよ。…俺がJ-POPをやるかって?いや、俺がやっている音楽はアメリカのメインストリームからもかけ離れたスタイルだからね。J-POPの曲でギターを弾くのは難しいと思うよ。昭和のムード歌謡のボックス・セットをよく聴いているけど、アメリカの音楽にはない展開が魅力だ。それと日本に来ると、大相撲をテレビで見るのが好きなんだ。白鵬と朝青龍のライバル関係が良かったね。“善vs悪”という感じで、完璧だった。日馬富士も優れた横綱だし、日本で相撲を見るのを楽しみにしているよ。

<究極の一撃といえるアルバムを作りたい>

●現在の最新作は『Lucky 13』(2014)ですが、次のニュー・アルバムからの曲も日本でプレイするでしょうか?

最新アルバム『Lucky 13』
最新アルバム『Lucky 13』

ああ、そのつもりだ。何曲か書いているし、すごく良いアルバムになると確信している。2016年の前半にはニュー・アルバムを出したいと考えているよ。ただ気になるのは、ここ10年以上、俺のアルバムを出してきた『ブルース・ビューロー・インターナショナル』の親会社『シュラプネル・レコーズ』のバック・カタログがすべて売却されたことなんだ。『オーチャード・グループ』という投資グループに売られたんだよ。だから『シュラプネル』の新体制がどうなるか、俺のアルバムを出せるかも判らない。でも俺の意向としては、『シュラプネル』創始者のマイク・ヴァーニーと一緒にやっていきたい。

●マイク・ヴァーニーはしばしば“プロデューサー”としてクレジットされていますが、どのような役割を果たしているでしょうか?

プロデューサーとしての彼の仕事は、アーティストのベストな部分を引き出すことにあるんだ。俺が曲のアイディアを持ってくると、マイクはそれをシェイクして、さらに良くするためにどうするか考えてくれる。彼はまさに生ける音楽の百科事典なんだ。俺とは人間としてもウマが合うし、一緒に作業していて楽しいよ。

●マイクは1980年代から“速弾きギタリスト仕掛け人”としてイングヴェイ・マルムスティーンやポール・ギルバート、マーティ・フリードマンなどをデビューさせてきましたが、『シュラプネル』系であなたが好きなギタリストはいますか?

たくさんいるよ。リッチー・コッツェン、グレッグ・ハウ、トニー・マカパイン、ポール・ギルバートのいたレーサーX…いずれも速く弾くだけではなく、ハートを込めて弾くことが出来るギタリストだ。

●最近の『シュラプネル』系で良いギタリストはいますか?

今の『シュラプネル』はさまざまなスタイルに分かれているんだ。ブルース・ロック系ではインディジネスのマトー・ナンジやストーニー・カーティス・バンドが良かったし、プログレッシヴ系ではマイケル・ランドウのライヴ・アルバムが良かった。それにアンクル・モーズ・スペース・ランチもクレイジーで最高だよ。常にギター・ミュージックに革新をもたらしてきたレーベルだし、新体制になってどう変化していくか興味があるよ。

●あなたが日本で知られるようになったのは1995年、『テキサス・シュガー・ストラト・マジック』によってですが、あのアルバムについてどんなことを覚えていますか?

『テキサス・シュガー・ストラト・マジック』は俺にとって特別なアルバムだった。1994年2月に『シルヴァートーン』と契約して、プロデューサーのデニス・ヘリングがカンザス・シティまで俺のライヴを見に来たんだ。デニスは2晩のショーを見て、メモを取って「今日やったこれらの曲をレコーディングしよう」と言ってきた。基本的にライヴ形式で録音したんだ。全員がひとつの部屋で、同時にプレイしてね。ほとんどオーヴァーダビングもなかった。そのおかげで生のライヴ・フィーリングがあったんだ。その後、初めて日本に来たんだ。ジャパン・ブルース・カーニバルで、バディ・ガイと一緒だった。日本との関係として、最高のスタートだったな。それから20年、リリースしてきたアルバムはすべて誇りにしているし、嫌いなアルバムなんて1枚もないよ。ただ俺は究極の一撃といえるアルバムを作りたいんだ。A地点からB地点に到達する最高の道筋を探している。いつか日本のファンに、“究極のクリス・デュアーテ・アルバム”を聴いてもらいたいね。

【Chris Duarte Group Japan Tour 2015】

NOVEMBER

11/19(木)- 仙台 LIVE HOUSE ENN 2

11/20(金)- 山形 FRANK LLOYD WRIGHT

11/21(土)- 福島 AREA 559

11/22(日)- 茨城・ひたちなか STORMY MONDAY

11/23(月)- 横浜 THUMBS UP

11/25(水)- 東京・下北沢 GARDEN

11/27(金)- 浜松 K.J. HALL

11/28(土)- 金沢 MILLION CITY

11/29(日)- 富山 LOG SESSION

11/30(月)- 名古屋 TOKUZO

DECEMBER

12/1(火)- 松坂 M'AXA

12/3(木)- 岡山 MO:GLA

12/4(金)- 神戸 VARIT

12/5(土)- 大阪 MUSIC BAR S.O.Ra

12/6(日)- 宇和島 BOOBY

12/8(火)- 出雲 APOLLO

12/9(水)- 米子 AZTEC LAUGHS

12/10(木)- 広島 JUKE-

12/11(金)- 福岡 MUSIC BAR S.O.Ra

12/12(土)- 佐賀 RAG-G

問い合わせは各会場まで。

公式サイト:Chris Duarte Group

Joyful Noise Official Site

音楽ライター

1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,300以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検1級、TOEIC945点取得。

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