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寄生虫か脳みそか、かなり不気味なトリノフンダマシ=昆虫(たまに蜘蛛)の超絶擬態を暴く⑦

天野和利時事通信社・昆虫記者
左からトリノフンダマシ、オオトリノフンダマシ、アカイロトリノフンダマシ。

 トリノフンダマシ(鳥の糞だまし)という、ちょっとかわいそうな名前の蜘蛛(クモ)の仲間がいる。それほど鳥の糞に似ているわけではないが、蜘蛛には見えない。この仲間の中で、特に不気味な感じを与えるのは「オオトリノフンダマシ」だ。その姿は、寄生虫の巣窟、小動物の脳みそ、あるいはエイリアンの頭部のようにも見える。噛んだ後で丸めて捨てられたチューインガムのような、何か「汚いもの」的な感じがあるので、天敵生物はそんな「汚いもの」にはあえて近づきたくないと思うかもしれない。

 一説では、オオトリノフンダマシは、カマキリの頭部に似ていて、敵を警戒させる擬態になっているとも言われる。

オオトリノフンダマシの雌(下)と雄(上)。大きさがだいぶ違う。
オオトリノフンダマシの雌(下)と雄(上)。大きさがだいぶ違う。

歩き出したオオトリノフンダマシ。
歩き出したオオトリノフンダマシ。

エイリアンの目玉のようなオオトリノフンダマシの模様。
エイリアンの目玉のようなオオトリノフンダマシの模様。

オオトリノフンダマシの卵嚢。上に生みの親の雌がいる。
オオトリノフンダマシの卵嚢。上に生みの親の雌がいる。

 鳥の糞擬態という点では「オオ」の付かない「トリノフンダマシ」の方が上手だ。こちらはヌメヌメした感じや、未消化物が散在しているような感じが、かなり鳥の糞に似ている。より小さいシロオビトリノフンダマシも、まずまず鳥の糞に似ている。

「オオ」の付かないただのトリノフンダマシの方がヌメヌメした鳥の糞に似ている。
「オオ」の付かないただのトリノフンダマシの方がヌメヌメした鳥の糞に似ている。

シロオビトリノフンダマシ。イネ科の植物で見かけることが多い。
シロオビトリノフンダマシ。イネ科の植物で見かけることが多い。

 この仲間の中では、気味悪系でなく相当に可愛い部類に入るのが、アカイロトリノフンダマシだ。アカイロトリノフンダマシは、大きさ、形、模様ともにテントウムシに似ている。なので、テントウムシに擬態しているのではないかとも言われている。

テントウムシのようで、ちょっとかわいいアカイロトリノフンダマシ。
テントウムシのようで、ちょっとかわいいアカイロトリノフンダマシ。

 トリノフンダマシの仲間は、基本的に夜行性らしく、夜になってから網状の巣を張り、蛾などを捕まえるという。したがって、昼間は葉裏でじっとしているので見つけにくい。オオトリノフンダマシは秋に大きく特徴的な卵嚢を作るので、その周辺を探すとわりと簡単に成体が見つかる。

 昆虫記者はまだ、夜に張られた巣を見たことがないので、来年オオトリノフンダマシを捕まえたら、ベランダの木々に放して観察したいと思っている。昆虫(たまに蜘蛛)趣味の楽しみは尽きない。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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