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なぜローマはデ・ロッシを解任したのか? トッティの「予言」が的中との声も

中村大晃カルチョ・ライター
8月25日、セリエA第2節エンポリ戦でローマを指揮するデ・ロッシ(写真:ロイター/アフロ)

9月18日、セリエAで今季最初の監督解任劇が起きた。結果重視のイタリアにおいて、それじたいは不思議ではない。だが、解任されたのがローマのダニエレ・デ・ロッシだったことは驚きだった。

レジェンドOBのデ・ロッシは、昨季途中にジョゼ・モウリーニョが解任された際、古巣を救うべく、求めに応じて就任。立て直しを図り、ヨーロッパリーグ(EL)でベスト4という成績を残した。これを受け、6月にクラブは契約を3年延長したばかり。それだけに、電撃解任は驚きを誘った。

■解任時の様子

『La Gazzetta dello Sport』紙によると、デ・ロッシは午前7時半に練習場トリゴリアに到着。スタッフと次節に向けた練習の準備をしていたが、オーナーのフリードキンからオフィスに呼ばれ、解任を知らされたという。練習場に向かっていた選手たちも驚きの解任劇だったそうだ。

午前の練習は中止となり、選手たちはトリゴリアを後に。集まっていたサポーターからは、監督ばかりが責任を負わされていると、批判の声も上がった。特に主将ロレンツォ・ペッレグリーニには罵声が浴びせられている。

クラブは同日、イバン・ユリッチ監督の就任を発表。新指揮官はその日のうちに練習の指揮をとっている。この、事前の警鐘なく朝に解任通知→当日に新体制始動の流れについて、『La Gazzetta dello Sport』紙はモウリーニョ解任時と同じだったと指摘している。

■解任理由

なぜ、この電撃解任に至ったのか。ローマは声明で「シーズンがまだ始まったばかりの段階で、速やかに希望する軌道を取り戻せるよう、チームの利益のために下した決定」と説明した。

もちろん、成績不振が大きな原因なのは言うまでもない。前述のように、ローマは開幕4戦で3分け1敗と白星なし。加えて、昨季終盤の公式戦7試合でも1勝しかあげていない。直近の11試合で勝利したのは一度だけということだ。

希望の「軌道」から外れているのは確かだろう。それは、チャンピオンズリーグ(CL)への復帰だ。今季はアルテム・ドフビクやマティアス・スレなど、1億ユーロ(約160億円)超を投じた大型補強を断行した。評価も悪くなかった。それだけに、欧州最高峰の舞台への切符は欠かせない。

また、『La Gazzetta dello Sport』や『La Repubblica』、『Il Messaggero』など複数紙によれば、デ・ロッシはクラブ上層部と衝突していたという。戦術システム(3バック/4バック)や夏の編成(補強・パウロ・ディバラの去就)、報道管理(ディバラやニコラ・ザレフスキの処遇)などを巡り、フリードキンやリナ・スルークCEOと溝があったと言われている。

■批判殺到

とはいえ、まだ開幕から4試合なのも事実だ。しかも、開幕2連勝で絶賛されていたユヴェントスと敵地で引き分けた第3節は称賛されていた。前節も、アディショナルタイムの失点でジェノアと引き分けたが、初勝利まであとわずかに迫っている。それだけに、解任を疑問視する向きも多い。

ヴァンサン・カンデラやラジャ・ナインゴランといったOBは、「クレイジー」だと批判。元幹部のヴァルテル・サバティーニは、「無念。実験的なチームの向上を認識できるのを期待するのは無駄。誰かは自分が全能だという妄想に生きている」と怒った。

アタランタのジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督も、移籍市場期間が理由でシーズン序盤に苦しんでいるチームは少なくないと指摘。4節でのデ・ロッシ解任に驚きを表し、「まったく結果以外を見ない」と嘆いている。

■「損するのはデ・ロッシ」だった?

しかし、デ・ロッシと同じレジェンドOBのフランチェスコ・トッティは、いずれ盟友が苦境に立たされると考えていたのかもしれない。少なくとも、イタリアメディアは、『Il Messaggero』紙の先週のインタビューが、トッティの「予言」のようだと報じている。

トッティはインタビューで「ダニエレは避雷針であり、損をするのは彼だ」と発言。「もちろん、新たなモウリーニョになる恐れはある」と述べていた。

「強いクラブがはっきりと目標を語れば、すべてが落ち着く。だが今は、うまくいかない場合、責任がすべてダニエレにかかる。モウリーニョもそうだった。顔を出していたのは彼だからだ。だが、誰も彼を助けなかった。誰も話さなかった。それでは厳しい」

クラブを批判する声は少なくない。モウリーニョ、デ・ロッシと、サポーターに人気のビッグネームを相次いで解任しただけに、不満は募るばかりだ。ユリッチ体制の船出は決してやさしくないだろう。

ローマは次節、首位と好調のウディネーゼと対戦。26日にはEL開幕も控えている。さらに29日のヴェネツィア戦もオリンピコ開催。不穏な空気に包まれることが想像にかたくないなか、ホーム3連戦で流れ、そしてムードを変えられるか。激しい闘争心で知られるユリッチの手腕が注目される。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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