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待ちわびた長期離脱からの復帰。カソルラがビジャレアルで再び見せる笑顔。

森田泰史スポーツライター
チームメートとゴールを喜び合うカソルラ(写真:ロイター/アフロ)

その時は、訪れた。

リーガエスパニョーラ第17節、ビジャレアル対レアル・マドリーの一戦で、輝いたのはサンティ・カソルラだった。先制点と試合終盤の起死回生の同点弾、2得点を叩き込んで世界王者からの勝ち点1奪取に大きく貢献した。

試合後、カソルラは「これまで僕が経験したことを顧みると、本当に特別な夜になった。リーガに復帰して、初めての2ゴール。それも相手はマドリーだ」と感情を発露させた。この言葉通り、彼が歩んできた道のりは決して平坦ではなかった。

■歩ければいい方だ

この夏、「心のクラブ」に復帰した。17歳でビジャレアルの下部組織に入団したカソルラは、2003年11月にトップデビューを果たす。だがマルコス・セナ、フアン・ロマン・リケルメ、ディエゴ・フォルランと錚々たるメンバーが揃っていたチームで居場所を確保するのは容易ではなかった。

レクレアティボへの完全移籍後、一度目のビジャレアルへの復帰を経て、マラガ、アーセナルと複数クラブでプレーした。しかし、2016年10月19日に行われたチャンピオンズリーグ・グループステージ第3節のルゴドレツ戦出場を最後に、カソルラは公式戦のピッチから遠ざかった。

何度もアキレス腱の痛みに苦しめられた。最終的に、計9度の手術を余儀なくされた。最初の手術は2016年12月7日に行われたが、それは長いトンネルの入り口であった。

ある者は匙(さじ)を投げ、またある者は「歩けるようになればいい方だ」とカソルラを諭した。そんな中、2017年7月10日に、カソルラはフアン・カルロス・エルナンス医師のクリニックを訪れる。「カソルラは足を引きずりながら歩いていた。足の動かし方を忘れているようだった」とエルナンス氏は当時を回想している。

エルナンス氏だけではない。ミケル・サンチェス医師、フィジカルコーチのアルトゥーロ・マルティネス氏、ディエゴ・アロンソ氏、レバンテの女子チームでプレーし、フィジオセラピストの資格を有するルス・ガルシアなど多くの人間がカソルラのリハビリに携わった。もう一度、カソルラをピッチにーー。彼らの目標は一致していた。

■現在進行形のチャレンジ

そして、昨年8月18日のリーガ開幕節レアル・ソシエダ戦で、再びカソルラは公式戦のピッチに立った。668日ぶりのことだった。

ビジャレアルやアーセナルといったポゼッションを志向するチームで、カソルラは欠かせない存在だった。ビセンテ・デル・ボスケ政権における、スペイン代表でも同様だ。

プレービジョンと展開力に優れた、左右の足を自在に操れる両利きのような選手である。先のマドリー戦では、カセミロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチという中盤の選手たちに、まったく引けを取らないプレーを見せた。

「僕は模範なんかじゃない。周囲の人は、そう言うけれどね」

カソルラは、そう謙遜する。その笑顔は、周りの人を虜にする。

今季のビジャレアルは、現在17位と低迷している。2011-12シーズンに経験した2部降格という苦い思い出が、幻影となってグロゲッツ(ビジャレアルファンの愛称)に襲い掛かろうとしている。

困難を乗り越えた男が、1部残留の原動力となる。昨年12月に34歳を迎えたカソルラだが、そのチャレンジは現在進行中だ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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