前日までの予約必須!江戸創業最古の茶席菓子処「越後屋若狭」さんの三月の上生菓子と桜餅を頂戴しました
江戸幕府と共に急激に発展を遂げた、現在の東京の文化。芸術文化や交通利便などその変化は多岐にわたると思いますが、やはり興味があるのは食文化。
京都から江戸へと移ってきた和菓子屋さんもありますが、江戸創業の名店も勿論ございます。
その中でも最古のお店と呼ばれているのが、東京都墨田区にお店を構える1740年頃創業といわれる「越後屋若狭」さん。集合住宅やローカルなスーパーが建ち並ぶアットホームなエリアにひっそりと佇む静謐な外観のお店です。
越後屋若狭さんの大きな特徴のひとつとして、事前予約必須というところがあるのではないでしょうか。お作りしていらっしゃるのも、練り羊羹と季節の上生菓子2種類、そして桜餅などの四季のお菓子。とはいえ、そのひとつひとつに温もりも拘りもぎゅっと凝縮していらっしゃるような気がするのです。
今回は越後屋若狭さんの春のお菓子、「山桜」「井出の里」「桜餅」をご紹介。
練り切り餡に蓬を合わせた「山桜」は、山間にポッと浮かぶ桜の花を見つけたような、少し気持ちが上向きになるような意匠。絞りの技法を用いた上生菓子は、粒子の整った蓬餡と絞りが織り成す職人技による陰影に美しさを見出して。
練り切り餡が角が丸い甘味なので、蓬の爽やかな息吹が心地良い食べ口。中餡のこし餡の量は控えめですがそれがまた絶妙なバランスなのです。
「井出の里」は、京都府の井出町という町からきています。と申しますのも、4月から鮮やかな黄色い花を咲かせる山吹の名所としても知られる井出町は、井出といえば山吹という程和菓子の世界ではセットになっているといっても過言ではない組み合わせ。
若々しい草花と共に風にそよぐ満開の山吹に彩られた野山、思わず目を閉じて思い浮かべてしまうほど体に染みていく優しい甘味です。
型に入れて圧をかけてた意匠ですが、不思議と適度な空気感をも感じられます。側面の整った切り口も粋ですね。
春といえば「桜餅」。越後屋若狭さんでは道明寺仕立てのご用意です。贅沢にも桜の葉を三枚使用し、愛おしさをも感じられるような包み方をされたお餅はとてもしっとり。潤沢な水分量を保ち、道明寺ならではの粘り気と弾力を味わうたびにほろりほろりと一粒ずつの存在感も確かに感じられます。中餡のこし餡も淡白でありながら、確固たる小豆の旨味や香りの余韻を楽しませてくれる凛とした存在感を放って。
こういった複数桜の葉を使用している場合、葉がすぐにはがれるかどうかでも異なりますが、越後屋若狭さんのようにするりと道明寺から離れる場合は葉を食べず、時折塩気を挟む程度にかじっています。
完全予約制というとお堅いイメージがあるかと思いますが、お電話でご用意されている上生菓子がどのようなものか優しく丁寧に教えてくださりますのでご安心を。
当日中のお日保ちではございますが、大切な方への東京土産としてもご用意なさってはいかがでしょうか。
季節の移ろい、そして彩を江戸の甘美な想い出と共に是非。
最後までご覧いただきありがとうございました。
<越後屋若狭>
東京都墨田区地寄1-8-4
03-3631-3605
10時~17時
定休日 日曜