【能登半島地震】台湾救援隊160人の待機を解除、日本側の要請なく 被災地では未対応の救助要請多数
能登半島地震の発生を受けて、救出活動のために待機していた台湾の救援隊が1月3日、待機態勢を解除していたことがわかった。現地メディアが報じた。救援隊は、地震発生直後からいつでも出動できるよう待機していたが、2日経っても日本政府から派遣要請がなかったためとみられる。一方、被災地では「壊滅的な被害」(珠洲市長)を受け、未対応の救助要請も多数残されているとされ、被害の全容は明らかになっていない。
最大震度7の地震が発生したのは1月1日午後4時10分。それから1時間足らずのうちに、台湾の蔡英文総統は日本へのお見舞いと支援の申し出を表明。その後、アメリカ、イギリス、フランス等からも支援の用意があると相次いで表明されたが、台湾は地震発生まもない同日午後8時前に、消防署の「特種救援隊」の出動準備を完了させていた。
発表によると、160名の捜索救助隊員(医師4名、看護師4名、構造技術者1名を含む)、捜索救助犬4名、国際人道救助準備のための装備を整え、待機体勢に入っていたという(救援隊のFacebookページ、消防署のプレスリリース参照)。
救助要請があればチャーター便で救助に向かい、救出活動を尽くす用意があるが、日本側の要請はまだ来ていないとして、待機していた。
ところが、現地メディアの報道によると、1月3日午後2時(日本時間午後3時)、待機態勢を解除して通常業務に戻るよう指示があった。日本側に問い合わせたところ、救助の必要がないことを確認したため、としている。
まだ公式発表は確認できないが、2日近く経っても日本側の要請がなく、その意向もないと判断し、解除した可能性がある。(このあと追記あり)
日本の災害対策基本計画では、海外の支援受け入れ方法などについて関係省庁であらかじめ定めておくものとされている。
過去には、東日本大震災で、台湾を含め、海外の救助隊を受け入れた実績がある(外務省)。熊本地震では在日米軍や韓国から物資輸送などの支援を受け入れた(外務省)。
【追記】
台湾の外交部は1月4日、被災地支援のため6000万円の寄付と一般からの寄付金受付口座の解説を発表した(フォーカス台湾)。岸田首相は4日午後の記者会見で、受け入れ態勢の構築等の理由から、海外からの人的・物的支援の受け入れは一律に断っている状況だと説明した。
さらに台湾の外交部は同日、日本側が「断った」との表現は日台双方の調整の事実と合致せず、公平でないとのコメントを発表するともに「今後、日本側からのニーズがあれば台湾は全力で支援を提供する」とも語ったという(フォーカス台湾)。このタイミングでは日本側の要請がなかったことを事実上認めたといえる。(追記ここまで 2023/1/4 22:00更新)
輪島市・珠洲市で救助要請の未対応が多数
被災地の被害状況は、交通・通信網の寸断や、孤立地域が多数発生していることもあって、全容は明らかになっていない。
「壊滅的な被害」があったとみられる珠洲市では、3日朝の時点で、救助要請のうち72件の対応ができておらず、「水や食料が足りず、地震から40時間以上たっても被災者1人にパン1個しか配れていない」と市長が訴えている(毎日新聞)。また、輪島市でも、3日午後5時の時点で、200件以上の救助要請があると市長が明らかにしていた。
こうした市街地は交通が寸断されているわけではなく、アクセスはできる(石川県道路状況・トヨタ通れた道マップ)。それ以外に、交通・通信網が断たれた孤立地域が多数ある。NHKによると、3日午後8時現在、1000人超が孤立地域に取り残されているとみられる。
今後、現時点で発表や報道がされているよりも被害状況が拡大する可能性がある。