シリアのバッシャール・アサド大統領は、7月19日に投票が予定されている第3期人民議会(国会)の選挙戦が本格化するのを前に、自らが党首(中央指導部書記長)を務める与党のバアス党の党員に向けて文書で訓示を与え、そのなかで一般党員の投票を通じて党の候補者を選ぶと発表した。
2012年の新憲法公布後3度目となる人民議会選挙は、4月13日に投票が予定されていた。だが、新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、2度にわたり延期されていた(「シリアのアサド大統領はコロナ禍を受け、2度目となる人民議会(国会)選挙の延期を決定」を参照)。
「啓発」(イスティイナース)と名づけられた一般党員による候補者選出のプロセスは党史上初めての試み。
バアス党はこれまで、指導部が人民議会選挙の立候補者してきたが、第3期人民議会選挙では、一般党員が候補者に投票を行い、その結果を踏まえて指導部が候補者リストを作成することが決定された。
優秀な人材が失われたと自己批判
アサド大統領は訓示のなかで次のように述べ、詳細についての言及は避けつつも、党が過ちを犯したと自己批判し、それによって人材が失われたことを認めた。
戦争を戦うことが最終戦課題
アサド大統領は、2000年に就任した当初はその改革志向で知られていた。だが、イラク戦争(2003年)、レバノンのラフィーク・ハリーリー元首相暗殺事件(2005年)、レバノン紛争(2006年)など、シリアをめぐる地域国際情勢の変化に対処するため、国内での改革の猶予を余儀なくされたと繰り返してきた。
2011年に「アラブの春」が波及すると、「包括的改革プログラム」と銘打って新憲法制定を含む抜本的内政改革を敢行した。だが、その後、「シリア内戦」と呼ばれることになる国内の混乱に対処するため、2013年になると、西側諸国やアル=カーイダ系組織との「真の戦争状態」を強調するようになった。
こうした経緯を踏まえるかたちで、アサド大統領はこう述べ、バアス党にとっての最優先課題が依然として戦争にあることを再確認している。
党員に候補者選びに積極的に参加するよう呼びかける
アサド大統領はそのうえで、次のように述べて、バアス党内で候補者を選出するための「啓発」プロセスを開始すると表明、党員にこのプロセスの異義を説くとともに、積極的な参加を呼びかけた。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)