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ミドル級のカネロがヘビー級のコバレフを衝撃KO スピードでパワーを制す

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

ラスベガスMGMグランド・ガーデンアリーナで、ボクシングWBO世界ライトヘビー級タイトルマッチが行われ、

王者のセルゲイ・コバレフ(ロシア=36)に、3階級王者のサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ=29)が挑戦した。

カネロは、今回勝利すれば4階級制覇となる。

それに加えてミドル級、スーパーミドル級のベルトも保持しているため、3階級同時制覇となり注目の試合となった。

ボクシングとリーチ

大きなブーイングのなか入場したコバレフに対し、大歓声のなか入場したカネロ。

今回の試合では、カネロがミドル級から体重を7キロあげて、ライトヘビー級の王者コバレフに挑戦するという事で大きな注目を集めた。

ゴングが鳴ってまず目についたのは、両者の体格差だ。

カネロが175cm(リーチ179cm)に対し、コバレフは182cm(リーチ184cm)。身長差は7cmもあった。

だが、実際に試合を見て数字以上の体格差を感じた。

私も現役時代、自分より身長が10cm以上高い選手と戦ったことがあるが、非常にやりづらさを感じた。

パンチが当たらないのに加えて、相手はパンチを打ち下ろしてくるため勢いが増す。

そのため、自分のパンチが当たり相手の攻撃を回避する「距離感を掴む」ことがポイントとなる。

試合の展開について

コバレフは体格を活かし、長いジャブをついてペースを握った。

カネロもプレッシャーをかけていくが、コバレフの距離感が絶妙なため、なかなか詰め切れない。

両者の間が空くとコバレフがすかさずジャブをつき、攻撃させる隙を与えなかった。

中盤。カネロもプレッシャーを強め、巻き返しを図る。ボディ打ちも織り交ぜ、カネロのパンチがヒットしていった。

コバレフも、前に出るカネロの圧力を感じ徐々に疲労していった。

コバレフはジャブで活路を見出そうとするが、カネロのパンチに力強さがあり、カネロがペースを取り返していった。

後半に入るとカネロが完全にペースを握り、コバレフにクリーンヒットを重ねていく。

そして迎えた第11R。カネロの右がヒットしてコバレフがよろける。そこに、追撃の左フックが決まり、トドメの右ストレートが入る。

コバレフが腰から崩れ落ち、ロープにもたれかかったところでレフリーが試合をストップ。

序盤は苦戦したカネロだったが、最後は衝撃的なKO勝ちでタイトルを奪取した。

持ち前のスピードとパワーを活かし、この階級でも戦えることを証明した。

今後のカネロに注目

カネロは今回の試合で、メキシコ人として4人目の4階級制覇を達成した。

しかも、ミドル級、スーパーミドル級、ライトヘビー級と3階級同時でベルトを保持することになった。

ボクシングは階級によって戦い方が変わる。

中重量級のミドル級を主戦場としていたカネロが、重量級のヘビー級で王者になるとは思いもしなかった。

カネロは今回の試合で3500万ドル(約37億8000万円)以上のファイトマネーを稼いだと言われている。

ボクシング界で最も稼ぐと言われるカネロ。彼と対戦を望む選手は多い。

今後どの階級を選択し、誰と戦うのかに注目が集まる。

しばらくは、ボクシング界もカネロというスターを中心に回っていきそうだ。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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