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セリエA、移籍市場採点と順位比較 補強成功の「勝ち組」、鈴木彩艶のパルマは?

中村大晃カルチョ・ライター
8月31日、セリエA第3節ナポリ戦でのパルマGK鈴木彩艶(写真:アフロ)

セリエAは3節を消化し、9月のインターナショナルウィークに突入した。

開幕から3試合でシーズンを展望することはできない。夏のチーム編成が成功したかどうかも、評価することはできないだろう。

それでも、各クラブの動きを踏まえ、序盤戦でどういった結果が出ているかは気になるところだ。活躍し始めている新戦力もいる。積極補強がまだ実らず、出遅れているチームもある。

9月3日、『La Gazzetta dello Sport』紙は全20クラブの夏のメルカートを採点した。ここでは、その採点と開幕3試合終了時点の順位を比べてみる。もちろん、補強の成功・失敗が評価できるものではない。ただ、採点上位勢でも、好発進したクラブとスロースタート組に分かれたのは興味深い。

なお、収入と支出は9月1日付『La Gazzetta dello Sport』紙を参照した。

採点8

ユヴェントス

順位:首位タイ

主な獲得選手:コープマイネルス、D・ルイス、K・テュラム、カバル、N・ゴンサレス、コンセイソン、ディ・グレゴリオ、カルル

収入:1億1800万ユーロ

支出:1億9860万ユーロ

今夏最大の脚光を浴びたことは疑いない。シュチェスニー、アレックス・サンドロ、ルガーニ、ラビオ、キエーザといった近年の主力を放出。ハイセン、イリングJr、ミレッティ、ニコルッシ・カヴィッリャ、スレと、若手有望株も躊躇なく手放し、チアゴ・モッタ新監督が望むスカッドをジュントリSDが編成した。La Gazzetta dello Sport紙は「これほどの変身は久しぶり」と伝えている。

合流のタイミングやケガ、コンディション調整など、理由は様々だが、新戦力で多くの出場時間を得ているのは、まだ守護神ディ・グレゴリオとカバルくらいだ。ただ、開幕から2試合連続で3-0と快勝したこともあり、新生ユヴェントスの評価は高い。

特に、バングーラとサヴォーナの新星候補コンビの抜擢や刷新された戦いぶりなど、新指揮官の采配には賛辞が寄せられている。今季最大の補強はチアゴ・モッタ、という見方も少なくないだろう。

強豪との初対戦だった第3節ローマ戦では苦しみ、連勝が止まった。ただ、前述のとおり、まだ新戦力を駆使できる状態になかったのも確かだ。どれだけの期間でどれほど完成度を高めていけるか、モッタの手腕が注目される。

採点7.5

インテル

順位:首位タイ

主な獲得選手:タレミ、ジエリンスキ、J・マルティネス、パラシオス

収入:1850万ユーロ

支出:5850万ユーロ

8月24日、セリエA第2節レッチェ戦でのインテルFWタレミ(左)
8月24日、セリエA第2節レッチェ戦でのインテルFWタレミ(左)写真:ロイター/アフロ

王者は盤石の体制を維持した。マロッタ会長得意のフリー補強でタレミとジエリンスキを獲得。昨季の課題だったラウタロ&テュラムを支える攻撃陣の強化を実現させ、欧州屈指の中盤の層に厚みを持たせた。さらに同時進行で将来を見据えた補強(マルティネスとパラシオス)も進めている。

ただ、インテル最大の補強は、主力を手放さなかったことだろう。La Gazzetta dello Sport紙も、「ビッグネームがひとりも退団せず」と指摘した。チャンピオンズリーグ(CL)とクラブワールドカップの形式変更で試合数増加が見込まれる長丁場を見据え、すでに高い完成度を誇っていたチームの層をさらに厚くしたかたちだ。

今季のインテルは王座維持に加え、欧州でも頂を目指す。ハードスケジュールになることが間違いないシーズンで、鍵を握るのはインザーギのマネジメントだ。

採点7

ミラン

順位:14位タイ

主な獲得選手:モラタ、パブロビッチ、エメルソン・ロイヤル、フォファナ、フォス、エイブラハム

収入:3930万ユーロ

支出:7400万ユーロ

8月31日、セリエA第3節ラツィオ戦でのパブロビッチ
8月31日、セリエA第3節ラツィオ戦でのパブロビッチ写真:ロイター/アフロ

守備のテコ入れと中盤のフィルター役獲得、右サイドのアップグレードとジルーが去った前線の強化。補強必須ポジションをしっかりと抑えた編成には、高い採点がつけられた。

だが、少なくとも序盤戦でその成果は出ていない。パブロビッチは存在感を見せているが、3試合連続2失点と守備の問題は相変わらず。フォンセカ戦術が批判され、テオとレオンの主力コンビが造反を疑われるなど、最悪といっても過言ではないシーズンスタートになってしまった。

前線は実績のあるモラタがまだほとんど稼働していないため、今後が期待される。だが、フォファナとパブロビッチの獲得が、それだけで守備改善につながるわけではないだろう。イタリアにおける守備戦術が批判されるフォンセカの手腕が問われる。

トリノ

順位:首位タイ

主な獲得選手:アダムス、ココ、ペデルセン、ボルナ・ソサ、マリパン、ヴァルキエヴィツ

収入:5875万ユーロ

支出:2550万ユーロ

開幕戦でミランを敗北寸前まで追いやり、アタランタには逆転勝利。さらに連勝も飾り、トリノは最高の出だしを切った。

ブオンジョルノにベッラノーヴァと、イタリア代表の主力コンビを放出したにもかかわらず、ここ2試合で決勝点をあげたアダムスとココの新戦力コンビが躍動。ヴァノーリ新監督の評価も高く、躍進候補のひとつとして注目されている。

アタランタ

順位:11位タイ

主な獲得選手:レテギ、ザニオーロ、サマルジッチ、ベッラノーヴァ、ブレッシャニーニ、コスヌ、ゴッドフリー、クアドラード、ルイ・パトリシオ、スレマナ

収入:1億2980万ユーロ

支出:1億3400万ユーロ

スカマッカが負傷離脱したが、すぐにレテギで穴埋めに成功。サマルジッチにベッラノーヴァと、セリエAでの実績があり、これから全盛期に向かう好選手たちも獲得した。母国に復帰したザニオーロが「再ブレイク」できれば、さらなる飛躍も期待できる。

ただ、開幕戦こそ4-0とスタートダッシュに成功したが、その後は2連敗。前節はインテルに完全に支配され、0-4と大敗を喫した。ケガの問題もあり、ガスペリーニ監督は戦力に懸念も示している。CLも始まるなか、早期の立て直しが求められる。

ナポリ

順位:5位タイ

主な獲得選手:ルカク、ネレス、ブオンジョルノ、マクトミネイ、スピナッツォーラ、ギルモア、マリン

収入:2450万ユーロ

支出:1億4950万ユーロ

メルカート終盤の動きが、ムードを一変させた。コンテの愛弟子ルカクの獲得だ。相思相愛の彼らの再会で、今季の軸がようやく決定。ルカクは前節で早々にデビュー弾を決め、敗戦に向かっていたチームを救った。恩師の下で完全復活が期待される。

ただ、今夏の補強はルカクだけではない。ブオンジョルノとネレスの獲得で攻守両面を強化し、中盤もテコ入れした。スピナッツォーラが加わった左サイドも注目だ。La Gazzetta dello Sport紙は「監督が望むスカッドを与えるための狙いすましたメルカート」だったと伝えている。

ローマ

順位:14位タイ

主な獲得選手:ドフビク、スレ、コネ、ル・フェ、サーレマーケルス、アブドゥルハミド、エルモソ

収入:2950万ユーロ

支出:1億1110万ユーロ

まだ無得点ながら前線の基点となる昨季リーガ得点王のドフビク、ディバラを一時放出に向かわせた有望株スレ、中盤の質を高めるル・フェなど、期待は大きい。デ・ロッシ監督が求めるチームづくりのために大金をつぎこんだ。サーレマーケルスは早速万能性を発揮している。

しかし、開幕3戦未勝利なのも確かだ。特に攻撃はエンポリ戦で途中出場したレンタルバックのショムロドフの1点のみ。結局残留したディバラを含め、デ・ロッシがどのように構築していくか。結果次第では大きな重圧となるだけに、早めに成績を上げていきたい。

採点6.5

エンポリ

順位:7位

主な獲得選手:コロンボ、エスポージト、ヴィーティ、バスケス、ソルバッケン、デ・シリオ

収入:1050万ユーロ

支出:220万ユーロ

フリー補強が目立つメルカートながら、開幕3試合で勝ち点5。ローマを下し、ボローニャと引き分けるなど、上々の出だしと言えるだろう。残留に向けて序盤戦で勢いを維持したいところ。ニューフェイスがブレイクできるか。

フィオレンティーナ

順位:11位タイ

主な獲得選手:デ・ヘア、ケン、コルパーニ、グドムンドソン、ゴゼンス、ポングラチッチ、リチャードソン、アドリ、カタルディ、ボーヴェ

収入:6700万ユーロ

支出:9375万ユーロ

ケンが復調の兆しを見せ、ゴゼンスは加入早々にチームを敗戦から救うゴールを決めた。コルパーニは苦戦しているが、グドムンドソンと一緒に活躍が期待されている。だが、カンファレンスリーグ予選を含め、開幕から公式戦5試合連続ドローと苦しい出だし。パッラディーノ新体制への厳しい声も出始めているだけに、早く流れを変えたいところだ。

パルマ

順位:8位タイ

主な獲得選手:鈴木彩艶、ヴァレーリ、カンチェッリエーリ、アンクビスト、ケイタ

収入:665万ユーロ

支出:3250万ユーロ

鈴木彩艶に関しては周知のとおりだ。正確なキックを駆使した攻撃参加や鋭い反応は高く評価されている。一方で、3試合で2回の判断ミスが結果に大きく響いたのは痛手だ。安定感が求められるポジションだけに、好評もあるうちに地位を確かなものとしたい。

一方で、ミランを下し、ナポリも苦しめたとあり、チームの評価は抜群だ。ボニー、マン、ミハイラ、ベルナベといった主力は賛辞を集めている。カンチェッリエーリやアンクビストといった新戦力がしのぎを削っていけば、さらにサプライズ候補として興味深いチームとなるはずだ。

採点6

コモ

順位:19位タイ

収入:870万ユーロ

支出:4950万ユーロ

ラツィオ

順位:8位タイ

収入:3730万ユーロ

支出:5600万ユーロ

ウディネーゼ

順位:首位タイ

収入:5800万ユーロ

支出:2400万ユーロ

ヴェネツィア

順位:19位タイ

収入:780万ユーロ

支出:2000万ユーロ

ヴェローナ

順位:5位タイ

収入:2600万ユーロ

支出:1200万ユーロ

採点5.5

カリアリ

順位:14位タイ

収入:1760万ユーロ

支出:1625万ユーロ

ジェノア

順位:8位タイ

収入:6850万ユーロ

支出:5230万ユーロ

モンツァ

順位:14位タイ

収入:2990万ユーロ

支出:405万ユーロ

採点5

ボローニャ

順位:14位タイ

収入:5750万ユーロ

支出:6150万ユーロ

レッチェ

順位:11位タイ

収入:3150万ユーロ

支出:1200万ユーロ

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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