北朝鮮が鉄道発射式弾道ミサイルを試験
9月15日に北朝鮮が短距離弾道ミサイル2発を発射しましたが、9月16日にその試験内容が公表されました。それは驚くべきことに鉄道発射式だったのです。
試験発射を視察したのは朴正天(パク・ジョンチョン)朝鮮労働党書記で、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記の視察はありませんでした。鉄道機動ミサイル連隊(철도기동미싸일련대)の検閲射撃訓練指導を行ったとあります。
鉄道発射式弾道ミサイルの試験発射の様子
推定ですが1台の貨車に2つのミサイルを向き合うように互い違いに搭載しているように見えます。発射されているミサイルの手前にある起立した棒状の物は、既に発射済みのミサイルのレールではないでしょうか? (追記:9月16日夜に朝鮮中央テレビで発射時の動画が放送され、実際に向き合うように互い違いに搭載されていたことを確認。)
参考:アメリカ軍のパーシングⅡRRの搭載方法
2つのミサイルを向き合うように互い違いに搭載する方式は、過去にアメリカ陸軍が計画していたパーシングⅡRR(パーシングⅡ小型版でINF条約の成立で不採用)で前例があります。
ミサイルの形式特定の問題
北朝鮮の鉄道機動ミサイル連隊が発射している弾道ミサイルは外観形状からイスカンデルの系統のように見えます。北朝鮮側の発表でも韓国軍の推定と同様の飛距離800kmであると説明されています。
比較:北朝鮮のイスカンデル系の弾道ミサイル
今回2021年9月15日の発射は装輪型移動発射機を使っていないので大きさの特定が難しく、2021年3月25日に発射された拡大型イスカンデルと同じ物かどうかははっきりとしません。
試験発射用の白黒塗装ではなく実戦仕様のオリーブドラブ色に塗られていることから、実戦配備済みの従来型イスカンデルの可能性がありますが、北朝鮮の従来型イスカンデルは2019年7月25日の試験発射で600km飛翔したのがこれまでの最長距離です(韓国軍が一時690kmと発表するも翌日に600kmに訂正)。
しかし今回は800kmも飛んでいるので、拡大型イスカンデルの弾頭重量を減らした試験である可能性が捨てきれません。北朝鮮の9月16日の公式発表では鉄道発射式を強調している一方でミサイルの種類の詳しい説明は無く、はっきりしたことがまだ言えません。
山間部の線路と数の多いトンネル
推定発射場所の平安南道・陽徳郡は山間部にあり、道路事情も悪く、弾道ミサイル車両のような大型車両が機動するには向いていない場所です。ただし中心部の付近に鉄道の線路があるのです。鉄道機動ミサイル連隊はこの線路を使いました。
https://www.google.com/maps/@39.2124833,126.6653916,3660m/data=!3m1!1e3!5m2!1e4!1e2(Googleマップ平安南道陽徳郡の線路)
この周辺から発射しています。発射の様子には山と木々とトンネルが映っているので、画像の下辺りから東方向の線路上になると思われます。なお鉄道機動ミサイル連隊は将来、旅団に拡大改編する方針が示されています。
※2021年9月15日午前7時57分、記事を修正。当初に終着駅と紹介したものは実際には山の裾の短いトンネルの入り口でした。