安倍首相の秋葉原演説で「やめろ」コールするより、政治家をうまく使いこなすことこそ有権者の役割
7月1日に千代田区から都議選に出馬している自民党の公認候補を応援するため安倍晋三首相も秋葉原の街宣に参加しました。
首相がマイクを握ると聴衆の一部が「安倍やめろ」「帰れ」と叫びはじめました。その叫ぶ声量があまりに大きいため、その周辺では演説がよく聞こえず、迷惑そうな表情でその場から移動する聴衆の姿もあったそうです。
私の認識では民主主義とは「選挙を通して、政治家に一定期間政治の決定権力を与えること」だと考えています。そのため政権与党である自民党から安倍首相が選出されていることは民主主義の理にかなっているのではないでしょうか。
そのような意味で安倍さんに首相をやめて欲しいのであれば次回の衆議院選挙で「山口県第4区から立候補した安倍さんを落選させる」、もしくは「自民党を野党にする」とかそういった手段を考えるべきです。
また今回の街宣は都民に対して都議選の候補者たちが演説するために行っているわけですから、いくら安倍首相のことが気に入らないからといって「安倍やめろ」とか「帰れ」とかこの場で騒ぐのはおかしいと思います。
それでは、国政や都政などの選挙後に政治家たちに対して私たちの意見や政策提言はどのように伝えていけば良いのでしょうか。
選挙が終わっても政治家に民意は伝えられる!
私は2015年12月に著書『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)を出版しました。「弱者やマイノリティのために、政治に直接働きかける技術」を解説する、初めての一冊になります。
さきほど民主主義のことに触れていますが、端的に言うと民主主義体制下では国民が権力者であり国民が支配者であり、同時に国民が被支配者です。すべて国民の自己責任で政治を行います。
じゃ、具体的に民主主義っていうと何すればいいの?という話になると「選挙で投票する」、もしくは「選挙に立候補する」とか、「デモに参加する」が頭に浮かぶ人が多いと思いますが、実はこの「ロビイング」も欠かせない一つの要素になります。
ロビイング(ロビー活動)とは、特定の主張を有する個人または団体が政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行う私的な政治活動のことです。議会の議員、政府の構成員、公務員などが対象となります。簡単に説明すると政治家や官僚に直接会って要望や陳情することです。
日本では昔から集票力のある圧力団体が自分たちの利益のためにロビー活動しています。選挙のときにも自前で用意した組織内議員を送り込んでいます。つまり圧力団体の発言は政治家や政党も無視できない影響力を持っています。これは強固な組織や票をもっている圧力団体だからこそできることなのです。
また以前にデモも活発に行われましたが、これはたとえば「参加している人と一緒に行動する連帯感」「人前で行動を起こすことの開放感」「目立つことをしていることの高揚感」などといったデモに参加している人たちの内面を大きく変える事柄であっても、対外的なこと(政治や社会など)を変える力にはなりませんでした。
私は「必ず選挙に行って投票しなければならない」とか、「困っている人はみんなロビイングすべき」といったことはまったく言うつもりはありません。
しかし、先にも述べた「選挙で投票する」、「選挙に立候補する」ことを圧力団体が行えば、当然のことながら「圧力団体」が望む方向へと政治は動いていきます。
もちろん「選挙に立候補する」ことはハードルが高いかもしれません。以前に、私が書いた記事でもそのことには触れています。
もうすぐ都議選!といってもやっぱり選挙に立候補するのが難しい3つの理由
では、「ロビイング」のほうはどうでしょうか?
「ロビイング」のことについては知らない人たちがたくさんいます。これでは「ロビイング」を既にやっている人たちが望む方向へと政治は動いてしまいます。
「参加する/参加しない」を選択するのは個々人の自由ですが、「知っている/知らない」で損得をしてしまうことは不公平だと思います。私はこれから「ロビイング」のことをたくさんの人たちに知ってもらい、そのうえで「ロビイングする/ロビイングしない」を選択できる社会に変えていきたいと考えています。
そして『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)はロビイングが誰でもできるものだと主張する、いわばロビイングのマニュアル書です。ぜひ、「ロビイングやってみたい!」という方たちにはこの本を読んで実践していただきたいです。
都議選は終わったばかりです。さあ、これから都政へ直接私たちの意見や政策提言を伝えていきましょう。