薬物検査拒否Xゲームズの行方、オスロで関係者が口論 主催者の「何が問題なんだ?」に失笑
文化大臣「薬物検査を拒否するなら、国からの経済的援助を求めるな」
「文化省に公的支援を求める主催者は、ドーピング防止対策ができないのであれば、申請しないでいただきたい。申請書の記入に時間を使わなくて結構!」。文化大臣のはっきりとした発言に、会場は大きな拍手に包まれた。
2月にオスロ市で開催された世界的なエクストリームスポーツの競技大会、Xゲームズ。オスロ市から巨額支援を受けたにも関わらず、国際基準の薬物検査を拒否したために、国内で大きな議論となった。大会が拒否した検査対象は、世界アンチ・ドーピング機関WADAのガイドラインを基準にした「競技会(In-Competition)検査」。その検査で発覚するのは大麻やコカインだと報道されていた。
薬物検査拒否のX Gamesをオスロ市は来年も巨額支援するのか? 主催者が招致申請を提出
冬の競技への愛着が深い国で、ノルウェーのスポーツ界の根底を揺さぶる出来事となった。22日、市内で開催されたアンチ・ドーピングのセミナーでは、騒ぎの中心人物たちが集まり、政治家を交えて激しい議論が展開された。オープニングで、リンダ・カトリーネ・ホフスタ・ヘッレラン文化大臣(保守党)は、「薬物検査を拒否する大会は、公的支援を求めないように」という立場を明確にした。
薬物検査をグレーゾーンにしたがる主催者 「何が問題なのだ」と連呼
Xゲームズの主催者は、来年の公的支援をすでにオスロ市に申請しているが、薬物検査に関しては、いまだに曖昧にしようとしている。その態度は、議論の中でも明らかだった。国内のスポーツ団体関係者は苛立ちを露わにした。
主催者のひとりでもある商業テレビTV2のマッヅ・カッゲスタド氏は、「一部の薬物検査が実施されず、このような騒ぎになったことは残念だ」としながらも、「Xゲームズの問題がなんなのか、個人的には理解できない」と発言。「試合中であろうがなかろうが、ドーピングはされるべきではない。(試合中だけの薬物検査にこだわることは)、“金曜日には薬物を使うな、月曜日まで待て”という信号を我々が送ることになる」と持論を展開した。
薬物検査の問題に大きな拒否反応を示していたのは、共同主催者であるSAHRプロダクション代表ヘンニング・アンネルセン氏。「何が問題があるんだ!」と同氏は連呼し、会場からは何度も失笑が漏れた。
ノルウェーを訪問中だったWADA事務総長のデイヴィット・ホウマン氏は、「すべては選手たちのためであることを忘れてはいけない」と強調。一部の検査リストを「世界が拒んでいる。なぜかは私にはわからない。変化することへの恐れでしょうか。お金でしょうか」。
政治家の責任
オスロ市議会・行政部の文化・スポーツ局局長のリーナ・マリアン・ハンセン氏(中道左派陣営・労働党)は、「市が資金を提供するのであれば、口約束ではなく、薬物検査を受け入れると一筆書きの紙の保証が欲しい」と主催者たちを批判。
薬物検査の有無が曖昧な状態で契約にサインをした当時の前市議会(保守派陣営)を代表するオイステン・スンデリン氏(保守党)は、「さまざまな立場の方々の意見と口論を、ここで見聞きするのは興味深い。公的支援なので、正しい道徳観が必要です。我々政治家は、どなたの意見を参考にしたらよいのでしょう?恐らく、主催者やそのパートナー企業ではないのでしょうね。公開性の低い企業を、我々は信用できるのか。これからも、公的支援を求める商業企業は増加するでしょう。そのときに、質が保証されたご意見番となるのは、WADAなのかもしれません」と議論をまとめた。
その隣で、文化局長は、「当時、安易にサインしてしまったことは、賢い方法ではなかったと、認めてはいかが?」とちくりと嫌味を言う。
司会者は、SAHRプロダクション代表アンネルセン氏に対し、「公的支援がなければ、Xゲームズは開催できないのですか」と最後に問いかけた。問いに一瞬戸惑った主催者。市からの公的支援は、やはり魅力的なようだ。市議会では、左派陣営を中心に、主催者は自己資金で開催するべきという声も挙がっている。
オスロ市が来年のXゲームズを支援するかどうかは、年内の秋頃に市議会で決定される。ノルウェーのフェアプレイへの姿勢が問われることになりそうだ。
Photo&Text: Asaki Abumi