鳥山明氏の「私は絶対に、パチンコに作品を売ったりしません」発言は根拠不明。訃報後、SNSで拡散される
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/shinoharashuji/01694169/title-1709969425533.jpeg?exp=10800)
3月8日に訃報が発表された故・鳥山明先生が、過去に「私は絶対に、パチンコに作品(ドラゴンボール)を売ったりしません」と発言していたとされる内容が拡散していますが、根拠不明の情報のため注意してください。
「自分の子どもを賭博屋に売る人間がいますか?」発言が拡散
SNSで拡散していた投稿は2つあり、1つは「鳥山明氏が生前に『子供のヒーローが賭博に使われるのは駄目だ』と断固反対していた」というもの(400万回以上の表示まで確認。現在は削除済み)。
もう1つはまとめサイトのものと思われる「鳥山明氏が『自分の子どもを賭博屋に売る人間がいますか?』と発言していた」と受け取れる部分のキャプチャ画像です。こちらは500万回以上も表示されており、現在も削除されずに拡散し続けています。
しかし、いずれの内容も情報元は匿名掲示板『2ちゃんねる』の書き込みであり、根拠不明です。
2005年と2009年の2chの書き込みが拡散して真実に?
元となっている書き込みは、2005年と2009年に『2ちゃんねる』に投稿された以下の書き込みです。
■2005年の書き込み
鳥山「この前もパチンコ会社からドラゴンボールで作らせてくれってきましたよ(笑)でも、きっぱりと断りました」
─なぜですか?
鳥山「私は自分のキャラクターが、パチンコという大人の賭博に使われるのが我慢ならないんですよ。漫画を大人の賭博に使って、お金のために誇りを捨てる人たちがたくさんいる」
─たとえば誰ですか?
鳥山「誰でしょう?(笑)たくさんいるじゃないですか。私は絶対に、パチンコに作品を売ったりしませんよ。だってそうでしょう、自分の子どもを賭博屋に売る人間がいますか?」
ニダー速報 ドラゴンボールの朝鮮玉入れがない理由
■2009年の書き込み
おいおい大丈夫なのかお前ら。ていうかマロン住人。
ここまでソース一個もなしとかありえんだろ。
まあ>>1も微妙に(ていうか大幅に)いじってあるんだけど。
確認できるのは「寺田克也全部―寺田克也全仕事集―」収録の鼎談だな。
424頁中段から。
捏造とか抜かしてたマヌケは今すぐ買って十回読め。
以下抜粋。
鳥山「こないだも某パチ●コ会社から来たんですよ。ドラゴンボールでパチ●コ台作らせてくれって。
まあその場は忙しいって切って、後日担当を通じてキッパリと(笑」
寺田「断るの苦手ですもんね、鳥山さん。」
鳥山「勘弁してくれよというね。やっぱりイヤじゃないですか。
子供たちのために、ためにって言ったら押し付けがましいんですが、
そういうキャラクターが、パチ●コはねえだろっていうね。」
―やはり抵抗が?
鳥山「そりゃそうでしょ。自分の子供をサ(検閲)売るみたいなもんじゃない。」
寺田「さらりと危ない発言が(笑)。でも本当そうですよね。
まあ俺なんかそのサ(検閲)を楽しんでるんですけども(苦笑」
この本は他にも金子一馬との対談とか載っててえらく豪華なんだが
なぜか「ペインタボン!」の大友克洋対談ばかり取り沙汰されるんだよな。
買うのがそういう層だってことか・・・。
鳥山明「私はパチンコに作品を売ったりしませんよ」 : ゴッド速報(人気アニメまとめサイト)
まず、2009年の書き込みについては『寺田克也全部』が298ページまでしかなく、情報元とされている“424ページ”が存在しないためデマだと判断できます。
念のため実際に『寺田克也全部』を取り寄せて調べてみました。
![『寺田克也全部』。筆者撮影。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/shinoharashuji/01694169/image-1710580412992.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
確認したところ、そもそもこの本はイラスト集であり「鼎談(ていだん)」や対談集と呼べるようなページはありません。
鳥山明先生が登場するページは以下に紹介するようにありましたが、このイラストだけです。
![『寺田克也全部』に登場する鳥山明先生。『寺田克也全部』より筆者撮影。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/t/iwiz-yn/rpr/shinoharashuji/01694169/image-1710580559785.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
この本については完全にデマと判断して良いでしょう。
もう1つの2005年の書き込みについては残念ながら確認できる情報がないのですが、鳥山明氏が普段使っている一人称が異なっています。
書き込みでは「私」と発言していますが、鳥山明氏は自分のことを「僕」と言います。
例えば1983年に『徹子の部屋』に出演したときは
「僕より年上で」
鳥山明さん 41年前に「徹子の部屋」に漫画家の妻と“共演” 長者番付1位、結婚…飾らず語っていた素顔(スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース
と、「僕」と発言していました(こちらは映像でも確認済みです)。
また、2013年の野沢雅子さんとのインタビューでも
鳥山さん:僕が言うのもおこがましい。
鳥山明さん×野沢雅子 2013年の秘蔵対談「悟空を描いていると野沢さんの声しか浮かばない」(めざましmedia) - Yahoo!ニュース
と、ここでも「僕」だと発言していました。
そして2023年に週刊文春がインタビューした際も
「僕は、軽口叩いて結構失敗してるんで……」
(3ページ目)《追悼・鳥山明》「僕は、軽口叩いて結構失敗してるんで」巨匠とは思えぬ気さくさで…“集英社「ドラゴンボール室」室長独立騒動“について「週刊文春」記者の直撃に生前語っていた“本音” | 文春オンライン
と、一貫して「僕」が使われています。
2005年の2ちゃんねるの書き込みはなぜか「私」になっており、かなり信憑性が低いと言えます。
鳥山明氏がドラゴンボールのパチンコ化に反対していたのは(おそらく)本当
ただ、鳥山明氏が『ドラゴンボール』のパチンコ化に反対していたというのはおそらく事実です。
現在までにパチンコ化されていないということ。
そして2010年の週刊東洋経済にメーカー幹部の発言として
目ぼしい版権はすでに遊技機化され、パチンコに抵抗の強い版権保有者も少なくない。ある遊技機メーカー幹部は「超人気アニメの『ドラゴンボール』は各社が打診したが、原作者の鳥山明氏が首を縦に振らない」と明かす。
スペシャルリポート02--過熱する版権争奪戦 パチンコ産業の憂鬱 2010.02.13 週刊東洋経済 第6246号 38~39頁
と、鳥山明氏ご本人の発言ではないものの、「鳥山明氏が承諾しないため『ドラゴンボール』のパチンコ化ができない」と語られています。
鳥山明氏がパチンコ嫌いというわけでもない
そのほか、こうした情報をもとに「鳥山明氏がパチンコを嫌っていた」とする憶測も流れていますが、鳥山明氏はデビュー当時のジャンプで「アメリカン・コミックのすきなパチンコ狂(きょう)。とんでるディスコボーイをヨロシク!」と自己紹介しており、このときはパチンコ好きだったことが分かります。
現在も好きなのか嫌いなのかそういった情報はありません。
分かっていることは
- 「自分の子どもを賭博屋に売る人間がいますか?」発言は根拠不明
- メーカー取材では原作者は『ドラゴンボール』のパチンコ化に反対していた
- デビュー当時はパチンコが好きだと自己紹介していた
です。
いずれにせよ、故人の意思を勝手に決めつけたり、そうした内容を拡散したりする行動は慎むことをおすすめします。
2024年3月16日18時13分追記
投稿の情報元とされていた書籍『寺田克也全部』を入手できたため、鳥山明先生との鼎談が掲載されていない事実を確認したことを追記しました。