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潜在能力は抜群!だが現状のままでは…藤浪晋太郎はメジャー契約を勝ち取れるのか?

上原浩治元メジャーリーガー
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 メジャーリーグでプレー、移籍を目指した日本人選手の多くで所属先が決まってきた。

 そんな中、昨季からメジャーでプレーした藤浪晋太郎投手の契約が年を越えても決まっていない。私にも経験があるが、契約がなかなか決まらないと、早くスッキリしたい気持ちが強くなり、落ち着かない日々が続く。ただ、藤浪投手は実力的にはメジャー契約が届く可能性は残っていると思う。いま大事なことは、シーズンに向けたトレーニングを地道に続けることだと考える。

 藤浪投手はメジャー1年目の昨季、アスレチックスで先発からスタート。オープン戦での好成績で先発陣の一角を勝ち取ったが、レギュラーシーズンに入ってからは先発での結果を残せなかった。しかし、短いイニングで勝負する中継ぎになってからは、球威のある直球でメジャーの打者をねじ伏せ、調子も上向きになった。シーズン途中でア・リーグ東地区を制したオリオールズへ移籍し、評価を高めた。

 ただ、シーズン1年を通した成績では64試合に登板して7勝(8敗、2セーブ)を挙げたものの、防御率は7.18。ポストシーズンも登板はなかった。メジャーの評価はやはりレギュラーシーズンを通してのものとなり、その中の何試合かで結果を出したとしても印象をガラリと変えることはできない。一方で、あれだけのまっすぐがあり、肩のスタミナも申し分ない。昨季にメジャーへ挑戦する際、「化けたらすごい投手」とこのコラムでも書いたが、覚醒したときの「期待値」を下げることなく、シーズンを持ち越したというのが、藤浪投手の評価ではないだろうか。

 藤浪投手の課題は明確で「コントロール」だ。契約する側の球団としては、この一点でどこまで改善の余地があるか、2年目でより対応できていくのかということがポイントになっているはずだ。厳しい言い方をすれば、現状のままでは、大事な場面でマウンドを託すことはできない。

 私は2009年からオリオールズでプレーしたが、2年目は春季キャンプ中に「中継ぎ」への配置転換を言い渡された。しかも、けがから復帰した当初は、勝ちパターンでの起用ではなく、敗戦処理からのスタートだった。今でも屈辱的な思いは忘れない。メジャー契約だったため、マイナーへ落ちることはない。そして、戦力外でリリースされることはなく、敗戦処理で結果を残すためのチャンスが与えられた。

 藤浪投手の場合、「敗戦処理からでも」と思っても、まずはメジャー契約が前提となってくる。強豪のチームでは、好待遇で迎え入れた選手はマイナーに落とせない契約になっていることがほとんどで、そういう選手が結果を残せなかった場合の働き場所として、敗戦処理の枠が埋まっていることも予想される。そうなれば、選手層の薄い球団でまずは契約を結び、結果を積み上げていくしかない。

 2月からのキャンプを前に、契約時期がずれこんでくると、「マイナー契約」を選択肢に入れるかの決断も迫られる。マイナー契約となれば、メジャーの春季キャンプに「招待選手」として参加し、同じような境遇の選手や若手とのサバイバル競争が待ち受ける。

 藤浪投手のあのボールをみたら、やはり期待が大きくなる。潜在能力はやはり高く、「期待値」通りの活躍をすれば、中継ぎとして防御率も3点台で、5、60試合に投げることも十分に可能だと思っている。2年目以降の選手には、「メジャーに行けば大化けするかも」「まだメジャー1年目だから」というような言葉は使われなくなる。まずは藤浪投手に契約の「吉報」が届くことを願い、その先の活躍を楽しみにしている。

元メジャーリーガー

1975年4月3日生まれ。大阪府出身。98年、ドラフト1位で読売ジャイアンツに入団。1年目に20勝4敗で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠、新人王と沢村賞も受賞。06年にはWBC日本代表に選ばれ初代王者に貢献。08年にボルチモア・オリオールズでメジャー挑戦。ボストン・レッドソックス時代の13年にはクローザーとしてワールドシリーズ制覇、リーグチャンピオンシップMVP。18年、10年ぶりに日本球界に復帰するも翌19年5月に現役引退。YouTube「上原浩治の雑談魂」https://www.youtube.com/channel/UCGynN2H7DcNjpN7Qng4dZmg

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