Yahoo!ニュース

「政府が平壌に宣伝ビラを散布せよ!」 止まない北朝鮮のゴミ風船に苛立つ韓国の保守層!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
脱北団体による金正恩体制批判ビラ風船(自由北韓運動連合配信)

 北朝鮮が執拗にゴミ風船を飛ばすため韓国当局がその対策に頭を痛めている。

 韓国のメディアは北朝鮮がゴミ風船を飛ばし続けている理由について▲北朝鮮の人民に韓国への敵愾心を植え付けさせるため▲「南南葛藤(対北朝鮮政策を巡る国内の対立)を助長するため▲韓国が拡声器放送を行っているためなど様々な分析をしている。

 北朝鮮のゴミ風船が首都ソウルに落下しているだけでなく、大統領室や国防部のエリアなどに落ち、また火災が発生し、航空機の離着陸などにも悪影響を及ぼしていることから止めさせるための強硬手段として北朝鮮問題や安全保障問題専門家の間では民間団体が行っている対北ビラ散布を政府次元で行い、平壌に散布する「心理戦」を展開すべきとの声が上がっている。

 韓国からの風船ビラは主に休戦ラインの北側地域、江原道や黄海道に落下しているが、それよりも北朝鮮の核心、エリート層が暮らす平壌に落とせば、金正恩(キム・ジョンウン)政権により大きな心理的なダメージを与えることができるとの発想のようだ。

 「向こうがソウルに散布しているのにこちらが平壌に散布できないのは不公平だ」との言い分だが、休戦ラインから平壌までの距離は180kmもあり、他の手段を講じなければ、風船による散布には現実的には無理がある。

 北朝鮮が20回もゴミ風船を飛ばしたのは何よりも脱北団体の対北宣伝ビラ風船への対抗措置であることは明らかだ。

 宣伝ビラの入ったペットボトルを川から北朝鮮に向け流したのを含め脱北団体や民間団体による宣伝ビラ活動がこれまで公表されたのは5月10日、6月5日、6月20日、6月22日、7月7日、8月9日、9月4日の7回のみだ。

 しかし、韓国警察庁が9月12日に提出した資料によれば、脱北団体は5月1日から9月10日までの間に金正恩政権を批判するビラ風船を延べ49回も飛ばしていたことがわかった。特に9月に入ってからは10日までの間に11回も飛ばしていた。

 脱北団体による対北ビラ散布は南北の緊張を増幅させるだけでなく、地域住民の生活にも支障を来していることから野党などは所管の統一部に脱北団体を自制させるよう求めているが、統一部は韓国の憲法が定めた表現の自由の観点から、また北朝鮮に自由主義の風を吹き込むことの重要性から規制せず、放置している。現に、統一部は4月以降、脱北団体と接触した回数は5回だけで、7月1日を最後に一度も会って自制を促すことはしていない。

 北朝鮮のゴミ風船は5月28日から始まったが、9月に限って言えば、4日から8日までは5日連続で、それも5日は午前と午後と2度飛ばしていた。その後も11日、14日、15日と飛ばしているところをみると、脱北団体も同じぐらいの回数で宣伝ビラを飛ばしているものと推察される。

 脱北団体などは与党「国民の力」からの進言もあって、野党の批判や地域住民の妨害を交わすため以前とは違い、事前予告も事後報告もせず、深夜こっそり集い、北朝鮮に風船ビラを飛ばしている。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

「辺真一のマル秘レポート」

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌ではなかなか語ることのできない日本を取り巻く国際情勢、特に日中、日露、日韓、日朝関係を軸とするアジア情勢、さらには朝鮮半島の動向に関する知られざる情報を提供し、かつ日本の安全、平和の観点から論じます。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

辺真一の最近の記事