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相続税の改正報道 ~税理士兼不動産鑑定士が感じた本音

冨田建不動産鑑定士・公認会計士・税理士
※筆者が申告ソフトで作成したバーチャル相続税申告書です

■はじめに

10月下旬の政府税制調査会で「政府財政が持たない」として、各種税金の増税案が提出されました。

そして、この点について、「女性自身」誌が道路利用税を報道して、かなりの波紋を呼んだ話ですが、実はそれ以外にも注意すべき点として、「相続税の被相続人が亡くなる3年以内の贈与が相続財産に加算される」点の「3年」→「5年」とすること等が報じられました。

さらに、相続時精算課税制度についても改善が講じられる方向です。こちらは、使い勝手が悪かったのを改善する方向とのことです。

※財務省による説明資料

■ある税理士兼不動産鑑定士の本音

筆者の改正案の感想です。

①既存の贈与税の「3年以内加算」の制度

これの趣旨は、「亡くなる直前に駆け込みで贈与することによる相続税のがれを回避する」

点にあります。そして、今回は3年を5年に延長するという話です。

確かに極端に高額な遺産の場合は影響が顕著でしょうが、そこまで極端な財産でない限りは、そこまで大きな影響ではないと考えます。

それ以前に、3年以上も前から「いつまで自分が生きるかわからない」状況で、子どものために相続税回避に走る人がどの程度いるかも疑問に思います。

そもそも相続税の課税がなされる人は、亡くなった方全体の8%台前後です。

しかも、贈与税を使って「相続税対策をする意義がある人」となると、さらにその一部となり、比率としてはかなり少ないと考えられます。

そのわずかな一部に該当しない限りは、増税増税と言って騒ぎ立てるのもどうかと思います。従って、まずは「その一部に該当するのか」から調べるべきでしょう。

②相続時精算課税制度について

相続時精算課税制度とは、贈与税の制度の一つで、平たく言うと、「後でそれまでの贈与を相続発生時に相続財産に含めて精算できる」ことを選択できる制度です。

もともとは、「親→子世代への財産移転を促進する」ために立法された制度になります。

ただ、税負担の抜け道防止に過剰に規定を入れた結果、規定があまりに煩雑となり使い勝手が悪く、筆者も適用例をほとんど目にしたことがありません。

筆者が目にしたわずかな例では、不動産の所有権移転をこの制度を使って生前から行って、「他の相続人に欲しい不動産を取られるのを防いだ」…との記憶があります。

この制度を使っている例が現状は少ない上に、現時点では具体的に「どう改善していくか」が明記されていないので難しい面はありますが、使い勝手をよくするとなると、むしろ選択肢が増えることも考えられます。

ですので、例えば親御さんの事業用不動産を子どもに移転したい場合は、「親御さんの不動産の内容を理解し、どう相続をしていくかを考えていく」中で、その一つの選択肢として相続時精算課税制度についても意識をおく程度でよいと思われます。

なお、以下はもともとは「これから新たに相続税を扱おうとする税理士」向けに寄稿した記事ですが、「具体的に不動産をどこから調べ始める」かがわからない一般の方にも参考にはなると思いますので、ご参考までに。

「初めて相続税を担う税理士(公認会計士)」のための最低限の不動産に関わる知識

雑誌は話題づくりのために、時に必要以上に刺激的な話題を提起しますが、こと税制に関しては「その話題が自分にどの程度の影響が来るか」を冷静に判断することが大切です。

その上で、影響があるときに限り、必要な対処をすべきでしょう。必要以上に騒ぎ立てず、冷静に行動をするのが肝要です。

不動産鑑定士・公認会計士・税理士

慶應義塾中等部・高校・大学卒業。大学在学中に当時の不動産鑑定士2次試験合格、卒業後に当時の公認会計士2次試験合格。大手監査法人・ 不動産鑑定業者を経て、独立。全国43都道府県で不動産鑑定業務を経験する傍ら、相続税関連や固定資産税還付請求等の不動産関連の税務業務、ネット記事等の寄稿や講演等を行う。特技は12 年学んだエレクトーンで、平成29年の公認会計士東京会音楽祭では優勝を収めた。 令和3年8月には自身二冊目の著書「不動産評価のしくみがわかる本」(同文舘出版)を上梓。 令和5年春、不動産の売却や相続等の税金について解説した「図解でわかる 土地・建物の税金と評価」(日本実業出版社)を上梓。

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