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今年も約32万人が来場!カスタムカーの祭典「東京オートサロン」は新たなステージへ向かう?

辻野ヒロシモータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト
トヨタGRスーパースポーツコンセプト

1月12日(金)から14日(日)まで千葉県・幕張メッセで開催された「東京オートサロン2018」が閉幕した。主催者(東京オートサロン事務局)によると3日間の合計来場者数は31万9030人と今年も30万人を超える来場者を記録。海外からの来場者も多く、カスタムカー、ドレスアップカーの先駆者的イベントは今年も非常に盛り上がった。2018年の東京オートサロンを振り返ってみたい。

東京オートサロン2018 【写真:東京オートサロン事務局】
東京オートサロン2018 【写真:東京オートサロン事務局】

トヨタGRスポーツコンセプトが最優秀賞を獲得

東京モーターショーを凌ぐ人気と言われて久しい「東京オートサロン」。近年は国内外の名だたる自動車メーカーが巨大ブースを出展し、華やかさの向上に一役買っている。自動車メーカーとしては自社や関連会社が製作・販売する公式なカスタムパーツを装着した車の宣伝が主な目的で、先進技術と新車をPRするモーターショーとは違い、各自動車メーカーがクルマ好きのユーザーに新たな提案を行う場だ。

そんな中、原点に立ち返ってクルマ好きの人を増やそうと間口を広げた展示をしているのがトヨタ自動車。同社は「Toyota GAZOO Racing」として行うモータースポーツ活動をPRするのが恒例となっているが、今年は来場者の目を釘付けにするコンセプトカー「GRスポーツコンセプト」を発表した。

GRスーパースポーツコンセプト
GRスーパースポーツコンセプト

「GRスーパースポーツコンセプト」はトヨタがル・マン24時間レースを含むWEC(FIA世界耐久選手権)のマシン「TS050 HYBRID」で培った技術を活かしたというよりは、ほぼ同じパーツを使用したプロトタイプカーの市販ロードゴーイングバージョン。V6直噴ツインターボエンジン(排気量2400cc)にTHS-R(トヨタハイブリッドシステム・レーシング)を搭載し、トータルで1000馬力のパワーを持つ究極のスポーツカーになっている。

トヨタほどの大メーカーがこういった「突き抜けた」感のあるコンセプトカーを堂々と披露するのは革新的なことであり、モーターショーではなく「東京オートサロン」という舞台で公開したというのが何より新鮮だった。これまで「東京オートサロン」でのプレゼンテーションといえば、モータースポーツの体制発表やレーシングマシンのお披露目、あるいは新カスタムパーツを装着したコンセプトカーを発表する場だった。しかし、今回は市販を前提とした究極のロードゴーイングカーの発表とあって、そのインパクトは大きい。

来場者による人気投票で決定する「東京国際カスタムカーコンテスト」のコンセプトカー部門で「GRスーパースポーツコンセプト」は堂々の最優秀賞を受賞。市販前提の開発という、今までのトヨタにない色を出したことが、カスタムカーファンにも受け入れられた。また単にコンセプトカーとしてのボディを披露するだけでなく、実走可能なテストカーの中身を公開したことで、多くの自動車ファンや業界人の興味を惹きつけたのではないだろうか。まさに2018年の「東京オートサロン」を象徴するクルマとなり、今後の同イベントのトレンドを作り出す1台になるかもしれない。

東京国際カスタムカーコンテスト表彰式 コンセプトカー部門 【写真:東京オートサロン事務局】
東京国際カスタムカーコンテスト表彰式 コンセプトカー部門 【写真:東京オートサロン事務局】

スポーツカーのチューニングが再燃

近年の「東京オートサロン」は長引く景気低迷や、車に対する興味の低下、エコカーの台頭など様々なマイナス要素が重なっていたにも関わらず、なぜか来場者数が増加傾向にあった。その要因の一つは多くのユーザーが愛用するミニバンやワンボックス、あるいはエコカーのドレスアップがトレンドになっていたことが考えられる。

しかしながら、今年は明らかにファミリーカーベースの車が減少し、逆にトヨタ86や外国製スポーツカーなどをベースにしたチューニングカーが増加。10年以上前に独自のチューニングを施し、市販車の性能を向上させてきたチューナーやパーツメーカーが活躍していた時代を彷彿とさせる、ある意味オートサロンらしいクルマが多く見られるようになった。

スポーツカーが再び人気に【写真:東京オートサロン事務局】
スポーツカーが再び人気に【写真:東京オートサロン事務局】

高性能な電子制御技術を搭載した市販車が増加し、小規模なチューナーではかつてのような性能向上が難しくなっていたが、近年は再びチューナーのコンピューターセッティング技術が進み、パーツメーカーも力を付けてきたことから、再び業界が活性化されつつある。「走り」にこだわったクルマが求められる時代がまたやって来るのか、全体的にそう感じてしまう傾向が今年の「東京オートサロン」にはあった。

ケン・ブロックが会場を盛り上げた

ケン・ブロック【写真:東京オートサロン事務局】
ケン・ブロック【写真:東京オートサロン事務局】

今年の「東京オートサロン」のもう一つの目玉は、ドリフト界のカリスマ的存在と言えるラリードライバー、ケン・ブロックのパフォーマンスだった。会場内に設けられた屋外イベント会場でケン・ブロックはタイヤスモークを巻き上げながら激しいドリフトパフォーマンスやドーナツターンを披露。来場したファンの拍手喝采を浴びていた。

またケン・ブロックの走行アクションパフォーマンスを支える「TOYO TIRES」ブースには1400馬力を発揮する1965年のフォード・マスタングなどが展示され、来場者のフォトスポットに。外国人来場者が増加している「東京オートサロン」でケン・ブロックの来場は大きな魅力になっていたに違いない。

TOYO TIRESブースで展示されたケン・ブロックのマスタング
TOYO TIRESブースで展示されたケン・ブロックのマスタング

学生たちの個性あふれるクルマたち

近年の「東京オートサロン」の楽しみの一つに、自動車大学校・専門学校による出展ブースが挙げられる。毎年、将来は自動車メーカーやディーラーで働きたい学生たちが自由な発想で個性あふれるクルマを製作。大人にはない突き抜けた発想のクルマは来場者を楽しませている。

今年、気になった学生のクルマは「トヨタ東京自動車大学校」の女子学生らが作った、その名も「日本車」。トヨタ・セリカをベースに東京オリンピックを意識した市松模様のカラーリングで、屋根にはお城を乗せ、シフトノブはけん玉、リヤハッチから鏡を覗き込むと花火が上がるという仕掛けも。

トヨタ東京自動車大学校の「日本車」
トヨタ東京自動車大学校の「日本車」

ニコニコ生放送の番組「オートサロンTV」では学生たちが自作した車をPR。既に自動車メーカーやディーラーに就職が決まっている学生も多く、それぞれのクルマに対する熱い思いを語っていた。若者のクルマ離れは彼らも友人との会話で感じているようだが、そこを何とかしたいという考えをそれぞれが持っており、実に頼もしい存在だ。

オートサロンTVに登場した各学校の代表生徒たち。今後の自動車業界での活躍が期待される。
オートサロンTVに登場した各学校の代表生徒たち。今後の自動車業界での活躍が期待される。

チューニングカー、ドレスアップカー、レーシングカー、コンセプトカーなど様々なクルマで賑わった2018年の「東京オートサロン」。見所満載のカスタムカーの祭典はこれからまた新たなステージへと向かっているのではないか。そう感じる魅力的な笑顔が会場に溢れていたと思う。

【東京オートサロン2018 来場者数】

1月12日(金) 78,352 名

1月13日(土) 122,509 名

1月14日(日) 118,169 名

3日間合計  319,030 名

東京オートサロン公式ウェブサイト

モータースポーツ実況アナウンサー/ジャーナリスト

鈴鹿市出身。エキゾーストノートを聞いて育つ。鈴鹿サーキットを中心に実況、ピットリポートを担当するアナウンサー。「J SPORTS」「BS日テレ」などレース中継でも実況を務める。2018年は2輪と4輪両方の「ル・マン24時間レース」に携わった。また、取材を通じ、F1から底辺レース、2輪、カートに至るまで幅広く精通する。またライター、ジャーナリストとしてF1バルセロナテスト、イギリスGP、マレーシアGPなどF1、インディカー、F3マカオGPなど海外取材歴も多数。

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