マンションちょっといい話。あの人気物件パンフレット、「ご自由にお持ちください」とは?
上の写真は、袋に入れられたマンションのパンフレットが「ご自由にお持ちください」と並べられているところ。その横ではマンションの販売活動用につくられたクリアファイルも「ご自由にお持ちください」となっていた(下の写真)。
これは一体どういうこと?と頭の中がバグりそうになる光景は、「HARUMI FLAG」(晴海フラッグ)の超高層棟「HARUMI FLAG SKY DUO」のマンションパビリオンで発見したもの。ここ数年、大人気で販売されたことで注目を集めた「HARUMI FLAG」において、最後に分譲されたあの超高層マンションである。
あれ、「HARUMI FLAG SKY DUO」は抽選になる人気ぶりでソッカンしたはず……。
もしや、大人気完売というのはまやかしで、大量に売れ残っているのか!と勘違いする人も出てきそうなので、急いで正確な説明をしたい。
「HARUMI FLAG SKY DUO」は、間違いなく「大人気で短期完売」した。そして、マンションパビリオン(販売センター)も役目を終えた。
しかし、役目を終えたはずのパビリオンには今も人の出入りがある。購入を決めた契約者が各種手続きのために出入りすることがあるからだ。
それとは別に、必要な手続きがなくても、パビリオンに行く人たちがいる。
それは、「もう一度モデルルームを見たい」という契約者たちだ。
日本のマンションは建物が完成する前に販売・契約を行うケースが多い。「HARUMI FLAG SKY DUO」も同様。建物の完成は2025年夏の予定で、実際の建物を見るのも、入居できるのももう少し先になる。
その間、契約者は待ち遠しい。
新車を買ったときも、新築マンションを買ったときも、待ち遠しい時間がある。特に新築マンションは1年以上待つケースが多く、待ち遠しい時間が長い。
その間、パンフレットを何度も眺めてしまい、家族から「また見てるの」と言われたりする。
パンフレットを見ているうち、「あの部分はどうなっているのか」と気になる箇所が生じることがある。もしくは、単純にパンフレットだけでは飽き足らず、もう一度モデルルームを見たいという人も……。
そこで、パビリオンに連絡し、モデルルーム見学を頼む。不動産会社も、長くお待たせして申し訳ない、という気持ちがあるので、再度の見学を受け入れることが多い。
ちなみに、契約していない人が「モデルルームを見せて」と頼んでも、それは断られる。しかし、契約者の願いは断り切れない。
結果として、どんなマンションの販売センターでも、販売終了後も人の出入りが生じるのである。
よろしければ、パンフレットやクリアファイルを……
販売終了後のモデルルーム見学は通常、販売員のアテンドなしの自由見学となる。
自由にモデルルームを見た後、契約者は勝手に帰って行く。それで十分なのだが、「HARUMI FLAG SKY DUO」では、「せっかく来ていただいたのだから……」とおもてなしを考えた。
それがパンフレットとクリアファイルを「ご自由にお持ちください」とすることだった。
パンフレットもクリアファイルも販売活動用につくられたもの。販売終了後、余ったものはいずれ廃棄処分される宿命にある。
それももったいない話なので、在庫限りで「もし、よろしければ」とパビリオン出入り口近くのデスクに並べた。
それが、大好評なのだ。
クリアファイルは思い出になる。
一方、パンフレットは、契約者ならば、すでに手持ちのものがあるはず。しかし、何度も読み返しているうちに、だいぶ傷んできたというケースがあるだろう。1セット新品のまま保管しておきたい、と考えていた人もいる。そこに、「ご自由に……」である。多くの見学者が喜んで持ち帰っている。
とはいえ、他の人も欲しがるだろうから、と1人で大量に持ち帰る人がいないところが、日本人の美徳というべきか。いまのところ、フリマサイトに多数出品されている気配はないので、パンフレットもクリアファイルも個人の思い出として大事に保管されていると推測される。
本来、マンションや一戸建て住宅は家族の幸せのために購入されるもの。家族が幸せになるためにマイホームを買った人は、契約から入居まで大きな喜びを味わう。人生で最も輝く時期のひとつになるはずだ。
晴海フラッグに関しては、「転売目的の購入者がいる」ことが話題となり、「お金儲けのために買っている人ばかり」と思われたりする。しかし、実際には家族の幸せのために購入を決断し、入居を楽しみにしている人たちがいる。
パンフレットやクリアファイルを喜んで受け取る人たちがいることを知り、改めて純粋な気持ちで「HARUMI FLAG SKY DUO」を購入した人たちが大勢いることに考えが至った。
マイホーム購入は、人生においてキラキラする出来事となる。部外者がその手助けをするのは容易ではない。が、少なくとも邪魔することや水をかけるようなことはするべきではない。
住まい関連の情報を発信する人間はそのことを肝に銘ずるべき、と年初にあたり思いを新たにした。