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ワカモノのミカタ政党はどこだ!若者政策の各党比較【都議選2021】

室橋祐貴日本若者協議会代表理事
(写真:shibainu/イメージマート)

6月25日に告示され、7月4日に投開票が行われる東京都議会議員選挙。

筆者が代表理事を務める日本若者協議会の地方支部である「関東支部」では、各党の公約に若者の声を反映させようと、主要政党である、都民ファーストの会、公明党、自民党、日本共産党、立憲民主党、東京維新の会の6党に対して、2021年4月から政策提言(東京版ユース・パーラメント)を行ってきた。

日本若者協議会関東支部
日本若者協議会関東支部

そして、6月11日に行った公開討論会に合わせて、各党にアンケートを実施し、若者政策の比較表を作成。

日本若者協議会関東支部の提言内容も含め、どこの党が若者の声を公約に反映させているのか、どの党が若者政策に注力しているのかわかるようにまとめた。

若者の政治参加

「若者の政治参加」の各党公約と日本若者協議会関東支部の提言を比較した。日本若者協議会関東支部作成
「若者の政治参加」の各党公約と日本若者協議会関東支部の提言を比較した。日本若者協議会関東支部作成

まずは、「若者の政治参加」を見ていこう。

こうして比較すると、各党とも主権者教育の拡充は入れているが、それ以上に注力しているかは党によって差が出ている。

また、「被選挙権年齢引き下げ」など、国政(公職選挙法)に関わるテーマも含まれており、そこも差し引いて考える必要がある。

そして、自民党が入れている「東京こども基本条例」は今年4月に施行されており、全会一致で成立しているため、他の党も推進の立場であることには変わらない(かつ、この条例自体は公明党がリードしてきたのが一般的な評価である)。

こうした点も考慮し、若者(日本若者協議会)の声を反映させている政策を太字(※)にすると、「若者の政治参加」分野では日本共産党が一歩抜きん出ていると評価できるだろう。

※この比較表では簡易的にしているため主要提言に絞っているが、提言全文に載っている項目も太字にしている。他テーマも同様。

日本若者協議会

●主権者教育の拡充

・校則の改正プロセス明文化

・政治的中立性の緩和

・児童生徒の学校運営への参加推進

・学校内民主主義の現場把握・理解促進

・学校自治条例策定

政策形成過程への参画

・行政や附属機関への若者の参加促進

・若者議会・若者協議会の設置

・定期的なタウンミーティングの開催

都民ファーストの会

主権者教育の拡充

・中学高校時の模擬投票の実施

・被選挙権年齢引き下げ

政策形成過程への参画

・若者協議会の開催

●その他

・インターネット投票の実現

・ドメイン投票方式の導入

自民党

●主権者教育の拡充

・模擬投票の出前授業等の推進

・東京こども基本条例の推進

●政策形成過程への参画

・SIMの導入

・もしあなたが行政マンだったら

公明党

●主権者教育の拡充

・主権者教育の拡充

●政策形成過程への参画

・ユーストークミーティングの実施

日本共産党

●主権者教育の拡充

・子供の権利保障の立場から校則の見直しを生徒参加で実施する

●政策形成過程への参画

・こども基本条例の3年後見直し時期に子供の意見を聞く

・子ども議会・若者学生議会

●その他

・オープンガバメントの推進

立憲民主党

●主権者教育の拡充

・学校生活における生徒の自己決定の促進

・政治知識の涵養

・主権者教育の拡充

・都民投票条例の制定

●その他

・オープンガバメントの推進

東京維新の会

●主権者教育の拡充

・主権者教育の充実・強化

●政策形成過程への参画

・被選挙権年齢の引き下げ

・供託金の金額を年齢に応じて見直す

●その他

・ドメイン制度の検討

・ブロックチェーン技術等を活用したネット投票

・マイナンバーカードを活用したコンビニ投票

子育て・教育

「子育て・教育」の各党公約と日本若者協議会関東支部の提言を比較した。日本若者協議会関東支部作成
「子育て・教育」の各党公約と日本若者協議会関東支部の提言を比較した。日本若者協議会関東支部作成

次に、「子育て・教育」。

このテーマは、どの党も力を入れており、大きな差を見出すことは難しい。

ただ強いて差をつけるとしたら、公明党は全項目が太字(若者=日本若者協議会の提言を反映している)となっており、高く評価できるだろう。

他方、日本共産党は「学生応援給付金の実施」や「都立大学の学費半額」など予算がかかるものが多く、どう実現するかが課題となる。

日本若者協議会

●貧困の解消

・奨学金制度の拡充

・資格検定の補助

・高校入学準備給付金の創設

・ひとり親家庭支援

・学校給食の無償化

・小中私立の無償化

・申請主義の改善

●保育・学校環境の改善

・待機児童の改善

・学校における働き方改革の推進

・少人数支援体制

・専門職の常勤化・増員

●健康な児童生徒の成長

・児童虐待対策

・若者の自死対策

・ヤングケアラー支援

・生活のために必要な教育の拡充

・メンタルヘルス教育

・アウトプット教育

都民ファーストの会

●貧困の解消

・返還免除型奨学金拡充

・小中高1人1台の整備

・online英会話の補助

・子育て・家計負担の軽減

・ひとり親の養育費確保支援拡大

・塾代支援の強化

●保育・学校環境の改善

・保育・学童の待機児童ゼロ

・保育・幼児教育の「質」の向上

・専門性の高い外部人材の確保

●健康な児童生徒の成長

・自殺相談・支援

・ヤングケアラー支援

・起業家教育、健康教育、家事育児教育の拡充

・少人数指導・教科担当制の強化

・都立学校における理数・STEAM教育の強化

自民党

●貧困の解消

・学校給食の無償化

・こども庁の創設

・望まない孤独解消

・学校教育の無償化

●保育・学校環境の改善

・学童保育の拡充

・兄弟姉妹仲良く登園プロジェクト

●健康な児童生徒の成長

・児童虐待対策

・教育のデジタル化の早期実現

・小学5,6年から教科担任制度

・大学教育の先を見据えたカリキュラムの充実

公明党

●貧困の解消

・奨学金返済「肩代わり」

・英検等受験料の支援

・ひとり親家庭における子どもの養育費負担軽減

・第2子の保育料無償化

●保育・学校環境の改善

・待機児童の解消

・学校の働き方改革推進

●健康な児童生徒の成長

・児童虐待対策

・若年層の自殺対策

・ヤングケアラー支援

・こども基本条例により子ども政策の総合的推進

・IT技術を活用した児童生徒の心をケア体制

・スクールカウンセラー

日本共産党

●貧困の解消

・学生応援給付金の実施

・都立大学の学費半額

・小中の給食費無料化

・ひとり親家庭支援

・食糧支援団体への支援

・私立高校の授業料以外の負担軽減

●保育・学校環境の改善

・待機児童ゼロ

・30人学級の推進

・保育の質の確保

●健康な児童生徒の成長

・ケアラー支援条例制定

・特別支援学級の強化

・若者の美術館入館料の減額

・日本語学級の強化

・心身の健康や生活相談体制強化

立憲民主党

●貧困の解消

・給付型奨学金

・ひとり親家庭支援

・小中の給食費無償化

・教育の無償化

・子ども食堂・フードパントリーへの支援

●保育・学校環境の改善

・待機児童ゼロ

・保育所ICT化・保育人材の確保

・少人数学級支援

・スクールソーシャルワーカーの増員

●健康な児童生徒の成長

・児童虐待・虐待死ゼロ

・自殺総合対策の推進

・ヤングケアラー実態把握調査の実施

・日本語教育支援

東京維新の会

●貧困の解消

・高校・大学の1年間の授業料免除

・修学支援世帯対象の補助制度拡充

●保育・学校環境の改善

・公設民営学校の導入

・ICT機器をフル活用した授業の展開

・飛び入学制度の促進

・海外留学の促進と東京英語村の拡充

●健康な児童生徒の成長

・理学療法士の広域配置

・自殺防止施策の見直し

・自殺対策のプッシュ型へのシフト

・被虐待児ピアカウンセリング制度の創設

・児相の特別区移転促進

・ヤングケアラー対策

ジェンダー

「ジェンダー」の各党公約と日本若者協議会関東支部の提言を比較した。日本若者協議会関東支部作成
「ジェンダー」の各党公約と日本若者協議会関東支部の提言を比較した。日本若者協議会関東支部作成

最後に「ジェンダー」。

このテーマは、自民党が弱い印象を受けるが、他の党はなかなか大きな差を見出すことが難しい。

日本若者協議会

●性犯罪防止

・教職員による性暴力に対する罰則強化

・若年層の売春防止

・性依存症の理解増進と治療促進

●包括的性教育

・教職員に対するジェンダー教育の実施

・多様な性や人権を含む包括的性教育の実施

●子育てしやすい環境づくり

・妊娠から出産子育てまでの包括的支援

・若年妊娠者への支援

・子育て中の障がい者に対する支援

・男性の産休育休推進

・学校への生理用品設置

・多様な婚姻・子育て

都民ファーストの会

●性犯罪防止

・子どもへの猥褻対策の強化

●包括的性教育

・性教育の拡充

●子育てしやすい環境づくり

・不妊治療の適正な実施

・都内での安全な分娩体制・周産期医療体制の整備

・同性パートナーシップ制度の創設

・育休取得の義務化

・生理の貧困解消

・フェムテックへの支援

●その他

・女性候補者割合50%

・都庁女性管理職50%

・選択的夫婦別姓制度の導入

自民党

●性犯罪防止

・性犯罪、性暴力対策の集中強化

●包括的性教育

・ジェンダー教育の推進

●子育てしやすい環境づくり

・学童保育の拡充

・兄弟姉妹仲良く登園プロジェクト

・子育て中の女性の職場復帰・再就職支援

・不妊治療の自己負担0

・出産時の経済支援

公明党

●性犯罪防止

・児童生徒への性暴力根絶

●子育てしやすい環境づくり

・妊娠から出産子育てまでワンストップで切れ目のない支援

・若年妊娠した高校生への支援

・男性の産休等取得推進

・学校への生理用品設置

・パートナーシップ制度

日本共産党

●性犯罪防止

・女性相談事業の拡充

・性犯罪被害者支援の体制強化

・若年被害女性支援事業

・痴漢ゼロ

●包括的性教育

・性教育の充実

●子育てしやすい環境づくり

・妊婦健診・出産費用の無料化

・生理用品の無料配布

・選択的夫婦別姓の実現

・パートナーシップ制度の実施

●その他

・ジェンダー平等推進局の設置

・東京都女性管理職50%

立憲民主党

●性犯罪防止

・教員のわいせつ行為への指導・対応

●包括的性教育

・専門家の協力を得て性教育の拡充

●子育てしやすい環境づくり

・妊娠出産子育ての切れ目ない支援

・不妊治療の無償化

・予期せぬ妊娠者の相談体制強化

・パートナーシップ制度

・LGBT当事者の差別対策

・育休取得支援

●その他

・ジェンダー予算の実現

・企業での女性活躍推進

東京維新の会

●性犯罪防止

・性暴力被害者、セカンドレイプ被害者への支援強化

・出所者の把握と治療、性犯罪再犯の防止策

・DV相談強化

●包括的性教育

・性と生殖に関する健康と権利の増進

・妊娠の過程について取り扱うなど、根本的に性教育の在り方を見直す

●子育てしやすい環境づくり

・育児休業給付金が標準月額報酬全額まで拡充

・子育て支援の助成制度

・パートナーシップ宣誓証明制度

・旧姓併記の実現

・選択的夫婦別姓の実現

●その他

・女性雇用率や役員率の高い企業等に対する政策的減税

今回は若者に大きく関わる3テーマに絞って取り上げたが、もちろん他のテーマでも公約を掲げており、ぜひ投票前に各党の公約を見ることを推奨したい。

理想としては、前回2017年の公約が実現されているか見ることで、実行力も見ることができるが、その点、都民ファーストの会はHP上で2017年公約の進捗を載せており、そうした姿勢は高く評価できる。

また、公約だけでは本気度や実現性がどうしても見えない部分もあり、そこは今後メディアが討論会等を通して明らかにすることを期待したい。

都民ファーストの会

自民党

公明党

日本共産党

立憲民主党

東京維新の会

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

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