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造反騒動ミラン、主将にすべき選手とファンが望むのは? セリエA復帰から1年弱で大躍進

中村大晃カルチョ・ライター
9月14日、セリエAヴェネツィア戦でのミランDFガッビア(写真:ロイター/アフロ)

今のミランにとって、結果以上に重要と言えるかもしれない。

10月6日のセリエA第7節で、ミランはフィオレンティーナに1-2と敗れた。インテルとのダービーを制し、前節も連勝を飾っていたが、3連勝はならず。首位ナポリとの勝ち点差は5に開いた。

波に乗り切れなかったことも問題だが、それ以上に懸念されるのがPKキッカーを巡る騒動だ。

ミランは前後半それぞれでPKを獲得したが、テオ・エルナンデスとタミー・エイブラハムが失敗している。試合後、パウロ・フォンセカはPKキッカーにクリスティアン・プリシックを指名してあったはずだと激怒。選手たちが指示に従わなかったことを自ら明かした。

■相次ぐ造反騒動

テオがPKを蹴ったのは、誕生日にパオロ・マルディーニの得点記録更新を達成したかったからという見方がある。『La Gazzetta dello Sport』紙によると、チームメートも強く止めようとはしなかったようだ。ただ、指揮官の命に反し、さらに結果を出せなかったことは変わらない。

さらに同紙は、ハーフタイムにフォンセカが改めてプリシックにPKを蹴らせるように指示したと伝えている。にもかかわらず、後半のPKも、フィカヨ・トモリからボールを渡されたエイブラハムが、プリシックの“抵抗”を押しのけて強行。結果、失敗した。フォンセカの怒りももっともだろう。

しかも、造反騒動は今季初めてのことではない。

8月31日のラツィオ戦では、前節で先発から外れたテオとラファエウ・レオンが、クーリングブレイクの際にベンチサイドへ戻らなかったことが騒がれた。テオは途中出場直後で水分補給が不要だったと釈明している。だが、フォンセカに対する反発との見方は少なくなかった。

『La Gazzetta dello Sport』紙によると、このときクラブは選手に処分を科していない。だが、フィオレンティーナ戦後の対応は違ったようだ。試合後に主審に詰め寄り、レッドカードを出され、2試合の出場停止となったこともあり、テオに罰金処分を科したという。

■キャプテンシーの欠如

フォンセカへの信頼度を巡る懸念は周知のとおりだ。しかし、監督の命に背いて許される理由にはならない。ファビオ・カペッロは「シンプルに受け入れられない」と一蹴している。

そこで注目されるのが、チームを引き締める存在、つまりキャプテンだ。

フォンセカは直近で複数選手に順番で腕章を巻かせてきた。だが、テオやレオンは主将の責にふさわしくないとの見方が強まっている。

正式なキャプテンであるダヴィデ・カラブリアは負傷離脱中。また、不動のレギュラーではなく、以前からリーダーとして不十分との指摘があった。

資質が評価されるのは、マイク・メニャンだ。しかし、『La Gazzetta dello Sport』紙は、メディア対応を望まない姿勢が、苦境においても顔を出すことが求められる主将に合わないと報じている。

プリシックはプレーを絶賛され、貢献度は大きいが、性格的にリーダーではないと言われる。

カペッロは「腕章を巻く者はチームのリーダー、シンボルでなければならない」と話した。フランコ・バレージやマルディーニといった、偉大な伝説の主将たちを知るミランだけに、サポーターが現状に不満を抱いても不思議ではないだろう。

■誰に腕章を託すべきか

では、ファンがミランのキャプテンマークにふさわしいと考える選手は誰なのか。

この『La Gazzetta dello Sport』紙の電子版アンケートに、1万人を超えるユーザーが回答した。選ばれたのは、ミラノ近郊の出身でユース上がりのマッテオ・ガッビアだ。

ガッビアは約36%の得票だった。メニャンは約30%、アルバロ・モラタが約16%、カラブリアが約11%。テオは約4%、レオンは約2.5%だ。

2020年にトップチームデビューした24歳は、2023-24シーズン前半戦でビジャレアルにレンタル移籍。だが、守備陣に負傷者が続出したのを受け、ミランから1月に呼び戻された。

緊急事態への応急措置として復帰を果たしたガッビアだが、徐々に信頼を獲得している。フォンセカが就任した今季も、当初はリーグ開幕から3試合出番なし。序列が低かったのは明らかだ。しかし、第4節ヴェネツィア戦以降はフル出場を続けている。

特に脚光を浴びたのが、9月22日のインテル戦だ。終了間際に決勝点をあげ、ミランを3-2の勝利に導いた。ミラノダービーでの連敗を6で止めた活躍に賛辞が寄せられたのは記憶に新しい。

■「最後に見事に咲く花」

大一番でのゴールだけではない。ガッビアはその姿勢を称賛されている。

ダービーでの活躍もあり、直後に契約延長が注目された際も、本人はミランで満足しているとしつつ、「要求はない。大事なのはうまくやり続けることだ」と謙虚な姿勢を見せた。

チャンピオンズリーグのレバークーゼン戦で、不利な判定が騒がれたなかでも、ガッビアは「最も大事なのはパフォーマンス」と強調している。

そして批判を浴びたフィオレンティーナ戦でも、試合後に顔を出してメディアに対応。「試合へのアプローチに満足していない」と、チームを叱責した。

「チームは全力を尽くせなかった。自分たちを見つめ直し、なぜこのような試合にしてしまったかを理解しなければならない。勝ち続けるための継続性を持てなかった。この中断期間に取り組んで、もっと継続していかなければならない。すべては自分たちからリスタートしないと。ロッカールームは正しく落胆していた。ポジティブなことがなかった」

ミランユース時代の責任者で、ガッビアを最終ラインにコンバートさせたフィリッポ・ガッリも、キャプテン就任を強く望んでいる。「常に真面目で断固たる決意を持ち、次第に向上できる選手だったから」、成功を確信していたそうだ。

そのガッリは、ガッビアを「何カ月も水をあげ、最後に見事に咲く花のよう」と表現した。

セリエA復帰から1年と経たずして、ミラン守備陣に欠かせない存在へと成長し、ダービーのヒーローとなり、キャプテン就任を望まれるほどで、イタリア代表初選出も果たした。今、ガッビアはまさに素晴らしい花を咲かせているところだ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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