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台風16号が週明けの日本列島へ 発達した台風は堂々と進んでくる

饒村曜気象予報士
日本を窺う台風16号の雲(9月24日15時)

台風16号の発生

 令和3年(2021年)9月23日21時にマリアナ諸島で台風16号が発生しました。

 台風が発達する目安の海面水温は27度ですが、これを上回る30度以上という非常に暖かい海域を北上する予報です(図1)。

図1 台風16号の進路予報と海面水温(9月25日0時)
図1 台風16号の進路予報と海面水温(9月25日0時)

 台風の進路予報は最新のものをお使いください

 このため、台風16号は猛烈な台風にまで発達し、週明けには日本の南海上にやってくる予報です。

台風の強さと予報誤差

 台風は、中心付近の最大風速によって「猛烈な」「非常に強い」「強い」という強さの名称がつけられています。

 平成12年(2000年)6月1日以前は、「並みの強さ」とか「弱い」という表現を加えた5つの分類でした。

 この変更のきっかけは、平成11年(1999年)8月13日の神奈県の玄倉川水難事故です。

 玄倉川の中州でキャンプをしていた家族連れなど13名が、弱い熱帯低気圧(当時の名称)による大雨で増水した川に流されて死亡する、それもテレビで生中継中のできごとでした。

 このため、安心感を与える言葉は防災上好ましくないとされ、「弱い熱帯低気圧」を単に「熱帯低気圧」と変え、台風の強さの「弱い」「並の強さ」と、台風の大きさの「ごく小さい」「小型」「中型」の表現を廃止となったのです。

 「弱い台風」といっても、台風という名前がついている以上、必ず最大風速は17.2メートル以上あります。

 災害の危険性があるのですが、言葉に対する感覚が時代とともに変わってきたのかもしれません。

 現在使われている「猛烈な」「非常に強い」「強い」という強さの名称がついた台風は、強さの名称がついていない台風より進路予報誤差が小さいという特徴があります(表)。

表 台風の強さと24時間予報誤差(平成15年(2003年)~平成20年(2008年))
表 台風の強さと24時間予報誤差(平成15年(2003年)~平成20年(2008年))

 日本の南海上で強さの名称がついた台風の平均24時間予報誤差は91kmですが、最大風速が小さくなればなるほど、予報誤差が大きくなっています。

堂々と進む発達した台風

 台風は地球の自転の影響をうけてゆっくり北上する性質がありますが、台風の移動のおおくは、上空の風によって流されて移動します。

 上空に東風が吹いていたら、その東風に乗って進み、西風が強く吹いていたら、その強い西風によって東へ早く進みます。

 ただ、台風は上空の風に流されながら、上空の風を少しずつ変えています。

 台風のうち発達した台風は、流されてフラフラするのではなく、上空の風を大きく変えなから堂々と進んできます。

 このため、昔から発達した台風のほうが、予報誤差が小さいと言われてきましたし、前述の表も、そのことを示しています。

 昭和34年(1959年)9月26日に潮岬に上陸し、伊勢湾に発生した高潮によって5000人以上が亡くなった伊勢湾台風も、進路予報は比較的正確でした。

 過去に大きな災害をもたらした発達した台風のうち、進路予想が比較的正確だったという事例は数多くあります。

 これらの事例は、進路予報が正確になっただけでは災害が減らないことを意味しています。

 進路予報を聞くだけでなく、聞いて実際に避難などの行動を起こすというところまでゆかないと災害はなかなか減りません。

 週明けに台風16号の接近が予想されています。

 台風16号の接近前である今週末は、ハザードマップで自分の住んいる場所の危険性を確認、防災用品のチェック、家の周囲で飛びそうなものを固定したり収納、排水溝の掃除など、防災対応を実際にやってみませんか。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

表の出典:気象庁資料をもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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