喫煙はあなたの老後を「孤独」にする 知られざるタバコの負の側面
昨日5月31日は世界禁煙デーでした。タバコは呼吸器の病気や心臓の病気のリスクを高くさせ、「百害あって一利なし」ですが、依存性があるためなかなか禁煙できない人が多いのが現状です。今日は、喫煙は老後を孤独にするという話を紹介します。
日本人の喫煙率は何%?
令和2年と令和3年は「国民健康・栄養調査」が新型コロナの影響で中止されたため、日本の現在の喫煙率は不明です。もしかすると新型コロナで健康意識も高まり、喫煙率は低下しているかもしれません。最新のデータでは、喫煙率は男性27.1%、女性7.6%となっています(1)(図1)。特に男性は4人に1人以上が喫煙している状態で、まだまだ高い状況です。
最近は喫煙する場所がなかなかなく、肩身が狭いと思う喫煙者が増えたかもしれません。そのため、うっかり路上で喫煙してしまう人もいます。
しかし、2025年の大阪・関西万博を見据え、大阪市では市内全域を路上喫煙禁止地区とする方針を明らかにしています。全国的にもこの流れは広がっていくと予想されます。
喫煙は8~10年寿命を短くする
タバコが呼吸器や心臓の病気に悪さをすることはみなさんもご存知と思います。特に高齢になって発症する慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、実際に診ていてしんどい病気だなあと感じます(2)。
早期に禁煙できれば軽症で済むことも多いですが、60歳・70歳を超えてくると息切れがツラく、「若い頃タバコを吸わなければなあ」と後悔する方も少なくありません。
日本の寿命調査に参加した6万人以上の男女を調べると、喫煙者の平均寿命は男性で8年、女性で10年短かったとされています(3)。ものすごい害悪だと思います。
タバコを吸う人は孤独になる?
さて、喫煙者の中には「タバコはストレス解消」「人とコミュニケーションをとる上で必要」と考えている人がいるかもしれません。
50歳以上の8,780人の喫煙者を対象に行われた大規模な研究があります(4)。喫煙している人を対象にして、調査時から4年後、8年後、12年後を追跡し、社会的孤立や自身の感じる孤独感がどうなっていくかを調べたものです。
これによると、喫煙者は非喫煙者と比べて孤独になりがちで、家族や友人との交流も少なく、地域活動への参加も少ないということが判明しました。さらに、時間が経過するにつれて喫煙者の社会的接触は減少し、次第に孤立していくことが明らかになりました。
上述したように、喫煙者は呼吸器や心臓の病気などの健康的問題を抱える頻度が高く、これによって外出が減り、交流が減る可能性があります。さらに、タバコはうつ病のリスクにもなることから、相乗的に孤立が深まっていくのかもしれません。また、孤独によって、さらに喫煙量が増すという悪循環も報告されています(5)。
喫煙が社会的孤独と関連するという報告はいくつかあります(6,7)。若い頃はその実感はないと思いますが、高齢の喫煙者をたくさん診ている呼吸器内科では納得できるデータかもしれないと感じました。
まとめ
喫煙歴が高かったバブル経済期とは違い、少なくともタバコが社交的なツールになるということはなさそうです。
COPDを発症しているかどうかをみるチェックリスト(8)(図2)があります。喫煙者で合計点数が4点以上の場合、COPDを発症している可能性があります。その場合は医療機関を受診し、検査を受けることをおすすめします。
(参考資料)
(1) 国民健康・栄養調査(URL:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html)
(2) 新型コロナの死亡率を約2倍にする「たばこ病」 コロナ禍こそ禁煙を(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20210531-00239230)
(3) Sakata R, et al. BMJ. 2012;345:e7093.
(4) Philip KE, et al. Lancet Reg Health Eur. 2022 Jan 2;14:100302.
(5) Yang J, et al. Am J Health Promot. 2022 Mar 24;8901171221081136.
(6) Zhang C, et al. Ann Transl Med. 2020 May;8(10):649.
(7) Hofman A, et al. Psychiatry Res. 2022 May 5;313:114602.
(8) Samukawa T, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2017 May 15;12:1469-1481