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男女どっちが魅力的?=セクハラ?性差別?虫の話なのでご容赦を

天野和利時事通信社・昆虫記者
中央上がフユシャクのメス、下がツマキチョウのオス、左右はそれぞれのオスとメス。

 虫の中にはオスとメスで見た目が大きく違うものが結構多い。春にだけ見られる虫では、ツマキチョウ(蝶)とフユシャク(蛾)がその代表だろう。

 虫好きの間では、こうしたオス、メスそれぞれの特徴が際立つ虫は人気が高く、「メスのふくよかさが魅力」とか「オスのりりしい姿が素敵」とか勝手に議論している。

 女らしさ、男らしさなどと言うと、性差別とか、セクハラとかの問題が出てくるが、虫の話なので、大目に見てもらえるだろうと思う。

 3月から姿を見せるツマキチョウの場合は、前翅の先に黄色の可憐な装飾を施したオスの方が、圧倒的に人気が高い。「ツマキチョウ」という名前自体、オスの特徴を言い表したものであり、人間界であれば「性差別だ」と言われるかもしれない。ツマキチョウのメスには、この黄色の装飾がなく、モンシロチョウと間違われることも多い。

ツマキチョウのオス(左)とメス(右)。メスはモンシロチョウのように見える。
ツマキチョウのオス(左)とメス(右)。メスはモンシロチョウのように見える。

 フユシャクの場合は、オス、メスの違いがもっと著しく、全く別の虫のように見える。フユシャクのオスは、立派な翅を持っていて、飛び回ることができるのだが、メスは全く翅を持たないものが多い。

 「翅のない蛾」という存在自体が面白いので、フユシャクの場合は、メスの方が圧倒的にファン層が広い。こうしたフユシャクのメスの中でも、特に人気が高いのは、12月末から2月に見られる「チャバネフユエダシャク」だ。大型で面白い白黒模様を持つチャバネフユエダシャクのメスは、この柄やふっくらとした姿が乳牛に似ていることから「ホルスタイン」の愛称で呼ばれる。これまた、人間界であれば「性差別、セクハラ」になるかもしれない。

ホルスタインの愛称を持つチャバネフユエダシャクのメス。
ホルスタインの愛称を持つチャバネフユエダシャクのメス。

フユシャクの仲間の交尾。翅があるのがオス、ないのがメス。
フユシャクの仲間の交尾。翅があるのがオス、ないのがメス。

 鳥の世界に目を移しても、オスとメスで色柄が全く違うものが多くいる。オシドリ、マガモなどのカモの仲間は、オスが美しいことで有名だ。小鳥では冬から春にかけてよく見られるジョウビタキもオスとメスで全く色柄が違う。ちなみにジョウビタキの「ジョウ」は白髪の意味で、オスの銀色の頭部に由来する呼び名だ。

ジョウビタキのオス(左)とメス(右)。
ジョウビタキのオス(左)とメス(右)。

(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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