鳥山明氏の「私は絶対に、パチンコに作品を売ったりしません」発言は根拠不明。訃報後、SNSで拡散される
3月8日に訃報が発表された故・鳥山明先生が、過去に「私は絶対に、パチンコに作品(ドラゴンボール)を売ったりしません」と発言していたとされる内容が拡散していますが、根拠不明の情報のため注意してください。
「自分の子どもを賭博屋に売る人間がいますか?」発言が拡散
SNSで拡散していた投稿は2つあり、1つは「鳥山明氏が生前に『子供のヒーローが賭博に使われるのは駄目だ』と断固反対していた」というもの(400万回以上の表示まで確認。現在は削除済み)。
もう1つはまとめサイトのものと思われる「鳥山明氏が『自分の子どもを賭博屋に売る人間がいますか?』と発言していた」と受け取れる部分のキャプチャ画像です。こちらは500万回以上も表示されており、現在も削除されずに拡散し続けています。
しかし、いずれの内容も情報元は匿名掲示板『2ちゃんねる』の書き込みであり、根拠不明です。
2005年と2009年の2chの書き込みが拡散して真実に?
元となっている書き込みは、2005年と2009年に『2ちゃんねる』に投稿された以下の書き込みです。
■2005年の書き込み
■2009年の書き込み
まず、2009年の書き込みについては『寺田克也全部』が298ページまでしかなく、情報元とされている“424ページ”が存在しないためデマだと判断できます。
念のため実際に『寺田克也全部』を取り寄せて調べてみました。
確認したところ、そもそもこの本はイラスト集であり「鼎談(ていだん)」や対談集と呼べるようなページはありません。
鳥山明先生が登場するページは以下に紹介するようにありましたが、このイラストだけです。
この本については完全にデマと判断して良いでしょう。
もう1つの2005年の書き込みについては残念ながら確認できる情報がないのですが、鳥山明氏が普段使っている一人称が異なっています。
書き込みでは「私」と発言していますが、鳥山明氏は自分のことを「僕」と言います。
例えば1983年に『徹子の部屋』に出演したときは
と、「僕」と発言していました(こちらは映像でも確認済みです)。
また、2013年の野沢雅子さんとのインタビューでも
と、ここでも「僕」だと発言していました。
そして2023年に週刊文春がインタビューした際も
と、一貫して「僕」が使われています。
2005年の2ちゃんねるの書き込みはなぜか「私」になっており、かなり信憑性が低いと言えます。
鳥山明氏がドラゴンボールのパチンコ化に反対していたのは(おそらく)本当
ただ、鳥山明氏が『ドラゴンボール』のパチンコ化に反対していたというのはおそらく事実です。
現在までにパチンコ化されていないということ。
そして2010年の週刊東洋経済にメーカー幹部の発言として
と、鳥山明氏ご本人の発言ではないものの、「鳥山明氏が承諾しないため『ドラゴンボール』のパチンコ化ができない」と語られています。
鳥山明氏がパチンコ嫌いというわけでもない
そのほか、こうした情報をもとに「鳥山明氏がパチンコを嫌っていた」とする憶測も流れていますが、鳥山明氏はデビュー当時のジャンプで「アメリカン・コミックのすきなパチンコ狂(きょう)。とんでるディスコボーイをヨロシク!」と自己紹介しており、このときはパチンコ好きだったことが分かります。
現在も好きなのか嫌いなのかそういった情報はありません。
分かっていることは
- 「自分の子どもを賭博屋に売る人間がいますか?」発言は根拠不明
- メーカー取材では原作者は『ドラゴンボール』のパチンコ化に反対していた
- デビュー当時はパチンコが好きだと自己紹介していた
です。
いずれにせよ、故人の意思を勝手に決めつけたり、そうした内容を拡散したりする行動は慎むことをおすすめします。
2024年3月16日18時13分追記
投稿の情報元とされていた書籍『寺田克也全部』を入手できたため、鳥山明先生との鼎談が掲載されていない事実を確認したことを追記しました。