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アラビアンサイクロン「ルバン」、砂漠の国イエメンに上陸へ

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
10日、イエメンに接近するサイクロン・ルバンの衛星画像 (提供: NASA)

イエメンはアラビア半島に位置する砂漠の国。年間降水量100ミリ程度の国に、14日(日)史上3つ目となるサイクロン「ルバン」が上陸するおそれがあります。数年分に匹敵する大雨によって、洪水や土砂崩れの脅威が高まっています。

サイクロン・ルバン

ルバンの予想進路図(提供: インド気象局)
ルバンの予想進路図(提供: インド気象局)
予想雨量 (提供: NOAA)
予想雨量 (提供: NOAA)

日本時間13日(土)未明における「ルバン(Luban)」の最大風速は25メートルで、イエメンの500キロ東の海上に位置しています。

今後さらに発達して、14日(日)昼間までにイエメン東部に上陸するおそれがあります。予想される最大瞬間風速は35メートル、雨量は年間降水量の6倍以上に匹敵する600ミリ超です。

サイクロンとは…

最大風速が17メートル以上の「台風」に相当する強さの熱帯性擾乱をさす。アラビア海のサイクロンの発生数は年平均で1~2個程度で、春(5~6月)と秋(10~12月)に多い。

イエメン史上3つ目のサイクロン

そもそもイエメンはサイクロンの直撃が少なく、もし「ルバン」が上陸すれば観測史上3番目のこととなります。観測開始以来イエメン本土に上陸したサイクロンは、2015年の「チャパラ(Chapala)」、そして「メグ(Megh)」しかありません。

「チャパラ」はアラビア海における史上2番目に強いサイクロンで、イエメンでは110万人が被災したと伝えられています。その一週間後に「メグ」が本土に上陸し、初めて2つのサイクロンが同じ年に上陸する事態となりました。

活発なサイクロンシーズン

ルバンは「サガー(Sagar)」「メクヌ(Mekunu)」に続き、アラビア海で発生した今年3つ目のサイクロンです。今年はこれまでに例年よりも多くのサイクロンが発生し、勢力の強いものも多くなっています。

Wikipediaの画像に筆者加筆
Wikipediaの画像に筆者加筆

【サイクロン・サガー】

「サガー」は今年5月にソマリア史上最強の勢力で西部に上陸し、50人以上の死者を出しました。ソマリアのサイクロン上陸頻度は3年に1度程度といわれていますが、そのすべてがアラビア海に面した東部に上陸しています。このためサガーのように西部に上陸したものは過去にありませんでした。

【サイクロン・メクヌ】

その1週間後には「メクヌ」が、オマーン史上3番目となる強い勢力で上陸しました。多くのサイクロンは北部に上陸しますが、メクヌは南部に上陸し、同地域での史上最強ハリケーンともなりました。首都サララでは4日間で600ミリを超える大雨が降り、洪水や土砂災害が多発しました。

(丘陵が滝と化す、信じられない光景が広がった)

増え続けるアラビアンサイクロン

ある研究によると、アラビア海にできるサイクロンの数は今世紀末までに46%も増加する可能性があるといいます。

イエメンのように砂漠が広がる灼熱の地は、地面がカラカラに乾いていて、雨を十分に貯めることができません。このため、ひとたびサイクロンが来れば数年分に相当する大雨となり、大規模災害につながることも避けられないのです。

追記(10/29):現地時間14日(日)昼頃、サイクロン・ルバンはイエメン東部に上陸しました。上陸時の最大風速は約20メートルで、オマーン南部では16時間で535ミリの大雨が観測されています。死者数は少なくとも14名、けが人は120人以上にのぼっています。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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