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『南くんの恋人』男女逆転版で主演。発掘オーディションから3年、飯沼愛の「超ネガティブ」な頃を経た現在

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『南くんが恋人!?』に主演する飯沼愛 (C)テレビ朝日

恋人が突然15cmになってしまうストーリーで、たびたびドラマ化されてきた『南くんの恋人』。小さくなるのが男性という男女逆転バージョンの『南くんが恋人!?』がスタートする。高橋由美子、深田恭子らが演じたちよみ役は飯沼愛。3年前に大々的な女優発掘オーディションでグランプリに輝き、『VIVANT』の天才ハッカー役など話題作に出演を重ね、今回がGP帯では初主演となる。名作で大役を担う想いと3年での成長を聞いた。

撮影でほぼ毎日走っています

――OLや女子大生の役が続いて、制服はちょっと久しぶりですね。

飯沼 だいたい1年ぶりくらいです。

――今回は最初にバスケットボールの試合シーンがありますが、元バスケ部の腕は鈍ってませんでした?

飯沼 バスケットボールに触るのも久しぶりで、クランクイン前に練習させてもらったんですけど、意外と鈍ってなかったです(笑)。思っていたよりシュートも入って、安心しました。

――全力で走るシーンも多いようですね。

飯沼 撮影が始まってから、ほぼ毎日走っています(笑)。今のところ、元気に走れていると思います。

自分が演じているのが不思議な気持ちに

――GP帯の連続ドラマでは初主演となりますが、深夜ドラマで主演したときとは感覚が違いますか?

飯沼 情報解禁されたときや番宣でバラエティに出演させていただいたとき、注目度がやっぱり違う体感がありました。友だちや地元の学校の先生からも「すごいね」と連絡が来たり、反響が大きかったです。

――『南くんの恋人』の男女逆転バージョン、ということでの注目も大きいようですか?

飯沼 そうですね。みんなに「『南くんの恋人』? アレだ!」と言われます。TVerで過去の作品が配信されていて、私も観返しました。観れば観るほど、「私がこのちよみを演じるんだ」と不思議な気持ちになりました。

女子高生っぽく落ち着きは要らないと

――ちよみのキャラクター自体は、わりと等身大で演じられるのでは?

飯沼 そうですね。でも、高校生なので、若干若くというのは意識しています。監督にも「女子高生っぽく」とは言われていて。

――飯沼さんもまだ20歳ですが、違うものですか?

飯沼 ちよみは明るいキャラクターでもあるので、体を大きく使うようにしています。私は普段「落ち着いている」と言われることが多くて、その落ち着きはちよみには要らない、ということでした。

――カメラが回る前から、テンションを上げていたり?

飯沼 最近はガッツポーズをして、ハーッと深呼吸をしてから、撮影をスタートしています。

「自分なんて…」と思うのは共感します

――小さくなる前の南くんに対して、完璧すぎる彼氏ゆえに、ちよみは「自分じゃないんじゃないか」といじけていたりもします。その辺の心情はわかりますか?

飯沼 ちよみが「自分なんて……」と思うのは、すごく共感します。人と比べてしまったりするのは、ちよみの弱い部分。私自身はお仕事を始めてから、ちょっと変わってきましたけど、学生の頃は本当に同じでした。バスケ部で練習しているときも、他の子と比べてしまったり、控え選手でベンチ経験もあるので、気持ちはめちゃくちゃわかります。

――一方で、南くんが小さくなってから、「喧嘩するのが面白い」とも言います。

飯沼 幼なじみだから、普通の恋人とはちょっと違う感じがします。そこまで入っちゃっていいの? という領域にまで、ちよみはわりと入っていくなと。小さい頃から一緒にいるからこそだし、本人が気づいていない、ちよみの強さだと思います。

フィクションだと思ってやりたくなくて

――身長15cmになった南くんとのお芝居は、どういうふうにやっているんですか?

飯沼 想像するしかないので、難しいですね。実際には1人で撮影しているので「大変だね」と言われますけど、私は南くんと一緒にいる気持ちでいます。1人ぼっちという感覚はあまりありません。

――それだけ想像力が豊かでもあるんでしょうね。

飯沼 思い込みも大事かなと。1人で孤独を感じてしまうとやっていけないと、初日に思ったので、その反省を踏まえています。CG合成のために、15cmの南くん用の人形はあって。それを相棒に、お芝居をしています。

――手のひらの上の南くんとのキスシーンなどは、その人形で距離感を掴んでいて?

飯沼 撮影では、手の位置とかも細かく決められていて、なかなか難しいところもあります。でも、気持ちは小さい南くんと本当にキスしている感じです。

――小さくなった南くんを初めて見たときの驚きも、リアルに感じました。

飯沼 どれくらい驚くか、探り探りやりました。状況を掴むのに時間はかかりますよね。フィクションだと思ってやりたくない、というのはあって。ちよみと南くんが本当にそこにいるように思ってもらえたら、本望です。

愛情深い子なのをどう伝えられるか

――序盤では、特に印象に残っているシーンはありますか?

飯沼 クランクインの日に、ちよみと南くんの関係性がよくわかる1話の大事なシーンを撮ったんです。バスケの試合のあとに公園で待ち合わせた場面で、長めで初日から大丈夫かなと。そこを八木(勇征)さんと乗り越えたからこそ、その後の撮影がとてもやりやすくなりました。

――あまり悩むことはないですか?

飯沼 まだ迷いながら演じている部分はあります。ちよみがすごくいい子だから、それをどうやったら表現できるか。観ている方に伝えられるか。監督と細かいところまでお話しさせていただいてます。

――ちよみのどんなところを、いい子だと思いますか?

飯沼 本当にやさしいし、愛情深い子です。複雑だけど温かい家族で育って、きっと商店街の人たちにも愛情をたくさんもらっていて。南くんに対しても、小さくなっちゃったから自分が何とかしなきゃとは、誰もが思えるわけではないですよね。

――そうですね。恋人とはいえ。

飯沼 人によっては「なんで私が?」と思ってしまうかもしれませんけど、ちよみはお世話してあげている意識もなくて。無償の愛というか、単に南くんが好きという気持ちで日々行動している。その愛情深さが素敵だなと思います。

最初は毎日落ち込んで帰っていました

――飯沼さんは『私が女優になる日_』の初代グランプリからデビューして3年。今回の『南くんが恋人!?』の主演に至るまで、順調な歩みに見えますが、自分でも女優としての成長を感じることはありますか?

飯沼 どうなんですかね。成長しているのかどうか、難しいですけど、確かにいろいろな面で変化はあったかなと思います。

――昔はなかなかできなかったことが、できるようになったり?

飯沼 初めてのドラマのときは、毎日落ち込んで帰っていました。些細なことが気になってしまって、集中できないこともありました。気がつくと、今は落ち込むことは減っていて。できなかったことは、できるようにすればいいだけ。そう気づけた時点で良かったと思えて、お仕事を通じてネガティブが減った気がします。

なかなかできない経験がありがたくて

――昔はネガティブだったんですか?

飯沼 超ネガティブでした(笑)。私もバスケをやってきて、ドラマでちよみと(親友の)奈美を見ていて思ったのが、奈美が最後にシュートを決めたのは、気持ちが強かったからかなと。振り返ると、学生の頃の私はちよみとリンクしていました。奈美は「絶対決める」と思いながら練習しているけど、ちよみは「もし決まらなかったどうしよう」と考えている。試合での結果は、練習のときから見えていたんだろうなと、すごく感じました。

――そういうネガティブさが今はなくなってきたと。

飯沼 そうですね。ちょっとずつ。

――これまで難しい役が多かったですよね。『パパとムスメの7日間』ではお父さんと人格が入れ替わったり、『天使の耳』では視覚障害で音の記憶が正確だったり。その都度ハードルを乗り越えてきた感じですか?

飯沼 乗り越えた感覚は正直あまりないです。でも、すごくありがたくて、役者冥利に尽きるというか。今回の相手がいない状態でのお芝居も、なかなか経験できることではなくて。脚本の岡田(惠和)さんの「『南くん』シリーズは若い俳優の方々にとってはお芝居の宝箱」というコメントを見て、本当にその通りだと思いました。だから、1回1回を楽しもうという気持ちでいます。

湘南の海はキラキラして元気をもらえます

――今回の舞台になっている湘南に、馴染みはあったんですか?

飯沼 そんなになかったです。以前、情報番組でマラソンをしたときに走って以来でした。サーファーが多くて『スラムダンク』の聖地の踏切もあって、さわやかなところですね。

――地元の香川でも、海沿いの公園とかはありました?

飯沼 ありました。遊歩道でランニングしたり、友だちと散歩をしたり、海はわりと身近でしたね。湘南の海はキラキラしていて元気をもらえるイメージで、香川の海はどちらかというと落ち着く感じがします。

――夏に恒例ですることや思い出はありますか?

飯沼 東京には、有名な1000円くらいするかき氷屋さんがたくさんありますよね。去年、夏の終わりかけにギリギリで行けたんです。ちょっと涼しくなってきた時期だったので、今年は暑いうちにまた行きたいです。

――1000円のかき氷は、やっぱり普通と違いました?

飯沼 違いました。ふわっふわだし、めちゃくちゃいろいろな味があるんです。去年は秋に入りかけていて、さつまいも味が始まっていて、おいしかったです。

自分がどう変わっているのか楽しみです

――学生時代の夏休みというと、部活でしたか?

飯沼 部活一色でした。練習はハードだし暑いし、夏休みに入ってほしくないくらいでした(笑)。

――東京のお祭りには、行ったことはありますか?

飯沼 去年、ラジオのロケで隅田川の花火大会に行けました。スカイツリーの上の、チケットの倍率がめちゃくちゃ高い場所だったんですけど、お仕事で見られて、いい思い出になりました。

――この夏は主演ドラマの撮影で、体力も必要でしょうか。

飯沼 自分では体は強いほうだと思っているので、平気な気がします。撮影が楽しくて、はしゃいでしまうと、周りのスタッフさんたちにかえって「大丈夫?」と心配されていて(笑)。これから撮影が続くと疲れが溜まってきそうなので、はしゃぎすぎには要注意だなと思っています。

――最終回まで撮り終えた頃には、またひと皮むけていそうですか?

飯沼 ステップアップできるように、毎日を大切に過ごしていきたいです。この作品を乗り越えたあと、どう変わっているのか、私自身も楽しみです。

田辺エージェンシー提供
田辺エージェンシー提供

Profile

飯沼愛(いいぬま・あい)

2003年8月5日生まれ、香川県出身。2021年 にTBS スター育成プロジェクト『私が女優になる日_』 で初代グランプリ。同年にドラマ『この初恋はフィクションです』に主演してデビュー。主な出演作はドラマ『パパとムスメの7日間』、『VIVANT』、『マイ・セカンド・アオハル』など。7月16日スタートのドラマ『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)に主演。ラジオ『飯沼愛の「明日、恋するために…」』(TBS)でパーソナリティ。JAバンク香川のCMに出演中。

『南くんが恋人!?』

テレビ朝日系・火曜21:00~

公式HP

(C)テレビ朝日
(C)テレビ朝日

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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