キュンと甘酸っぱい塩檸檬。清月堂本店さんの銘菓「おとし文」で夏限定の凛とした風味を楽しんで
創業1907年。銀座7丁目に本店を構える「清月堂本店」さん。創業時、まだ今の銀座7丁目が、京橋区木挽町と呼ばれていた頃から変わらずその地で商いを続けていらっしゃる和菓子屋さんです。
また、東京国税局などのオフィスビルや、新橋演舞場といった様々な関係者の方が出入りなさる立地ということもあり、御取引先や上客とのご挨拶の際のお手土産やご進物などにも多用されるほど信頼の厚い老舗です。と申しますのも、清月堂本店さんは銀座で創業なさった和菓子屋さんのなかでは最も古い歴史を持つお店。近隣で栄えた芸能文化とは切り離せない時を共に過ごしてまいりました。
清月堂本店さんには季節の和菓子だけではなく、銘菓も複数ございますが、その中のひとつが「おとし文」。そのおとし文の季節限定品「凛」をご紹介。
焼き菓子でありながら、優しい金糸雀色の檸檬の色合いが爽やかに映え、夏らしい一品。茹でた卵の黄身を裏ごしし、さらにふるいにかけてから白餡と混ぜ合わせることで、ふんわりとかつ黄身の濃厚なコクが引き立つほろほろっとした黄身しぐれ。その中に包まれているのが、ほんのり塩気がきいた檸檬餡と、やや大胆に刻まれた檸檬の果皮。この組み合わせがまた尾を引く美味しさで、檸檬の酸味・苦味・香り、そこに白餡の甘味と塩気が加わることで、檸檬の持ち味をぐっと引き立てながらあんことしての美味しさも兼ね備えた存在に。
こっくりとした黄身の旨味と、檸檬餡の甘酸っぱい爽やかさの組み合わせは、どこ和洋折衷な味わいです。
爽やかな清流の流れか、それとも雲一つない青空でしょうか。爽やかな水色のお箱には、眩しい檸檬と爽やかな緑色の凛の文字が。夏場は焼き菓子を遠ざけてしまいがちですが、その季節の色彩が魅力的に感じられるようなデザインですと、ついつい手に取ってしまいますよね。
そうそう、こちらのおとし文。なんでも、「身分違いの御家人に恋をした街娘が、したためた恋文を渡せないままくしゃくしゃに丸め、川に投げた。」という淡く儚い、恋の街銀座らしいともいえる逸話があるとのこと。
今回の夏季限定の塩檸檬味は、身を焦がすような切なさではなく、甘酸っぱいひと夏の思い出の恋物語でしょうか。