楽曲「W/X/Y」が6億回再生を突破。時代を導くアーティスト・Tani Yuukiの原動力と今後
楽曲「W/X/Y」が6億回再生を突破するなど、デビュー以来大きなうねりを作り続けるシンガーソングライターのTani Yuukiさん(25)。今月からホールツアーもスタートし勢いは増すばかりですが、歩みの根底にある思いとは。
曲にすると伝えられる言葉
どうやら、小さな頃から歌うのは好きだったみたいでして。物心つく前から、よく歌う子だったとは親に聞いていました。
ショッピングセンターで迷子になったりしても、それでも歌っていたみたいで、見つけやすかったとも聞きました(笑)。
母親も父親も音楽をよく聞く人で、母が邦楽を、父が洋楽をよく聞いていたんです。その影響で、自然と音楽が耳に入る生活になっていて、絢香さんとか「ゆず」さんとか「コブクロ」さんの曲を聞いていたみたいです。
そんな感じで音楽は好きだったんですけど、大きな転機になったのは中学時代だと考えています。病気をして、思うように日常生活を送れなくなったんです。
そんな中で言葉としては吐き出せない思いがたまっていく。普通にしゃべる言葉には置き換えられないんだけど、ギターを持って音楽にすると吐き出せる。今の自分がやっていることの原点というか、曲という言語を使うと言えないことも言える。その根っこができたのが病気をした中学の頃だったと思いますね。
そこから音楽の専門学校に行かせてもらって、本格的にこの業界に目を向けるようになっていきました。
言葉にできないことでも、音楽に乗せると吐き出せる。それができた時に、スッと気が楽になったんです。まさに、吐露できたというか。
なので、自分にとって曲というのは「自分の思いを映すもの」。そういう存在でもあったんです。
先月出した曲のタイトルを「HOMETOWN」にしたのも、当時ガツガツ曲を作っていた「この思いを吐き出したい」「分かってもらいたい」という欲をさらけ出せていた当時に立ち返る。そういう意味を込めて、そのタイトルにしたんです。
吐き出せないものを曲にして、それが誰かに届いてくれたらうれしい。自分がいろんなアーティストの方の曲に何かを感じたように、誰かが何かを感じてくれたら。それが自分が歌う中の野望でもあったんです。
だから、自分自身が注目されるというよりも、曲を注目してもらいたい。変に控えめになっているわけではなく(笑)、純粋にその思いにもつながるんです。
自分自身よりも曲
そんな中「W/X/Y」の再生数が6億回突破したというのは本当にありがたいことだと思っています。
僕が言葉にできないことを曲として吐き出す。その時点で、この曲は僕自身と結びついているというか、僕の写し鏡みたいなもの。
それがいろいろな人に聞いてもらうことによって、その人たちの日常に浸透していく。ライブをしたら、自分のことのように口ずさんでくださる。そんな光景を目の当たりにすると、この曲はもう僕のものだけではないということを痛感しますし、誰かの日常になったんだということも思いました。
それを感じるのがライブという場ですし、曲って成長するものだとも感じています。音源は音源のままだけど、お客さんの前で歌うことによって変化が生じていく。それも感じますね。
自分の思いとしてできたものが、多くの人のものになり、また変わっていく。それがうれしいことでもありますし、本当に僕の中では「注目してもらいたいのは曲」という思いなんです。曲を好きになってくれる。僕自身のことを好いてくださるよりも、そっちのほうがうれしいですしね。
…とはいえ、承認欲求もあるんで(笑)、「この曲って、誰が作ったの?」となることもちょっと悔しい部分もあるので、こちらが歌っているということもちょっとは曲の味わいとして知っておいてもらえるとうれしくもあるんですけどね。
そして、これは究極の目的地だとも思うんですけど、僕がこの世からいなくなっても曲が歌い続けられる。そんな曲を残したいと思っています。
この答え合わせは自分が生きている間には絶対にできないんですけど(笑)、いつの日かそれが現実のものとなる。そんな日に向けて、積み重ねを続けていきたいと思っています。
■Tani Yuuki(たに・ゆうき)
1998年11月9日生まれ。神奈川県出身。2020年「Myra」をリリース。「LINE MUSIC」「Spotify急上昇チャート」などで1位を獲得する。21年に出した「W/X/Y」が6億回再生を突破するなど一躍注目のアーティストとなる。22年の「日本レコード大賞」で新人賞を受賞。5月8日にEP「HOMETOWN」をリリースした。ホールツアー「HOMETOWN」を開催中。