会社員からSKE48に加入して9年。選抜最年長・髙畑結希のどん底から「きっと大丈夫」な現在地まで
SKE48が32ndシングル『愛のホログラム』をリリースする。孤独な愛がテーマの失恋ソングで、選抜メンバー18人の最年長が28歳の髙畑結希。地元・香川で就職し会社勤めを経てアイドルに。正規メンバー昇格が21歳、初選抜が24歳。「どん底」と語る時期もありつつ、落語、舞台、料理など多岐に渡る活動に取り組み、独自の存在となった。年々輝きを増していく背景にあるものは?
香川を出て都会で暮らすのが夢でした
――もともとアイドルを目指していたわけではなかったんですよね?
髙畑 小さい頃にモーニング娘。さんが好きだったり、ふんわり芸能界に憧れはありましたけど、現実的に自分がアイドルになれるとは思っていませんでした。
――中高生の頃は将来は何になろうと?
髙畑 地元のショッピングモールの本屋さんに行くと、オーディション雑誌を見てはいました。「今こういうのをやっているんだ」と読みながら、会場が東京とかだと行けなくて、踏み出す勇気がありませんでした。でも、大人になったら香川を出て、都会で暮らしたい夢は小さい頃からあって。高校を卒業するタイミングで、親にも「好きなことをやりなさい」と言われて、ちょうどSKE48のオーディションをCMで見たんです。直感で受けてみようと思いました。
――2014年の7期生オーディションですね。
髙畑 半年くらいかけて審査があって、その間に就職しないといけないと思ったので、地元の会社に入って働いていました。会社の方にはオーディションを受けていることを言わなかったんです。でも、DAMさんのカラオケの審査があって、全国的に顔が出ていたので、バレていたらしくて。ちょうど1年後に受かって「応援してるよ」と背中を押してもらって、会社を辞めて名古屋に来ました。
就活で使ったスーツを握手会で着ました
――会社では外回り営業から接客、事務とやっていたとか。
髙畑 あいさつの仕方から、先輩に教えていただきながら。自分が一番下だったので、本当に甘やかしてもらって、お話もいっぱい聞いていただきました。もう10年前で、あまり記憶はありませんけど。
――SKE48に加入当初、自分とファンの方を「髙畑商事」の社長と社員と称していたり、イベントや選抜総選挙の政見放送にスーツ姿で出たり、OLキャラを推していましたね。
髙畑 元会社員としてSKE48に入ったので、それを活かして見え方から作ってみようと、自分で考えました。実際に就職活動から使っていたスーツを握手会で着て、色違いで新しいのも買ったりして楽しんでいました。
コミュ力はないけど握手会では魔法がかかって
――SKE48のことはもともと見てはいたんですか?
髙畑 知ってはいたけど詳しくはない、という感じでした(笑)。
――オーディションに合格したのが20歳になる年。7期生は小・中学生が多かった中、最年長でした。
髙畑 会社とは逆の状況になって。一番年上だから、私が7期生を引っ張らなければいけないと、勝手に責任を背負っていました。
――社会人経験があるだけに、コミュ力は高かったんですよね?
髙畑 それが、そんなにないんです(笑)。お仕事の現場だとあるように見られがちですけど、普段はいまだにマネージャーさんに「また誰とも話してないですね」と心配されるほど、意外と人見知りで。でも、アイドルをしているとマジックがかかるというか、握手会で初めましての方ともフレンドリーに話せます。
朝から晩まで1人でレッスン場に籠ってました
――最初はダンスや歌で苦労もしました?
髙畑 やったことがなかったので、朝から晩までずっと、1人でレッスン場に籠って練習していました。私はもう学校に行ってなくて、他にやることもなくて。まず劇場デビューが最初の目標で、誰よりも早く出たかったんです。7期生のお披露目が(2015年の)3月31日で、6月にはアンダーデビューできました。それから毎回の公演で、いろいろな先輩のアンダーに入りました。
――未経験からそんなに早く劇場デビューできたのは、練習に時間を掛けた成果に加え、飲み込みが早かったんでしょうね。
髙畑 当時はダンスに厳しい先輩もいて、親身になって教えてくださって。「できない」は通じない。毎回何とか本番までに仕上げようという気持ちで、覚えられない怖さもあって。『ラムネの飲み方』公演では、前日の夜に急きょ「出てください」と言われました。
――そんな急に⁉
髙畑 2回公演だから朝に集合。それまでの6~7時間で、寝ずに10何曲覚えられるのか? やってみたんですけど、Wアンコールだけ間に合わず、悔しい想いをしました。
――それにしたって、ゼロから10曲以上を6~7時間でよく覚えられましたね。
髙畑 当時は必死でした。「できますか?」と聞かれたら、絶対チャンスを逃したくなくて「やります!」と言ってました。
落語をやることにしたのはひらめきです
――今も続けている落語は、2016年の「59人のソロコンサート」が最初でした。もともと落語に馴染みはあったんですか?
髙畑 いえ、まったく。知識もなく、全部にわかでした。1人10分で何をしてもいいということだったので、他のメンバーと同じことはしたくなくて。何をしようか考えて、当時はしゃべることがうまくなかったので、練習も兼ねて「落語はどうかな」とひらめいたんです。軽い気持ちで言ったら師匠を付けてくださって、本格的な落語を教えていただきました。
――でも、落語って簡単にできるものではないですよね?
髙畑 落語をやると言ったことを、すごく後悔しました(笑)。本当に難しかったし、1人しゃべりのプレッシャーも大きくて、「台詞が飛んでしまったらどうしよう?」というのもありました。でも、そのソロコンサートのおかげで、今も落語を続けられているので、やって良かったです。
――来月にも「麗和落語~二〇二四 春の陣~」に出演します。
髙畑 最近は舞台で演技のお仕事もさせていただいて、まったく違う難しさと楽しさがあります。舞台では掛け合いがあるので、迷惑を掛けてはいけないと緊張しますし、間の取り方も全然違っていて。どちらも日々勉強しています。
夢を見ても私は結局落とされるんだなと
――髙畑さんが初めて選抜メンバーに入ったのが、2020年発売の『ソーユートコあるよね?』。当時24歳で初選抜の最年長記録でした。それまで焦りはありました?
髙畑 ありました。ひとつ前の『FRUSTRATION』のときが人生どん底。ファンの方に「次は絶対選抜に入るよ」と言われていて、自分でもちょっと期待していた分、「あれ? 選ばれなかった……」という。甘い夢を見させておいて、結局私は落とされる。自分なんて……と思って。カップリング曲の『人生の無駄遣い』で初めてセンターを任せていただきましたけど、すごく複雑な気持ちでしたね。
――表題曲の選抜でなくカップリングのセンター……。微妙なところですよね。
髙畑 嬉しいんですけど、何かもどかしくて。でも、『人生の無駄遣い』の歌詞が、すごく私に響きました。<何もいらない もう欲しくない>、<大事な人生 無駄遣いしたい>。未来の心配もあるけど溜め込むのをやめて、いい意味で人生を無駄遣いして、楽しく生きていこうと思えたんです。
――どん底で救いになったと。
髙畑 今聴いても、当時を思い出して響きます。辛いこと、悲しいこと、不安があっても、結果どうにかなってきたので、この先もきっと大丈夫。変な自信があります。
人がやらないことで楽しんでもらいたくて
――その後は今回の『愛のホログラム』に至るまで、選抜常連になりました。努力してきたことが実った面もありますか?
髙畑 常に刺激を求めたくて、何もしてない時期が一番不安でした。コロナ禍のときは家でできることを探して、「おうちでギネス世界記録」というのに挑戦しました。動画を撮ってYouTubeに上げて。お料理動画も始めて、自分で編集してインスタグラムに載せています。そういうふうに、みんながやらないことで、ファンの皆さんに楽しんでもらうのが好きなんです。コツコツやっていたのが実を結んだのなら、甲斐がありました。
――多彩に活動されている中で、今年も早々から舞台『エゴ・サーチ』の稽古と『愛のホログラム』のMV撮影が重なったそうですが、体的には大変ですか?
髙畑 不思議なことに、疲れは忘れるんです。体がしんどいとしても、後になると「しんどかったかな?」みたいな。全部楽しいから、そう感じるんでしょうね。『エゴ・サーチ』は個人的に、自分を変えてくれる舞台になりました。
――鴻上尚史さんの名作ですが、髙畑さんがどう変わったんですか?
髙畑 私はおばけの役で、大好きな彼を想って成仏できないまま、ずっとさまよっていて、一緒に舞台に出ている皆さんが、すごく熱い方たちだったんです。人って仕事中でも、ちょっとサボりたいとか上の空になるとか、たまにあるじゃないですか。そんなことが一瞬もない現場でした。誰も少しも気を抜かない。目標に向かって頑張るとよく言いますけど、「こういう意味なんだ」と初めてはっきりわかったんです。自分の仕事に対して、もっと本気にならないといけない。アイドルとして、もっとキラキラした姿を見せられるようになりたい。そう背中を押してもらえた舞台でした。
見た目も若いメンバーに劣らないように
――髙畑さんはビジュアル的にも、どんどんきれいになってますよね。そこも努力しているんですか?
髙畑 もうSKE48の中でだいぶ年長メンバーで、今回の選抜では最年長ですけど、みんなより見劣りしたくないというのは、昔からすごくあります。
――14歳と並んでも負けないように?
髙畑 そうです。今回、TeamE曲の『岸辺の少女よ』では、10歳下の倉島杏実ちゃんとのリップシーンがあって、観るのがちょっと怖い(笑)。でも、自分も見た目が衰えないように、ちゃんとケアしたり、常に見られることを意識しています。メイクも濃すぎないように、みんなと並んでも不自然でない感じに調整しています。
――今のグループ内での自分の役割的なことは、どう捉えていますか?
髙畑 あまり考えたことはないですけど、後輩に寄り添える先輩になりたいです。特に地方メンバーは実家になかなか帰れないと、心が落ち込んでしまうことが多いんです。私はありがたいことに月1回、香川でラジオ(はたごん&まりかの じょんならんラジオ)の収録があって、リフレッシュできていて。「私も地元でラジオがやりたいです」と言ってくれる後輩もいるので、よりどころになれたら。後輩も私には気軽に話せると思うので、頼りにしてもらえたら嬉しいです。
落ち込むと意思がなくなるのはわかります
――『愛のホログラム』はシングル表題曲では珍しい失恋ソングになりました。
髙畑 最初から最後まで切なくて、ハッピーエンドにならないのが面白いと思いました。ミュージックビデオでも笑わない、まばたきをしないということで、推しが普段見せない悲しそうな顔、無の表情を見られて、なかなか貴重です。歌詞も入り込みやすいというか、失恋したことがない人でも「この気持ちはわかる」となると思います。
――髙畑さんもわかりました?
髙畑 たとえば<自分の意思じゃなく 流されたい>とありますけど、人間って落ち込んだときは意思がなくなる気がします。私が『FRUSTRATION』で選抜に入れなかったときもそうでした。誰の言葉も耳に入らないし、自分の言葉はなおさら。「もうダメだ」「消えてしまいたい」とか、ネガティブなことばかり考えてしまう。「どうなってもいい」と何かに身を任せたくなりました。
――まさにこの歌詞の通りに。
髙畑 <僕の人生 照らしてたのは 君という名の太陽>のところでは、私の人生を照らしてたのはファンの皆さんだよと。だからファンの皆さんも、私に失恋したらこう思ってほしい。これくらい思ってくれたら、考え直します(笑)。
目で気持ちを伝えることを考えました
――今回のダンスの難易度は高かったですか?
髙畑 すごく繊細です。無表情だけどキビキビと、指先までしっかり力を入れることを意識しました。まばたきできないのは辛かったですね。カメラ目線でなく、ずっと正面の1点を見つめて踊るように言われていて。その中で目で気持ちを伝えてほしいと、(振付の)CRE8BOYさんがおっしゃっていたので、何ができるか考えました。横顔のシーンで伏し目がちにしたらきれいになるかなと、やってみたら使われていました。
――女優経験が活きたかもしれませんね。
髙畑 いい感じの角度でした。衣装もこだわって作ってくださっています。淡い色を使って、はかなさや切なさのニュアンスがあって、水彩画のようなフリル。この衣装で踊る推しを見て、抱きしめたい、守りたいと思ってもらいたいです。
グループにいると自分が何歳か忘れています
――これからのアイドル人生には、どんな展望がありますか?
髙畑 今を生きる人間なので、先々のことはあまり考えていませんけど、個人的な目標として、インスタのフォロワー数を増やしたいです。今は4.3万人でSKE48では一番多いんですけど、まだまだなので。去年ジャカルタでライブをしたとき、海外の方からもフォローしていただいたのをきっかけに、もっと更新して頑張ろうと思ったんです。
――フォロワー数を増やすために、考えていることも?
髙畑 SNSの使い分けですね。Xでは告知をしたり、皆さんがリツイートしてくれるような投稿をして、インスタでは普段の素顔を見せたいです。ごはんを食べているところ、カフェにいるところ。そこにたまにお仕事の写真を載せると、「この人アイドルなんだ」と確認してもらえるかなと。
――今年7月の誕生日が来ると、20代ラストイヤーに入ります。
髙畑 28歳と言われると、もうそんな年齢だったかと思いますけど、SKE48にいると、本当に忘れています。年齢不詳なメンバーが多くて、みんなといると私は何歳とか感じなくて。この前も24歳の菅原茉椰ちゃん、20歳になった相川暖花ちゃん、浅井裕華ちゃんとごはんに行きました。年齢は結構離れてますけど、普通にプライベートの話もできます。
――Z世代との壁はないと。
髙畑 全然ないです。逆に壁を作ってくれません(笑)。年が上だからと話し掛けられないこともなくて、すごく居心地はいいですね。
将来もやりたいことはどんどんやります
――アイドルさんにとって30歳近辺は転機になるようですが、そこも特に意識はしていませんか?
髙畑 私もしっかり考えてはいます。まだ卒業がはっきり頭にあるわけではないですけど、将来なりたい理想はすごくあるかもしれません。
――マルチタレント的なことですか?
髙畑 そうですね。地元でのお仕事は引き続きやっていきたいですし、演技では映像のほうにも出てみたい。自分でも不思議なくらい、まだ挑戦したいことはたくさんあって。30歳になってもアイドルを卒業したとしても、やりたいと思ったことはどんどんやってみるつもりです。
アイドルが合っていたと自信を持って言えます
――今でもたくさんのことをやりつつ、貪欲ですね。
髙畑 逆に、ファンの方からは最近、アイドルの髙畑を見たいと言われることも多くて。劇場にあまり立てていなかったので、「踊っているはたごんが見たい」とか。そういう方たちのためにもアイドル活動もたくさんやって、ギャップを見せたいですね。お芝居をしている髙畑、落語をしている髙畑、アイドルの髙畑……。いろいろなところからファンの方を獲得して、結果SKE48にも来てもらいたい、というのはあります。
――最後に改めて、19歳で香川からSKE48に入ったことは、人生の大正解でしたね。
髙畑 オーディションに落ちていたら、今ごろ何をしていたのか。結婚して主婦になるのも素敵な選択肢ですけど、私にはアイドルが合っていたと自信を持って言えます。当時は香川から出るのが目的のひとつでしたけど、離れてみて、地元の大切さや温かさを再確認しました。去年はTeamEのメンバーを連れて香川でライブをしたり、SKE48に入ってなかったら経験できなかったことがたくさんあります。SKE48を選んで良かった。今はめちゃくちゃ幸せです。
撮影/松下茜
Profile
髙畑結希(たかはた・ゆうき)
1995年7月18日生まれ、香川県出身。2015年にSKE48の7期生オーディションに合格。2016年に正規メンバーに昇格。2020年に『ソーユートコあるよね』で初選抜。舞台『ちちんち』、『エゴ・サーチ』などに出演。『はたごん&まりかの じょんならんラジオ』(FM香川)でパーソナリティ。3月20日に「麗和落語~二〇二四 春の陣~」(武蔵野芸能劇場 小劇場)に出演。
『愛のホログラム』
2月28日発売
Type-A~C CD+DVD 1750円(税込)
劇場盤 CD 1150円(税込)