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シリアのアサド大統領が軽い貧血で演説を中断

青山弘之東京外国語大学 教授
SANA、2020年8月12日

シリアのバッシャール・アサド大統領(1965年生まれ、54歳)が8月12日、人民議会(国会)議員を前に演説を行った。

演説は、シリア軍がアレッポ市西部郊外一帯を完全解放したのを祝して2月17日に行われて以来、約半年ぶりで、7月19日に投票が行われ、8月10日に開会した第3期となる人民議会の臨時会の開会会議に合わせたもの。12日の正午に、大統領府がフェイスブック、ツイッター、テレグラムなどの公式アカウントを通じて、「第3期人民議会の議員を前にアサド大統領の演説が予定されている」と告知されていた。

アサド大統領は演説のなかで、人民議会選挙の意義、立法府の役割、米国のカイザー・シリア市民保護法への対応、シリア・ポンドの下落への対応策などについて言及した。だが、演説が中盤にさしかかった頃から言葉がつかえ始めた。

苦しそうな表情を浮かべて、用意されていた水を飲むなどした大統領は、話を中断し、「1分座らせてもらえるか。差し支えなければ、1分だけ。1分だけ…」と述べて、よろけながら会場を後にした。

YouTube(シリア大統領府)、2020年8月12日
YouTube(シリア大統領府)、2020年8月12日

大統領府は午後5時頃、フェイスブック、ツイッター、テレグラムなどの公式アカウントを通じて、以下の通り、演説の再開を発表した。

午後6時30分ちょうどに、全国のメディアとSNS上の大統領府のプラットフォームで、人民議会議員に対するバッシャール・アサド大統領閣下の演説をフォローできます。演説は、大統領閣下が軽度の低血圧症に見舞われたために数分間中断していましたが、その後通常通り再開されます。

その後、アサド大統領は軽やかな足取りで会場に登場し、演説は再開された。

YouTube(シリア大統領府)、2020年8月12日
YouTube(シリア大統領府)、2020年8月12日

「あなたに血と魂を捧げる、バッシャールよ」と連呼する議員たちを前に、壇上に戻った大統領は、頭をかいて、照れ笑いをしながら、こう釈明した。

医者というのが最悪の患者だ。医者のような人物が病気になったとしたら…。

昨日の午後から食事をとっていなかった。

砂糖と塩を摂取したら、血圧は戻った。

大統領府が公開した演説の映像にもこのシーンは削除されずに視聴で可能である(映像の33分頃)。

アサド大統領の演説の内容については「アサド大統領が第3期人民議会の開会に合わせて議員を前に演説:「我々が軍に寄り添っているのは、その成果があったからだということを思い出して、自国通貨を支援しなければならない」」(シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢、2020年8月12日)を参照されたい。

東京外国語大学 教授

1968年東京生まれ。東京外国語大学教授。東京外国語大学卒。一橋大学大学院にて博士号取得。シリアの友ネットワーク@Japan(シリとも、旧サダーカ・イニシアチブ https://sites.google.com/view/sadaqainitiative70)代表。シリアのダマスカス・フランス・アラブ研究所共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員を経て現職。専門は現代東アラブ地域の政治、思想、歴史。著書に『混迷するシリア』、『シリア情勢』、『膠着するシリア』、『ロシアとシリア』など。ウェブサイト「シリア・アラブの春顛末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

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