いっそ、学習塾を義務教育にしたら?
おかしな改革が行われようとしている。現在は6歳、つまり小学生からとなっている義務教育の対象を、5歳児からとするように教育再生実行会議が政府に提言する準備をしているという。
教育再生実行会議が勝手に議論しているわけではなく、文部科学省(文科省)と連携したうえでの議論であり、5歳児義務教育化は文科省の方針といっても間違いではない。その狙いを6月4日付『産経新聞』は、「基礎学力を早期に身につけさせることなどが狙いで、幼保の枠組みを維持したまま、小学校生活にスムーズに移行できるように改革する」と説明している。
もちろん、主たる狙いは「基礎学力を早期に身につけさせる」ことであり、「スムーズな移行」ではない。それは教育再生実行会議が提言しようとしている小中一貫校の推進でも、中学校に進学したときに馴染めない子どもがいる「中一ギャップの解消」を理由としてあげながら、「学力向上」の体制づくりに主眼があるのと同じだ。
学力向上、受験のための指導は、できるだけ早くから始めるのが効果的という考えにとらわれていることからの発想でしかない。義務教育化することで、強制的に、そうした体制をとらせようというわけだ。
そのために、小学校入学を現在の6歳から5歳に引き下げる案もあったが、それは保育園や幼稚園の抵抗が強く断念したようだ。ただでさえ子どもの取り合いになっている状況で、5歳児を小学校にとられてしまったら保育園や幼稚園としては経営がたいへんになる、ということらしい。
5歳児をとられないとしても、保育園や幼稚園も大きな課題を抱えることになる。学力という新たな問題を押しつけられて、その実績で園の価値を判断されることになるはずだからだ。実績を上げるのは、なかなか簡単なことではない。これまでの方針を大きく変えなければならなくなるところも少なくないはずである。大混乱が予想される。
それでも効果には疑問がある。それほど点数だけで判断する学力にこだわるのなら、いっそのこ、学習塾を義務教育化したほうが早いにちがいない。