「最も地球から遠い天体」が最新の観測で明らかに!
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「最遠の天体が最新の観測で明らかに」というテーマで動画をお送りしていきます。
最遠の天体=最古の天体
近年の観測技術の進歩は目覚ましいものがあります。
例えば1990年代に初めて見つかった太陽系外惑星ですが、今では4000個以上見つかっていて、もはや当たり前の存在になっていますね。
そして観測の対象は遥か遠方の深宇宙も同じで、ハッブル宇宙望遠鏡の台頭などもあってどんどん深くまでその姿を観測できるようになってきています。
地球から何億光年も離れた天体からの光は地球に届くまでに何億年もの月日が経っているため、そんな遠方の天体を観測するという事は、その光が放たれた、今から何億年も前の時代の宇宙を見るという事になります。
つまり宇宙は遠くを見れば見るほど過去にさかのぼることになります!
ではこれまでの観測史上最も遠くにある天体は、地球から一体どれくらいの距離があって、どれくらい過去の姿を見ることができるのでしょうか?
従来の観測結果
今回の主題に入る前に、これまで考えられていた地球から最遠の天体についての見方のお話をさせていただきたいと思います。
これまで見つかった中で最も遠くにある天体は、ハッブル宇宙望遠鏡によって発見されたこちらのGN-z11という銀河であると考えられてきました。
赤いしぼやけていますが、はっきり存在を確認できます。
宇宙は膨張しているため、遠方の天体から放たれた光は地球に到達する過程で波長が伸びます。
その波長の伸び度合いを示す指標が「赤方偏移」というもので、これが大きいほど波長が伸びていることがわかります。
つまり赤方偏移の値zが大きいほど遠くからやってきた光という事がわかりますが、このGN-z11の赤方偏移の値zは、z=11.1というものでした。
それまでの過去最高値が8.68という値だったので、大幅更新していることがわかります!
そこから割り出されたGN-z11の地球からの現在の距離はなんと約320億光年にもなり、観測された光は今から134億年も前、宇宙が誕生してわずか4億年後の光だと判明しました!
この銀河の大きさは私たちの住む天の川銀河の25分の1、質量は100分の1程度と天の川銀河と比べてしまうと小柄ですが、宇宙が誕生して間もなくできた銀河としては異常なまでに大きく、当時の銀河の成長が速いことを示します。
ハッブル宇宙望遠鏡による観測の精度にもさらなる改善の余地があったため、中にはこの銀河が本当に超遠方に存在しているのか半信半疑であった科学者もいたようです。
最新の観測結果
そんな中、東京大学などの研究チームは、アメリカのケック望遠鏡によって近赤外線波長で先述のGN-z11を非常に高精度で再観測した結果を、去年2020年12月に発表しました。
表示されている画像の上半分がハッブル宇宙望遠鏡によって以前撮影されたGN-z11の実際の姿で、画像下半分が最新の観測で明らかになったGN-z11が放つ赤外線の強度を、その波長ごとに示したグラフとなります。
2.28マイクロメートルあたりに緑色に着色された光の強度が強い波長領域がありますが、これはGN-z11に存在する炭素のイオンが放った光であると考えられています!
この緑色の波長領域の光は、GN-z11から放たれた瞬間には約0.19マイクロメートルの波長の紫外線だったと考えられています。
それが膨張する宇宙空間を100億年以上旅し続けた結果、元の10倍以上にまで波長が伸びてしまったんですね!
この観測によってGN-z11の赤方偏移zの値は10.957と非常に高精度で求められ、やはりこの天体は地球から最も遠く、今から134億年前の宇宙誕生から4億年しか経っていない時期の姿を見ているということが改めて示されました!
さらにGN-z11からの光は炭素イオン以外にも、酸素イオンが放ったものも観測することに成功したそうです。
この宇宙には最初は水素、ヘリウム、少量のリチウムしか元素がなく、それ以外の元素は恒星の中心部で核融合反応によって形成され、超新星爆発によってそれらが宇宙空間を満たすようになっていったと考えられています。
つまり宇宙の初期から存在した元素ではない炭素や酸素を持つGN-z11は、ある程度他の星が誕生して死を迎えた後にできた銀河であり、最も最初に誕生した恒星を含む銀河ではないということまで明らかになりました!
ハッブル宇宙望遠鏡の後継機であり今年末に打ち上げ予定のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が本気を出せば、本当に宇宙最初の銀河や恒星が観測できるかもしれません。
今から本当に楽しみですね!