寄生虫か脳みそか、かなり不気味なトリノフンダマシ=昆虫(たまに蜘蛛)の超絶擬態を暴く⑦
トリノフンダマシ(鳥の糞だまし)という、ちょっとかわいそうな名前の蜘蛛(クモ)の仲間がいる。それほど鳥の糞に似ているわけではないが、蜘蛛には見えない。この仲間の中で、特に不気味な感じを与えるのは「オオトリノフンダマシ」だ。その姿は、寄生虫の巣窟、小動物の脳みそ、あるいはエイリアンの頭部のようにも見える。噛んだ後で丸めて捨てられたチューインガムのような、何か「汚いもの」的な感じがあるので、天敵生物はそんな「汚いもの」にはあえて近づきたくないと思うかもしれない。
一説では、オオトリノフンダマシは、カマキリの頭部に似ていて、敵を警戒させる擬態になっているとも言われる。
鳥の糞擬態という点では「オオ」の付かない「トリノフンダマシ」の方が上手だ。こちらはヌメヌメした感じや、未消化物が散在しているような感じが、かなり鳥の糞に似ている。より小さいシロオビトリノフンダマシも、まずまず鳥の糞に似ている。
この仲間の中では、気味悪系でなく相当に可愛い部類に入るのが、アカイロトリノフンダマシだ。アカイロトリノフンダマシは、大きさ、形、模様ともにテントウムシに似ている。なので、テントウムシに擬態しているのではないかとも言われている。
トリノフンダマシの仲間は、基本的に夜行性らしく、夜になってから網状の巣を張り、蛾などを捕まえるという。したがって、昼間は葉裏でじっとしているので見つけにくい。オオトリノフンダマシは秋に大きく特徴的な卵嚢を作るので、その周辺を探すとわりと簡単に成体が見つかる。
昆虫記者はまだ、夜に張られた巣を見たことがないので、来年オオトリノフンダマシを捕まえたら、ベランダの木々に放して観察したいと思っている。昆虫(たまに蜘蛛)趣味の楽しみは尽きない。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)