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大天才・藤井聡太棋聖、銀捨ての絶妙手一撃で永瀬拓矢挑戦者を倒し、名局を制す 棋聖戦五番勝負第2局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月15日。新潟県新潟市「高志の宿 高島屋」において第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局▲永瀬拓矢挑戦者(29歳)-△藤井聡太棋聖(19歳)戦がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 9時に始まった対局は19時21分に終局。結果は138手で藤井棋聖の勝ちとなりました。

 五番勝負はこれで両者ともに1勝1敗(2千日手)となりました。第3局は7月4日、千葉県木更津市・龍宮城スパホテル三日月でおこなわれます。

大天才藤井の面目躍如!

 永瀬挑戦者先手で、戦型は角換わり腰掛銀の最新形。両者ともに深い研究を思わせる序盤から、両者ともに秘術を尽くし、勝敗不明の中終盤が長く続く名局となりました。

 最終盤、藤井棋聖は時間が切迫する中、相手に飛車を取らせて一手を稼いだあと、銀をタダで取られるところに放り込みます。これが永瀬玉の逃げ道をふさぐ、驚きの絶妙手。この大舞台において、このスーパーパフォーマンス。大天才藤井の面目躍如というところでしょう。

 不屈の粘りが身上の永瀬挑戦者も、これは粘れない。藤井棋聖は正確な速度計算のもと、そのまま勝利を収めました。

 本局はおそらく、今年度を代表する名局の一つに数えられるでしょう。そしてまた最終盤の妙手は「藤井の銀捨て」として、将棋史上に長く語り継がれる一手になりそうです。

 両者の通算対戦成績はこれで藤井8勝、永瀬4勝となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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