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ゴールデンウィークの始まりは「平成のなごり雪」

饒村曜気象予報士
線路に積もった雪(ペイレスイメージズ/アフロ)

なごり雪

 「なごり雪」には、「春に入ってから降る雪」と、「春になっても消え残っている雪」の2つの意味があります。

 気象用語に「なごり雪」という言葉ありませんが、対応する言葉というと、前者の「春に入ってから降る雪」に対応する「終雪(冬のシーズンで最後に降る雪)」になります。

 また、昭和49年(1974年)に伊勢正三が作詞・作曲し、後にイルカがカバーしてヒットした昭和の名曲「なごり雪」も、前者の「春に入ってから降る雪」を歌っています。

 東京の駅を舞台とし、少女から女へと脱皮する少女との淡い別れの歌ですが、伊勢正三によれば、モチーフとしたのは出身地である大分県津久見市の津久見駅とのことです。

 津久見市付近の終雪は、3月上旬から中旬ですから、様々な別れが交差するときにつくられた歌といえるかもしれません。

 ただ、北海道や東北から北陸の山沿いでは、終雪は4月に入ってからです。

 流氷が接岸する北海道のオホーツク沿岸では、終雪は5月にずれ込みます(表)。

表 北海道の終雪(なごり雪)
表 北海道の終雪(なごり雪)

平成最後の寒気

 平成も残りわずかとなりましたが、北日本を中心に、上空約5500メートルで氷点下27度以下という寒気が南下してきます(図1)。

図1 上空約5500メートルの気温(4月27日朝)
図1 上空約5500メートルの気温(4月27日朝)

 上空約5500メートルで氷点下27度という温度は、冬場であれば、ちょっとした寒気で、特別に低い温度ではありませんが、地表面付近が20度を超える春先においては、上下の温度差が50度という、大気が非常に不安定となる温度です。

 晴れていても、急に積乱雲が発達して雷雨の可能性もありますので、外出先で黒い雲など、発達した積乱雲の予兆を感じたら、安全な場所への移動をお願いします。

 全国的に、4月26日から27日は気温がどんどん下降します。

 気象庁が4月25日17時に発表した、東京の4月26日の気温予報は、朝の最低気温14度、日中の最高気温16度です。

 しかし、この値が、そのまま4月26日の最低気温、最高気温ではありません。

 「日の最高気温」と「日中の最高気温」は違います。

 東京の4月26日は、日中に少し気温が上がりますが、気温が一番高いのは未明の19度、一番低いのが夜遅くの13度と、大きくみれば気温がどんどん下がります(図2)。

図2 東京の時系列予報(4月26日)
図2 東京の時系列予報(4月26日)

雪の可能性

 平成最後と思われる強い寒気の南下により、北海道と東北から北陸の山沿いでは雪の可能性があります(図3)。

図3 ゴールデンウィーク初日の朝の雪と雨の分布(4月27日朝)
図3 ゴールデンウィーク初日の朝の雪と雨の分布(4月27日朝)

 平年の終雪日より少し後に降る雪ですので、多分、これが終雪(なごり雪)になるところが多いと思われます。

 名曲の表現ではありませんが、「季節はずれの雪が降り、平成で見る雪はこれが最後」になりそうです。

 そして、「春が来て 君はきれい(ご令嬢の令)になった(和合の和)」です。

令和最初の寒気

 5月1日から新元号の「令和」となります。

 令和最初の寒気は、子供の日のころに西日本を中心に南下してくる寒気と思われます(図4)。

図4 上空約5500メートルの気温(5月4日朝))
図4 上空約5500メートルの気温(5月4日朝))

 まだ先の話であり、誤差が大きいのですが、平成最後の寒気より強い寒気で、しかも、季節が進んだ分だけ下層は温まってきていますので、上下の温度差が再び大きくなって大気が不安定となる可能性があります。

図5 ゴールデンウィーク後半の全国の天気
図5 ゴールデンウィーク後半の全国の天気

 ゴールデンウィーク後半は晴れる日が多いと考えられますが、局地的な雷雨の可能性もありますので、安全のため、最新情報の入手に努めてください(図5)。

図1、図2、図3、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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