佐藤屋さんの「おぼろ月」で楽しむ、梅と黄身餡のマリアージュ。錦玉羹の幻想的な煌めきと共に
「和菓子をちょっと自由に」をモットーに活躍する、創業1821年の老舗和菓子屋さんの8代目・佐藤さん。山形県の本店のみならず、東北や関東の百貨店での催事や海外での実演など、形に捕らわれず、それでいて山形県の魅力が詰まった和菓子を生み出すエンターテイナー。
佐藤屋さんの名物といえば、竹皮に包まれた鮮やかな鼈甲色の甘酸っぱい乃し梅ですが、その梅の魅力を取り入れた、様々な表情をもつ和菓子も揃います。
今回ご紹介するのはそのひとつ、「おぼろ月」です。
可愛らしく、可憐な甘酸っぱさに思わず笑みがこぼれてしまう味わい。それなのにどこか大人っぽい雰囲気を感じるのは、梅がもつ芳香と果実としての甘味双方を引き出すことに長けているからでしょうか。
乳白色の黄身餡も、予想以上に梅の錦玉羹とぴったり合ってびっくり!口当たりもやわらかく、引き際の良い白餡ではなくなぜ黄身餡?と思っておりました。
けれど、甘味ではなく「梅そのもの」の良い部分が濃厚だからこそ、酸味が備わっていても黄身餡のまろやかさがしっくりくるのではないかと。
冷蔵庫で冷やしていただくとより一層美味しいとのことでしたので、今回は冷やしていただきました。
ひんやりしていて、すっきりして、甘くて、ほんのり濃厚で。
見た目はシンプルですが、いくつもの美味しい要素を味わえる不思議で面白い作品でした。
余談ですが。
錦玉羹は、寒天を用いた和菓子の一つ。色づけた色彩がそのまま反映されやすく、季節を問わず和菓子屋さんでも取り入れられるお菓子。
それゆえにお店それぞれの個性や特性を反映しやすく、色の層を重ねたり、味わいに差をつけたり、中に別な素材を入れたりとバリエーションも豊富。
この度の「おぼろ月」は、どこかぼんやり霞がかったように梅の錦玉羹から透ける黄身餡が、湿度の高い夜に昇るお月様のような気がして、丁度今頃の季節に恋しくなる味わいと夜空が一致するのも不思議な感じで面白いな、などと物思いにふけっていました。
朝を待たずに、ものの数分でお皿の上の月は体内へ沈んでしまったのでもうひとつ。