熱中症の危険がある高温多湿は、雷雨や集中豪雨の可能性を高くする
令和3年(2021年)の梅雨
令和3年(2021年)の梅雨は、5月5日に沖縄・奄美地方が平年より早く梅雨入りしました。
その後、九州南部は5月11日に梅雨入りしましたが、梅雨の統計がある昭和26年(1951年)以降で、昭和31年(1956年)の5月1日に次ぐ2位の早い梅雨入りでした。
さらに、九州北部と中国・四国の梅雨入りは5月15日、近畿・東海の梅雨入りは5月16日でしたが、四国と近畿は統計開始以来一番早い梅雨入り、九州北部・中国・東海は2番目に早い梅雨入りでした。
一方、西日本と東海の記録的に早い梅雨入りとは異なり、関東甲信地方の梅雨入りは6月14日と、平年より7日遅い梅雨入りでした。
また、北陸は6月18日、東北は6月19日と、平年より遅い梅雨入りでした。
そして、6月末から7月上旬は、梅雨前線に向かって暖かくて湿った空気が流入したため各地で大きな被害が発生しました。
しかし、その梅雨は、7月2日の沖縄地方、3日の鹿児島県奄美地方の梅雨明けに続き、7月11日には九州南部で、7月13日には九州北部と中国地方でも梅雨明けとなりました(表)。
九州南部・北部及び中国地方の梅雨明けは、平年より4~6日も早い梅雨明けでした。
太平洋高気圧が強まったことにより、沖縄付近に停滞することが多かった梅雨前線が北陸地方まで押し上げられ、そこで活動が不活発となる予報のためです。
天気図上から梅雨前線が消える予想です(図1)。
このため、他の地方でも、まもなく梅雨明けかもしれません。
【追記(7月14日13時)】
気象庁は7月14日11時、「北陸が梅雨明けしたとみられる」と発表しました。
平年よりも9日い梅雨明けです。
ほど遠い「梅雨明け10日」
梅雨が明けると、強まってきた太平洋高気圧におおわれ、晴天が10日ほど続くことが多くなります。
このため、昔から「梅雨明け10日」という言葉が使われてきました。
しかし、令和3年(2021年)のは違います。
太平洋高気圧が強まってきたといっても梅雨前線を北へ押し上げる力は弱く、北から寒気が南下しやすい状態での梅雨明けです。
梅雨明けをした地方も含め、全国的に大気が不安定となって局地的に積乱雲が発達し、各地で豪雨が発生しています(図2)。
7月14日も全国的に大気が不安定となり、各地で積乱雲が発達して雷雨の予想です(図3)。
東北南部から九州で発雷確率が50パーセント以上となり、梅雨明けしたばかりの中国地方では発雷確率が75パーセントを超えています。
気象庁では、早期注意情報を発表し、5日先までの警報の可能性について「中」「高」の2段階で表示しています。
これによると、7月14日に大雨警報が発表となる可能性は、長野県北部で「高」のほか、東北地方から九州地方まで「中」となっています(図4)。
また、7月15日も、群馬・長野両県と鹿児島県で「中」となっています。
令和3年(2021年)は、「梅雨明け10日」とはほど遠い梅雨明けです。
大気が不安定な4条件
大気が不安定となる条件として、上空に寒気が入っているということが良く言われます。
事実、現在、日本列島上空には広い範囲で寒気が南下しています。
東北から九州まで、上空約5500メートルでは氷点下6度の寒気に覆われています(図5)。
このような大気が不安定な状態は、少なくとも、あす15日まで続きます。
とはいえ、上空約5500メートルで氷点下6度以下の寒気は、極端に強い寒気ではありません。
令和3年(2021年)7月中旬は、上空に寒気が入っているだけでなく、下層に暖気と湿気も入っているために大気が非常に不安定となっているのです。
大気が不安定となる条件は4つあります。
上空に寒気が入る、上空に乾気(乾燥した空気)が入る、下層に暖気が入る、下層に湿気(多量の水蒸気)が入ることの4つです。
このうち、1つでも条件を満たせば大気が不安定になりますが、複数あればさらに不安定となります。
現在の状況は、まさに、この複数あるケースです。
熱中症に警戒
大気を不安定にさせる下層暖気と下層湿気の流入する状態(高温多湿の状態)は、熱中症になりやすい状態でもあります。
暑いところに、湿度が高いと熱中症の危険性はさらに増加します。
気温だけでなく湿度等を考えて作られている熱中症警戒レベルの予想によると、7月14日の最高値は、西日本を中心に危険、もしくは極めて危険となっています(図6)。
今週は、梅雨明けをしたかどうかにかかわらず、大気が非常に不安定となって発達した積乱雲による落雷や豪雨などに警戒するほか、熱中症にも警戒が必要です。
図1、表の出典:気象庁ホームページ。
図2、図3、図4、図5、図6の出典:ウェザーマップ提供。