キャンペーンソングに車内チャイム 鉄道との関わりが深かった谷村新司さん
10月8日に74歳で亡くなったシンガーソングライターの谷村新司さん。半世紀以上に渡る活動期間の間に数多くの名曲を残したが、その中には鉄道に関係する曲も多かった。谷村さんは現代において、鉄道の関わりが最も深い歌手の一人だったと言えるだろう。
代表曲の一つ『いい日旅立ち』は国鉄が昭和53(1978)年11月4日から開始した旅行誘致キャンペーンのためにつくられた曲で、山口百恵さんが歌って大ヒットを収めた。国鉄がJRになってからも、平成15(2003)年10月1日から実施されたJR西日本の「DISCOVER WEST」のイメージソングとして使用されている。鬼塚ちひろさんが歌うリメイク版の『いい日旅立ち・西へ』はJR西日本が所有する新幹線車両の車内チャイムに使用され、今も我々の旅を彩ってくれている。かつて運行されていた寝台特急トワイライトエクスプレスの車内でもインストゥルメンタル版が流されており、これは後継列車とも言えるトワイライトエクスプレス瑞風にも引き継がれている。駅メロディとしては岡山駅1番線でも使われており、岡山に来たことを実感させてくれる曲として鉄道ファンにも人気だ。
昭和51(1976)年9月20日にリリースされたアリスの名曲『遠くで汽笛を聞きながら』は谷村さんが作詞、堀内孝雄さんが作曲を手掛けた曲で、ジャケットには奥羽本線醍醐駅(秋田県横手市)のホームの写真が使用された。雪景色のローカル駅が旅情を誘ういいジャケット写真だ。電化を経て醍醐駅の様子も変わっているが、当時を偲ぶことはそれほど難しくない。
鉄道が登場する曲はソロ時代にも多く、ナショナルのCMに使われた『浪漫鉄道<途上篇>』とその姉妹曲『浪漫鉄道<蹉跌篇>』、テレビ番組のエンディングテーマに使用された『心の駅』や『Slow Train』などがある。いずれも人生を旅になぞらえて歌った曲で、『Slow Train』が収録されたアルバム『ツバメ』のジャケットは鉄道模型の駅に佇む谷村さんというデザインだ。『ツバメ』は日本テレビの人気バラエティ番組「ぶらり途中下車の旅」のエンディングテーマとして使用された。
国鉄を引き継いだ会社のうち、谷村新司さんの曲を引き続き起用し続けたのがJR西日本だ。平成2(1990)年から始まった、京都・大阪・神戸の三都市を対象とした観光キャンペーン『三都物語』には同名の曲が使用され、作詞は多夢星人こと阿久悠さんが手がけた。この曲は『いい日旅立ち』同様にトワイライトエクスプレスの車内でも流されていた。
「DISCOVER WEST」のテーマソングとしては平成18(2006)年の『風の暦』も使用され、この曲はその後も度々CMで使用された。60歳以上を対象とした「ノリノリきっぷ」のCMには谷村さん自身と妻の孝子さんが出演している。
平成27(2015)年3月14日の北陸新幹線長野~金沢間開業に際しては『北陸ロマン』が制作され、CMに出演した仲間由紀恵さんとのデュエット版も発売された。『北陸ロマン』は北陸新幹線および特急「サンダーバード」の車内チャイムとして使用されており、当初は期間限定の予定だったが、好評だったためか8年が経った今なお使用されている。谷村さんが遺した名曲はこれからも私たちの旅を彩ってくれるだろう。
謹んで谷村新司さんのご冥福をお祈りいたします。