最初だけ調子が良い「スパークリング思考」の人は、成功しそうで成功しない
モチベーションなど簡単に上げられる
私は企業の現場に入って、目標を絶対達成させるコンサルタントです。「絶対達成」といっても、1年や2年、瞬間的に売上や利益目標を達成させるのではなく、中長期的に安定して目標を達成させるための施策を常に考えています。
現場に入って直接支援するコンサルタントと、研修やセミナーの講師しかしない「自称コンサルタント」とは、根本的に思考が異なります。私たちは前述したとおり中長期的な視点で物事を考えますので、クライアント企業の従業員たちのモチベーションを上げようなどとは考えません。
気持ちを鼓舞すれば、モチベーションなど簡単に上げることはできます。ケーキやチョコレートを食べたらアップする血糖値と同じようなもの。しかし、急激に上がった血糖値は、その後、急激に下がります。モチベーションも血糖値と同じです。1日や2日間の研修講師によって短期間で上昇させられたモチベーションは、研修の後、急激に冷えていきます。いっぽう中長期的にお付き合いするコンサルタントは「主治医」のようなものですから、相手のモチベーションなど関係がありません。これまでのやり方、考え方そのものを変革し、淡々と新しい習慣が身に付くようにしていく工夫を常に考えています。
「スパークリング思考」とは?
私自身が、とても情熱的に講演をしたり、激しく鼓舞するようなコンサルティングセッションをするせいか、そのスタイルに感化されて「気合が入りました!」「私もやります!」「絶対達成します!」と言って集まってくる方がたくさんいます。それはそれでありがたいことです。しかし、私の場合、私のこの感情表現、熱情のこもった話し方が普通なのです。どんなに体調が悪くても、やる気がなくても、このスタイルを貫くことはできます。繰り返しますが、これが私の「普通」だからです。モチベーションに左右されることなどありません。
しかし、私に感化されて瞬間的にテンションを上げ、「私もやります!」「頑張ります!」などと言って、あれもこれも新しいことをスタートさせる人がいます。私はそういう人が好きですが、意外にも冷静に見つめています。3ヶ月後も同じテンションでいたら本物だな、とぐらいにしか思いません。なぜなら過去に数えきれないほど期待を裏切られたことがあるからです。
一時期だけテンションを上げ、その後しばらくして、何事もなかったように元通りになる人の思考を、私は「炭酸思考」とか「スパークリング思考」と名付けています。(「炭酸思考」よりも耳触りがいいので、「スパークリング思考」のほうを使います)
私と部下との会話を紹介します。
「横山さん、最近、A部長の姿が見えませんね。2年ぐらいセミナーに足を運んできたのに」
「A部長の中では、もうブームが去ったのかもしれないね」
「結局、A部長もスパークリング思考だったというわけですか」
こんな感じです。
何かをやろう!と決めて、しばらくは打ち込むのですが、徐々にテンションが下がっていく人がいます。その理由の多くは「飽きる」からです。「中だるみ」であればいいのですが、たるんだままの状態に戻ってしまう人は要注意。周囲から信用を勝ち取ることができないからです。何かをはじめると周囲に宣言しても、「またはじまった」「どうせ長続きしない」と思われています。
炭酸水やスパークリングワインは、コップに注いだ時点ではシュワシュワ発泡していますが、いずれ沈静化していきます。刺激があるのは最初だけ。胸が波打っているのは、新しいものに触れて感化された一時期だけ。そのような思考の人は、時間が経つと、コップに注いで1時間ぐらい経過したサイダーのようになっています。
何事もうまくいく人は、
9 → 9 → 8 → 8 → 8 → 7 → 5 → 3 → 1 → 0 → 0……
という人ではなく、
2 → 2 → 2 → 2 → 2 → 2 → 2 → 2 → 2 → 2 → 2 ……
という思考の人です。ある刺激によって、気分が盛り上がったり、盛り下がったりする人ではなく、淡々と新しい行動ができる人です。
一時期だけはじけているのではなく、「炭酸水」より「ミネラルウォーター」的な人を目指していきましょう。