イージスアショアに巡航ミサイルを搭載するという誤解
2月7日の衆院予算委員会で、日本共産党の宮本徹議員が「防衛省がLRASM巡航ミサイルの地上発射型を調査していた」「調査書にある地上発射型LRASMの発射装置とイージスアショアの発射装置の型式が一致している」とし、イージスアショアにLRASMを搭載する気だと質問しました。しかし、これは誤解によるものです。
共産党が根拠にしたのは防衛省の作成した資料「陸上装備品等に関する技術資料の作成」の「D 新地対艦誘導弾(PDF:492KB)」という資料になると思われますが(リンク切れのため国立国会図書館のアーカイブより)、確かにLRASMの項目で「陸上発射型はMK41VLS及びMK114ロケット・モータとブースターに適合」と書かれています。しかし開発当事国のアメリカではLRASMをVLS(垂直発射機)による陸上発射で運用する具体的な計画は無く資料は存在せず、防衛省の資料は艦上発射型の翻訳ミスである可能性が高いでしょう。
というのも「surface launch」という英語の軍事用語は陸上発射・艦上発射のどちらにも使う言葉であり、LRASM開発元のロッキード・マーティンによる艦上発射型の試験報告でもこの言葉が使われています。
- ロッキード・マーティン公式よりSurface Launch LRASM Flight
また軍事的にはLRASM巡航ミサイルを地上固定基地であるイージスアショアに配備する意味が全く存在しません。仮に山口県配備のイージスアショアの場合、射程1000kmでは北朝鮮までは届いても尖閣諸島までは届きません。護衛艦に搭載した方が発射点を自由に移動出来て何処にでも撃てます。またLRASMは対空ミサイルではないので、イージス・システムによる誘導管制は必要ではないのです。
そして政治的にもイージスアショアに巡航ミサイル搭載などしたら、ロシアが行っている「欧州イージスアショアにトマホーク巡航ミサイルを搭載する気だ」という言い掛かり行為に根拠を与えてしまう事になります。このような隙を見せる行為をアメリカは許さないでしょう。
軍事的にも政治的にも、イージスアショアに巡航ミサイルを搭載する事はマイナス面しかなく、防衛省は計画もしていない筈です。ただ作成した資料に記載ミスがあっただけなのです。