Yahoo!ニュース

インテルは監督を続投させるべきか? ピオリの6つの功罪

中村大晃カルチョ・ライター
15日のミラノダービーで長友佑都に指示を出すピオリ監督(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

インテルのステファノ・ピオリ監督が瀬戸際に立たされている。わずか1カ月で、評価は急降下した。クラブは来季も続投させるべきなのか。イタリア『ガゼッタ・デッロ・スポルト』が20日、ピオリの功罪に触れた。

◆当初は再建に向けて快走

開幕直前にロベルト・マンチーニが退任したインテルは、セリエ初挑戦の後任フランク・デ・ブールのもとで低迷。クラブは11月に見切りをつけ、2014-15シーズンにラツィオをチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得へ導いたピオリに再建を託した。

初采配のミラノダービーでは、アディショナルタイムの劇的弾で勝ち点1を獲得。続くフィオレンティーナ戦では初勝利を手にした。ヨーロッパリーグ(EL)ではグループステージ敗退の屈辱を回避できなかったが、12月8日のスパルタ・プラハ戦から年をまたいで公式戦9連勝を記録。崩壊寸前だったチームを着実に立て直し、ピオリは一気に評価を高める。

◆CLどころかELまで危機に

大勝した3月のカリアリ戦(5-1)やアタランタ戦(7-1)まで、CL出場権獲得への期待を膨らませていったピオリ・インテルだが、以降の4試合で2分け2敗と停滞してしまう。それも、黒星を喫した相手は、すでに目標がない中位サンプドリアと、降格圏に沈むクロトーネだった。

サンプに勝っていれば、インテルは残り8試合で3位ナポリに勝ち点6差とCLへの切符を手に入れるのも不可能でない状況に持ち込めていた。だが、2連敗でCL復帰の夢が泡と消えたどころか、ミランに抜かれて7位に転落。EL出場にも黄信号が灯っている。

長友佑都が10試合ぶりに先発出場した15日のミラノダービーでも、終盤まで2点をリードしながら追いつかれて勝ち点2を落としたことで、インテルはミランを抜き返すことができなかった。このままでは、来季、インテルは欧州の舞台に立つことができない。

◆取りざたされる後任候補

当然、続投問題に発展するのは避けられない。『ガゼッタ』によれば、インテルがピオリ続投の条件としているのは、ELストレートイン。現状ではリーグを5位でフィニッシュする必要がある。

後任候補リストに並ぶのは、アントニオ・コンテ(チェルシー)、ディエゴ・シメオネ(アトレティコ・マドリー)、ウナイ・エメリ(パリ・サンジェルマン)、ルチアーノ・スパレッティ(ローマ)、レオナルド・ジャルディム(モナコ)、マウリシオ・ポチェッティーノ(トッテナム)、マルコ・シウバ(ハル・シティ)と名将たちばかりだ。

◆3つの“罪”

ピオリは本当に続投に値しないのか。『ガゼッタ』は、「直近の停滞」「大一番での弱さ」「遠ざかったCL」の3つが指揮官の逆風になると指摘する。

直近4試合は、守備のほころびが露呈(トリノ戦)、前半圧倒しながら後半に逆転負け(サンプドリア戦)、試合への入り方を間違えたうえに修正できず(クロトーネ戦)、逃げ切れずに追いつかれてのドロー(ダービー)と、いずれも印象が悪い。

大一番の弱さは、結果を見れば一目瞭然だ。ナポリ、ユヴェントス、ローマの3強にはいずれも黒星。ミランとのダービーでも、2戦ともドローで勝てていない。コッパ・イタリアでも、ホームでの一発勝負にもかかわらずラツィオに準々決勝で敗退させられた。

CLについては、就任時から3位との勝ち点差が8ポイントから14ポイントと広がっている。

◆3つの“功”

だがもちろん、ピオリのもとでインテルが復調したのも事実だ。『ガゼッタ』は、指揮官を擁護する理由に「絶望からの出発」「一定の成績」「一部選手の再評価」を挙げた。

前述のように、ピオリ就任時のインテルは崩壊寸前だった。肉体的にも精神的にもボロボロだった選手たちを盛り立て、一時はCL出場権獲得の夢を取り戻させた手腕は称賛に値する。

また、ピオリが指揮を執ったリーグ戦20試合で、インテルは勝ち点39を記録した。ユヴェントス(50)、ナポリ(49)、ローマ(46)の3強には及ばないが、ラツィオと並ぶ4位の数字だ。

さらに、前任者のもとで不遇をかこっていたジョフレイ・コンドグビアや、マルセロ・ブロゾビッチ、ジェイソン・ムリージョといった選手たちは、ピオリ就任以降に市場価値を取り戻した。また、1月に加入した若手ロベルト・ガリアルディーニをすぐに中心に据え、飛躍させた功績は大きい。

◆復活必須の来季だけに…

シーズン途中の就任だったにもかかわらず、一定の結果を残したピオリをクビにするのは、不当だという声も少なくない。一方で、来季は失敗が許されないだけに、もっとカリスマ性のある指揮官が必要という意見もある。来季は4位まで翌シーズンのCL出場権を得られるからだ。

今季3冠の可能性もある王者は盤石の強さを誇り、ローマとナポリも引き続き上位を競い続けるだろう。中国資本への売却が決まった同じ街のライバルも、大型補強のうわさが絶えない。4位争いが激化必至の来季、インテルのベンチにピオリは座っているのだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

中村大晃の最近の記事