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地価公示は今年も「全国的に上昇」を継続。調整が入るのはいつ?

櫻井幸雄住宅評論家
東京の都心部では地価上昇が続いているとされるが……。(写真:イメージマート)

 3月22日に発表された「令和5年地価公示」で全国の地価は全用途で2年連続上昇したことが明らかにされた。特に東京、大阪の中心部や北海道の札幌市内で地価上昇が著しい、との分析である。

 昨年9月に発表された「2022年都道府県地価調査(基準地価)」でも全国の地価が3年ぶりに上昇に転じたことが発表されていた。つまり、この1年、「地価上昇」が叫び続けられてきたわけだ。

 3月16日に不動産経済研究所が発表した首都圏の2月の新築マンション1戸当たりの平均価格は6778万円で、バブル後期の1990年に記録された首都圏新築マンション平均価格6214万円を大幅に上回っている。ちなみに、1月の首都圏平均価格も6510万円と高かった。

 ただし、ちょうど一年前の昨年3月17日に発表された平均価格は7418万円だったので、それと比べると下がったことになる。

 不動産経済研究所が毎月発表している首都圏の新築マンション平均価格は上がったり、下がったりを繰り返しており、必ずしも右肩上がりではない。

 それでも、地価公示、基準地価で「全国的に上昇」が続くと、全国的に地価が上昇を続けていると思われがち……ところが、不動産の現場では、必ずしも「上がり続ける」という予測にはなっていない。

国が発表する地価は、政策を反映する

 国が発表している地価は3種類ある。

 毎年3月に発表される公示地価、7月に発表される路線価、そして9月に発表される基準地価だ。それらは、固定資産税、相続税を算出するためや土地取引の指標となるために発表されている。

 が、公表された地価で実際の土地取引が行われることはまずない。

 実際に取引される金額は「実勢価格」とされ、国が発表する3つの地価より高くなることが多い。特に都市部の土地は乖離が大きくなる。

 それは、税金を算出するためや取引の指標となるため、国が発表する地価は抑えめの数字になるからだ。

 金額が異なると同時に、価格上昇や価格下落の動きも実際とは異なることが多い。

 その理由として挙げられるのが、実勢価格と国が発表する地価との間にはタイムラグがあるということ。実勢価格はリアルタイムの地価であり、国が発表するのは、それよりも1年程度前の地価。だから、「もう下がっている」ときでも、「まだ上がる」とう発表がされたりするわけだ。

 そして、もうひとつ、国が発表する地価には、政策が影響を与えがち、という事情もある。

 たとえば、国が「景気回復」に力を入れているときは、そのことを裏付けるように「地価は上昇している」という結果が導き出されやすい。反対に、過熱した景気を沈静化させたいと考えれば、「一部に地価下落がみられる」となる。

 そのため、以前は国が発表する地価に対して疑いの目が向けられがちだった。少なくとも昭和時代は、地価公示で「全国的に地価が上昇」と発表されても、「実際はどうか」という検証が行われた。

 しかし、今は地価公示でも基準地価でも「公の数字で公表されているのだから、正しい」と信じて疑わない風潮が広まってしまった。「数字は嘘をつかない」と信じる人が増えた結果か。現実には、怪しい数字があるにもかかわらず、だ。

 では、「令和5年地価公示」で、全国的に地価上昇が続いているとされる現在の状況はどうか。不動産市況の「実勢」を検証してみた。

地価が上昇を続けている、とされる大都市部は

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住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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