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試合前にSNSで酷評、レジェンドからミスの指摘も…長友佑都、ダービーの評価は?

中村大晃カルチョ・ライター
ミラノダービーでロカテッリとボールを争う長友佑都(写真:ロイター/アフロ)

史上初となるランチタイムのミラノダービーで、長友佑都は10試合ぶりに先発出場した。約2カ月半ぶりのフル出場は、再評価につながったのだろうか。

◆メモリアルダービーでのサプライズ起用

現地時間15日に行われた通算218回目のダービーは、ミランとインテルの長い歴史においても特別な一戦だった。直前にミランのクラブ売却が正式に決定し、両クラブが中国資本となって初のダービーだったからだ。

アジア市場を意識して初のランチタイム開催となった今回の一戦は、デビューを飾る新生ミランにとって存在感を示す重要な舞台だった。一方で、ヨーロッパリーグ出場権最後の一枠となる6位に位置するミランに勝ち点2差の7位インテルにとっても、勝利が必須の一戦だった。

そんな大一番にインテルのステファノ・ピオリ監督が背番号55を起用したのはサプライズだった。昨年11月の同監督の就任以降、長友はリーグ戦19試合で5試合しか出場していなかったからだ。先発はわずか2試合。1月28日のペスカーラ戦を最後に、スタメンからは遠ざかっていた。

◆SNSでは不満爆発

長友抜擢が今季のミランの主軸であるスソ対策だったことは明らかだが、ピオリ監督になってからレギュラーを務めていたクリスティアン・アンサルディを差し置いての起用に、イタリアのツイッター上では指揮官への不満が爆発した。

「マンマミーア、長友だ!」

「長友起用というだけで心配だ」

「長友は速いかもしれないけど守れない」

「悪いが長友スタメンはインテリスタも笑う」

「4月1日じゃないぞ。長友出場はジョークだろ?」

「長友VSスソは吹き矢で戦車を止めようとするようなもの」

「どんなおかしな理由で長友がミラノダービーに出るんだ?」

「長友スタメンは、ピオリが6月のバカンスをもう予約したってことだ」

「北朝鮮の核戦争準備と、ダービーで長友先発。どちらのほうが悪いのか…」

「ようやくダービーへの心の準備ができ、長友がプレーすると知ったら死にたくなる」

もちろん、声援もあったが、「チャイナダービー」にスポットライトが当てられていたことや、復活祭の週末だったこともあり、背番号55の起用はアジア向けという揶揄する声も次々に寄せられた。

「商売の前にサポーターにリスペクトを」

「アジアの観客を喜ばせるためだけの起用」

「スポンサーの力が監督を上回るとこうなる」

「中国語で『ふざけんな』ってなんていうんだ?」

「今日のピッチに長友が立つのは不名誉なマーケティング作戦」

「キックオフ時間はいい。すべてアジア市場向けでいい。でも、長友はダメだ」

「あいつらは満足だろう。ウチに中国人選手はいないけど、日本人も同じことだ」

「長友を冬眠から目覚めさせた理由は、中国でもダービーを見るというだけか?」

「長友出場、デ・シリオ主将。明日はキリスト復活。史上最も悲しいダービーでこれ以上の災難があるか?」

「頼むから誰かピオリに説明してくれ。長友は日本人で、中国人じゃないから、絶対起用しなきゃいけないわけじゃないとな」

前半のファウルスローも、サポーターの怒りを増幅させたようだ。インテルが2点を先行したにもかかわらず、長友への皮肉はわずかながらも続いた。

「スローインもできないのか」

「少年チームでもやらないぞ」

「セリエAに7年いても長友はスローインひとつできない」

「何より最高なのはピッチに長友がいながら勝っていることだ」

「長友が出ているのに勝っている。みんな、復活祭の奇跡だ!」

「かわいそうに、もう試合に慣れていないんだ。セリエAレベルじゃない」

「長友はすべての若いサッカー選手の希望だ。彼でもセリエAで8年やれたのならね」

「まだ長友がプレーしているということだけ言っておく。つけ加えることはない。サッカーは死んだ」

◆徐々に増す評価の声

しかし、長友はスソ封じのタスクを懸命にこなし、終盤まで2点のリードを保つことに貢献。ツイッターでも、相変わらず続く批判の一方で、徐々に評価する声も増えていく。

「長友は戦士だ」

「長友>デ・シリオ」

「長友がスソを消している」

「ミラノダービーにしっかり備えてきた長友に称賛」

「長友にも拍手。何世紀も凍らされていたのに非常に正確」

「スソに怒る長友の気迫に、オフサイドを求めて手を上げるバレージを思い出した」

◆レジェンドからは手厳しい批判

そのままインテルが逃げ切れば、長友の評価が一気に高まることも予想された。だが83分、これまで抑えていたスソにアシストを許してしまう。

インテルのレジェンドで『スカイ』のコメンテーターであるジュゼッペ・ベルゴミは、のちに同局の番組のなかで、この場面を「長友のミス」と断じた。スソの左足を警戒した対応は正しかったが、間を空けすぎたという。

元ユヴェントスのマッシモ・マウロは、後方にいたジョフレイ・コンドグビアが声をかけ、長友をフォローすべきだったとコメント。ジャンルカ・ヴィアッリは、ペナルティーエリア内の人数がそろっていたにもかかわらず失点したことの問題も指摘した。

だが、ベルゴミは長友のスソへの対応があからさまだったと批判を続けており、元ブラジル代表のレオナルドもスソに対してもっと距離を縮めておくべきだったと批評している。

◆試合後には「気に入った」というファンも

終了間際のアディショナルタイムにも失点したインテルは、2-2と追いつかれて勝ち点2を落とした。アディショナルタイムのカウントが正しかったかどうかが議論の的となったこともあり、直前に激しいタックルを受けて倒れていた長友が「時間稼ぎ」をしたかも大きく騒がれている。

だが、久しぶりの起用だったにもかかわらず、スソが試合後に苦しんだことを認めるほどのパフォーマンスを見せたとあり、長友をたたえるツイートも見受けられた。

「今日の長友は良かった」

「驚きだけど、長友を気に入ったよ」

「書いていて驚くが、今日の長友は良いプレーをした」

「良かったところを見よう。長友はスソに対して良い仕事をした」

◆急上昇は難しいが一定のメディア評価

結果的に2失点に絡んだということもあり、残念ながら長友の評価が飛躍的に高まることはないだろう。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、「ダメージにはならなかったが、スソがダッシュできたときは明らかに苦しんだ。攻撃参加を試みたが、卓越した結果はなし。最後は苦しんだ」と及第点を下回る5.5点という評価だった。

しかし、『コッリエレ・デッロ・スポルト』(「1月以来の先発出場で恐るべきスソに応対。ペリシッチが助け、長友は切り抜けた」)や『コッリエレ・デッラ・セーラ』(「スソとオープンに対峙してこのうえなく恐ろしい力を抑えた。彼に関しては、ピオリ監督は正しかった」)は及第点の6点と評価している。

インテル専門サイトの『fcinternews』も「ペリシッチに手を貸しながらスソを抑えなければいけなかったが、それをやってくれた。人目を引くところはなかったが、しっかり応じてくれた」と、やはり6点をつけている。十分なパフォーマンスだったという見方は少なくないようだ。

◆今後の出場機会は…

6連覇&3冠が期待されるユヴェントスと比べると、一抹の寂しさを覚えずにはいられないミラノダービーではあったが、初の「チャイナダービー」というステージで、長友は一定のプレーを披露した。ただ、それが今後の出場機会につながるかどうかは不透明だ。今節の起用はあくまでスソ対策であり、これからも出番があるかどうかは分からない。

ミランを抜き返すことに失敗したインテルは、欧州への切符を失う危機にある。難敵フィオレンティーナに強豪ナポリと厳しい連戦を前に、崖っぷちに追いやられた指揮官は、背番号55に今後もチャンスを与えるだろうか。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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